第36話 後は頼んだ
「そうだ、シーデス閣下 」
「なんだ?秘書室長 」
「ピンクミイラさんから預かっていた伝書ハヤブサなら、時速100kmは出るそうだから、1時間もあれば連絡がつけられるかも知れない 」
「伝書ハヤブサ? 」
「そう、ピンクミイラさんが、いざという時はこれで連絡をくれと言っていたわ 」
「呼んだか?」
2頭の鳥がシーデスの間に入って来て、シルヴィアの肩に止まった。爪で傷つけないように手袋をはめている。
「ハヤブサ丸、ハヤブサ角、ご挨拶しなさい。魔王シーデス閣下よ 」
「おう、俺はハヤブサ丸。ギュンギュン飛ばすぜ。宜しくな 」
「おう、俺はハヤブサ角。クールに飛ばすぜ。宜しくな 」
「うむ、魔王シーデスだ。宜しく頼む 」
軽く頭を下げるシーデス。
「この2匹はもしかして…… 」
猫老師がシルヴィアの足元に寄って来る。
「そう、ピンクミイラさんの古い友達から預かっているわ 」
「そうか、では、鳥の王もワシらの味方になってくれるんじゃな 」
「えぇ、おそらくは……ただ、鳥の王も、魔導国家ハザルドと戦争中だから、すぐには無理みたい 」
「すぐには無理か……じゃが、ここを凌げば希望はあるという事じゃな 」
「そうね、いずれくる大戦の時には、貴重な戦力になると思うわ 」
話を黙って聞いていたシーデスが前に出た。
「皆の者、聞いての通りだ。この危機を乗り越える事が出来れば希望はある。
ハヤブサ丸、ハヤブサ角、ミック達やズイマ達への急報を頼む。奴らが戻って来るまで耐え抜けば勝ち目はある 」
「おう!!任せておけ!! 」
「クールに行くぜ!! 」
シルヴィアの肩から飛び出したハヤブサ丸とハヤブサ角はシーデスの間から飛び出して行った。
入り口から目線を戻し、皆に相対するシーデス。
「皆の者、それぞれの職責を全力で果たせ。必ず勝つぞ!! 」
「『「『「おう!! 」』」』」
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第2次防衛線北地域A1砦の隊長ブルーミイラさんは、30人の部下と約100人の避難民を引き連れて、第3次防衛線への撤退を進めていた。
避難民を先にして最後方を部隊が守っている。
「ぶ、ぶ、ぶ、ブルーミイラ様!!あ、あ、蟻が来ました!! 」
「チィッ、間に合わなかったか。仕方ない、俺が奴らを引きつける。お前らは避難民を連れて先に行け 」
バッと最後方に飛び出したブルーミイラさん。青い包帯を鞭のように伸ばして、横薙ぎに巨大軍隊蟻を引き裂いた。
「ピンクミイラさん麾下ミイラ男7人衆が1人、海のブルーミイラ、参る!! 」
ワラワラと集まって来る蟻の大群を、両手の2本の包帯で切り裂いてゆくブルーミイラさん。
しかし無限に沸くかのような蟻の一部はブルーミイラさんを無視して先に進んで行く。
「チィッ、行かせるわけにはいかん 」
更に包帯を伸ばして左右の遠くの蟻の大群を弾き飛ばすブルーミイラさん。しかし、その分身体を守る包帯が薄くなってしまう。
「ぐぉっ 」
遠くに伸ばした包帯の間隙を縫って複数の蟻が噛み付いてきた。
「ま、まだだ。まだ終わるわけにはいかん ……」
複数の蟻に噛みつかれながら、更に伸ばした包帯で
蟻の大群を薙ぎ倒す。仁王の様に立ち尽くし、身体中を蟻に噛みつかれながら、更に2本の包帯を増やして蟻の大群を薙ぎ倒す。
ブルーミイラさんは薄れゆく意識の中で、包帯を伸ばして蟻の大群を薙ぎ倒してゆく。
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「なぁ●●、俺と一緒に来てくれないか。お前の力が必要なんだ 」
「仕方ないですね、そんなに何度も来られたら迷惑です。わかりました。一緒に行って、とっとと世界を平和にしましょうか 」
なんだ……夢……
遠い昔の夢……
朦朧とした意識の中で、包帯を伸ばして蟻の大群を薙ぎ倒すブルーミイラさん。その包帯は既に真っ赤に染まっている。
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あの時は、約束を守れなかった……
身体中を巨大蟻に噛みつかれ、身動きが取れない状態で、包帯を伸ばして巨大蟻の群れを薙ぎ倒してゆくブルーミイラさん。もはや意識はほぼ無い。
「シーデスだ。ピンクミイラ先生の古い仲間と聞いた。宜しく頼む 」
「俺たちは300年以上続く戦乱の世を終わらせる為に、人魔が共存出来る国を作りたいんだ。」
あの時は……約束を守れなかった……
でも、今は……
「後は頼んだ……みんな……」
ブルーミイラさんは最後の力を振り絞って、全ての包帯を出しきって、蟻の大群を引き裂いた。そして包帯を失ったブルーミイラさんは倒れて、湧き出る蟻の大群の中に消えて行った。




