３、クラーク勘当される
ところがところが、一年後クラークは本当に『有名料理研究家』として成功してしまったのだ。
花嫁学校の、家庭料理コースを首席で卒業したマーシアは、人が料理をするところを見ればその人の料理の腕前の程度はおおよそわかる。
そんなマーシアが、クラークが料理する姿を見たところ、彼の料理のレベルは、「ごく普通の料理を一年学んだ人」といったところだ。
つまりクラークには天才的な料理の才能なんかない。
平々凡々。
けれどもルックスだけは抜群によいクラーク王子が、女装してフリフリエプロンをつけて、しなを作りながら料理をする動画を、Woooチューブという動画サイトにアップし続けたところ大受け。
今やチャンネル登録数は100万人。
一番人気のあった動画の再生数は一億回で、もう完全にWoooチューブだけで食べていける状況らしい。
王子はもともと留学先の国でお騒がせセレブとして有名だったことも、人気の起爆剤となったようだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ところがこの動画かなり下品だった、
クラークったら偽の胸を挟んで揺らしたり、（ブラをつけて、中に油の入ったパッドをいれているらしい）、後ろを向いておしりを振ったり、見ているマーシアが赤面してしまうほどだった。
コメント欄を見ていると、
「王子まじで俺の性癖にドンピシャ！今度抱かせてくれ」
という男の娘好きの男性が書いたものらしいコメントに、クラークは
「だーいかんげーいヾ(´∀｀*)ノ ウフ」
と返信している。
王妃様は、
「私が芸能界にいた時のお友達の中には、こういう方法で人気になっているひともいるけど、かりにも王子のすることかしらね」
とハアーッ！とため息をつかれる程度だったけれど、国王陛下は激おこ。
クラークの兄上で、まじめで有名な王太子様も
「もう弟とは思いたくない」
とおっしゃっていたので、王妃様はオロオロされたそうだ。
王妃様 VS 陛下と王太子様の家族会議が連日のように開かれたという。
結局クラーク王子をかばう王妃様が負けて、陛下はクラークを勘当することになったそうだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
マーシアは今日も涙目でクラークのWoooチューブチャンネル「男の娘王子クラークのセクシーキッチン」
を見ていた。
動画が始まると変わり果てた(金髪縦ロールにどでかいリボン、フリフリエプロン)クラークが大袈裟な身振りで現れる。
「ヤッホー！！ みんなー！！ 元気ですかー！？
今日はお料理はお休みで皆さんにちょっとしたご報告をしまーす。
実は今日をもってボクちゃんロイデン王家から離脱することになったんだー」
このチャンネルではクラーク王子は二つのキャラを使い分けている。
一つ目のキャラは、料理ををするときや挨拶のときのブリブリ男の娘キャラ。
一人称は「ボクチャン」。
もう一つは素のままの男らしいクラークで、自分の日常やニュースやゴシップについて本音トークをするときのキャラ。
一人称は「俺」。
本音トークのときは、大きく足を開いて座る。
男の娘キャラとのギャップが面白いということで、また人気になっているそうだ。
「実は今日をもってボクちゃん王家から離脱することになったんだー」
とハイテンションの後、クラークはどかっと足を開いて椅子に座り、本音トークモードにはいった。
「……で王家のメンバーって毎年〇〇円の年金がもらえて、それが今年からなくなるわけですが、ぶっちゃけ、俺全然困らないんですよねー。その年金の額なんか、今の俺にとっては、はした金というか」
最後にクラークは再びブリブリ男の娘になって
「それもこのチャンネルを見てくれる皆さんのおかげでーす」
と締めくくった。
クラークが両手の指先を唇につけて、ちゅっと音をさせた後、指の腹を画面に近づける。
スマフォのディスプレイに、ショッキングピンクのハートが散り、それからすぐにコマーシャルが始まった。
