第4話 勇者vs女勇者
「いたんかい!!」
皆のハモリが響き渡る。
「うん。山に行って柴刈りしてたらツーリが歩いてたんだ。ラッキーと思ってツーリに乗って一休みしてたら、眠りこんだらしい。疲れがたまっていたからね。」
「疲れが溜まっているなら家で休みなさいよ。貴方に何かあったらこの国は大変な事になるんだから 」
「すまない、シルヴィア。今後は気をつける 」
「ミック……」
アイリスが前に出る。
「アイリスか、今日はどうしたんだ? 」
「コイツら、攻めて来たんです!! 」
アプルンが前に出る。
「違うわ、全て峰打ちよ。誰も死んでないはずだわ。攻撃された分はお返ししたけどね 」
「そうか……」
ミックは人々を見渡す。
「お兄様達が……ダリアスお兄様とテュリュフお兄様が、各国の強硬派の勇者を引き連れて攻めてくるわ。遠からずこの国は終わりよ。人魔は相容れぬ存在、それを否定する国を許す訳にはいかないのよ 」
「いつ頃攻めてくる予定なんじゃ? 」
パパラスが口を挟む。
「お兄様達は、貴方達を警戒して遠国からも勇者を集めているわ。準備に時間がかかるみたい。1年後を予定しているわ 」
青ざめる人面樹達。
「そうか……ただ終わらせる訳にはいかないんだ。今の世の中は人魔に関係無く、正義の名の下に強者が弱者を虐げる世界なんだ 」
「そうね。この国は、憎しみの連鎖を断ち切る為の国だものね 」
「そうじゃな。憎しみの元に戦い続ければ、いずれ双方滅んでしまうじゃろうな 」
ミック、シルヴィア、パパラスが頷き合う。
「ありがとうな、アイリス。大切な情報を教えてくれて。今なら対応する時間は充分にある 」
「ミック、貴方は私の命の恩人。礼なんていらないわ。でも時間なんて無いの 」
「どういう事じゃ? 」
「テュリュフお兄様は知恵が回るわ。ダリアスお兄様達が攻めてくるのは1年後。でも、それまでの間に周辺の魔族達を煽ってこの国を攻めさせるつもりよ 」
「そんな事が出来るのかの? 」
「この国は魔族強硬派にとっても邪魔な国なのよ。戦乱で利益を得ている者達は、人魔関係無く繋がりがあるわ。唆すなんて簡単みたいよ 」
「それでも諦めるわけにはいかないんだ 」
ミックがアイリスを見つめる。
「この国は、周辺の魔族の執拗な攻撃によって疲弊した所を、ダリアスお兄様達によって滅ぼされるの。このシナリオに助かる道は無いの 」
アイリスがミック達を真剣な眼差しで見つめる。
「ミック、いやミックのパーティのみんなも私の部下になるのよ。そうすれば誰にも手は出せない 」
「会長……」
ツーリが前に出て発言する。
「この者の言う通り、会長達はこの者の部下になって、この国から出た方が良いのではないでしょうか。」
皆がツーリに注目する。
「さすれば、会長達も安全になりますし、この国が攻められる理由が無くなります 」
「アイリス……もし、俺たちだけお前の部下になったらこの国はどうなると思う 」
アイリスは下を向いて少し考える。言いにくいけどミックに嘘はつけない。
「これだけの時間と人と物資を投入して、中止になりましたとは考えにくいわ。理由をでっち上げて攻めて来て、周辺地域を含めて占領するんじゃないかしら 」
「な、なんと卑劣な……」
絶句するツーリ。
「そういう事なんだ。アイリスの部下になれば俺達は助かるかも知れない。でも、この国は滅んでしまうんだ 」
「シルヴィア先生……」
デポコ達、子供の魔族がシルヴィアの元に駆け寄る。
「そうね。せっかく学校を作ったのに、生徒達を見殺しには出来ないわ 」
「貴方達、学校まで作ってたの? 」
「そうよ。メインの先生は別にいて、数は少ないけど、私達も授業を受け持っているわ 」
「家庭科のズイマ先生の授業がヤバいんだ!! 」
ワーウルフの子供が前に出る。
「そうだ、あの授業はヤバい 」
「ヤバいわね 」
「ヤバすぎる 」
「うん、うん。ヤバすぎる 」
口々に騒ぎだす子供達。
「何の授業をしてたのよ、アイツは……」
シルヴィアが呆れ顔で呟いた。
「そういう事で俺達はこの国に残る。敵が攻めて来るなら、みんなと共に戦うさ 」
「ダメよ、このままでは皆死んでしまう。貴方達は私の部下になる。魔族達は他の国に逃げれば良いわ。大変かも知れない。でも死ぬよりはマシよ 」
アイリスがミックに剣を向ける。
「力づくでも連れて帰るわ。ズイマがいない今がチャンス。アキレアは2人をお願い。殺しちゃダメよ 」
「承知致しました、姫様 」
アキレアも剣を抜く。
ガンッ!!
ガンッ!!
ガンッ!!
ミックとアイリスが剣を打ち合う。
「腕を上げたな、アイリス」
「貴方に命を救ってもらった時の私じゃないの。今度は私が救う番よ 」
ガンッ!!
ガンッ!!
ガンッ!!
「ミック、貴方はわかってない。貴方の言う通りよ。人族にも魔族にも良い奴も悪い奴もいる。その悪い奴らが皆で貴方達を狙っているの 」
ガンッ!!
ぶつかり合った剣がしのぎを削る。
「奴らは戦乱の世を終わらせたくないの。戦乱から利益を得ているんだから。敵がいなければ作り上げるの。貴方達は殺された上に、どんな汚名を着せられるかわからないわよ 」
「わかっている……」
「わかってない!! 」
ガンッ!!
ガンッ!!
ドガーン!!
爆炎が起きモウモウと煙が上がる。
「決まったかの?」
パパラスが目を拵えて見守る。
「無駄ですよ 」
爆炎の中からアキレアが現れる。
「パパラスさん、シルヴィアさん。盾役の前衛の居ない状態では、勇者たる私には勝てませんよ。」
「えーい!爆雷、爆雷、爆雷 」
爆雷魔法を連射するパパラス。
ザン!!
ザン!!
ザン!!
剣で爆雷を切りながら前進するアキレア。
「うわぁあぁあ 」
パパラスが後ろに倒れ尻もちをつく。
パパラスの前に立ったアキレアは剣を高く掲げる。
「峰打ちです。後で回復してあげますんで我慢して下さい 」
アキレアが剣を振り下ろした瞬間。足下の地面から魔方陣が浮かび上がる。
「光縛結界!! 」
光が魔方陣から溢れ出して結界を完成させる。
「かかったの 」
立ち上がるパパラス。
「油断出来ないわよ。元最高ランクの勇者なんだから。次の手も準備しとかないと 」
ピキッ……ピキッ……
「早いわね!! 」
パキン!!!
光輝く剣が結界を切り裂いて、中からアキレアが現れる。
「惜しいですな。光の結界ならば、より強い光の魔力で破壊するのみ。私は剣に光の魔力を注ぐ事が出来るのですよ 」
「ミックの分からず屋っ!!。私は貴方達が心配なだけなのに 」
ガンッ!!
ガンッ!!
ガンッ!!
アイリスは剣に魔力を込める。
「魔法剣技 音速大爆発!!!
ドガガガガガガガーン!!!
アイリスの剣が、ミックを防御ごと天高く弾き飛ばす。
「くっ!! 」
空中で体制を整えようとするミック。
追いすがり追撃を放つアイリス。
「音速大爆発!!! 」
ドガガガガガガガガガガガガガーン!!!」
ミックは町外れまで大きく弾き飛ばされた。




