第33話 剣帝パルタス編1
大陸南部の半島国家パルタス。魔族滅殺を国是に掲げる国であり、魔族相手なら如何なる状況に於いても戦いを選ぶため「戦争国家 」と呼ばれる。
魔族滅殺の旗の元に大陸各所での人族と魔族の戦争に介入、また全ての魔族の最大の敵として常に複数の魔族国家と戦争を継続中である。
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「パルタス様……」
1万の軍勢と共に行軍中の剣帝の元に、血塗れの伝令兵がたどり着き跪いた。
「申せ……」
「我々が救援に向かっていた都市国家ホブロスは北東西の3方を包囲されておりますが、南の城門のみ解放されております 」
「罠ですな…… 」
白髪の老賢者が伝令の前に出る
「はっ……既に兵も住民のほとんども亡くなっており、わずかな兵士がわずかな住民を守って最後の戦いをしている状況と見られます 」
「敵の総数はいかほどか? 」
白髪の老賢者が尋ねる。
「蛇王ガラシュ、不死王ムデル、吸血大公ブラディス、多眼王イロングァの4カ国軍……」
伝令兵は息を整えて声を発した。
「総勢20万 」
皆が黙り込む中で白髪の老賢者が剣帝の前に出る。
「パルタス、どうするのだ? 」
「ここから一番近い敵軍はどれだ? 」
「はっ、蛇王ガラシュの軍かと 」
副官が地図を見ながら答える。
剣帝の顔が凄惨に笑う。顔の右側は仮面で隠されており表情は見えない。そして鎧の間から見える素肌には数多の傷が刻まれている。
「うむ、ならば蛇王を誅殺し、蛇王軍を殲滅する。賢者クラダスよ。全軍にバフを掛けよ。各将軍は持ち場につけ。先頭は私が立つ。準備が整い次第、突撃を開始する 」
「はっ!!! 」
その場の全員が膝をつき頭を下げた。
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「パルタス様、準備が整いました……」
パルタスは小さく頷いて全軍の前に出た。ゆっくりと振り向くと全軍の視線がパルタスに集中する。パルタスはゆっくりと話し始めた。
「同志諸君、話は聞いていると思うが我々は20万の魔族に包囲されている。奴らは我々を狩りの獣のようにいたぶり追い詰める気だろう 」
皆を見渡すパルタス。
「我々は狩りの獣か?否。断じて違う。
我々が魔族を狩り尽くし滅ぼすのだ。まずは我が軍左方5kmに位置する蛇王ガラシュの首を取る。しかるのち順次敵王の首を取り……」
皆の息が止まる。
「敵軍を完膚無きまでに……殲滅する!! 」
パルタスの低い声が天地に響き渡る。
「うぉおおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお…… 」
兵士達が拳を突き上げ雄叫びをあげる。歓喜に震え涙を流す者もいる。
「行くぞ!! 」
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「シュシュシュシュ……出過ぎはいかん。他の魔王軍が先に戦い始めて、ワシらは最後に後ろから攻めれば良いのじゃ…… 」
数十メートル級の大蛇の群れの中で、一際大きな大蛇
が周りに声をかける。
「さすが蛇王様じゃ 」
「ワシらは最後に戦えば良いのじゃ 」
「疲れ果てた人間を食うのじゃ 」
「蛇王様、万歳じゃ 」
「へ、蛇王様〜!! 」
巨大な大蛇の間を縫うように、3m級のカラフルな蛇の魔族が蛇王達の元にやって来た。
「シュシュシュシュ……どうしたのじゃ? 」
「パ、パルタス軍が、せ、攻めて来ました!! 」
「シュシュ……なんじゃと!!20万の大軍にびびって震えておるのではないのか!!……じゃ 」
「前衛が対応中なのですが……」
「なら大丈夫じゃ 」
「前衛も我々近衛部隊と同じ数十メートル級の大蛇の部隊じゃ 」
「たかが人間、皆、食ってしまうのじゃ 」
「シュシュシュシュ……皆の言う通りじゃ。小さき人間など一飲みじゃ 」
ドガーン!!
ドガーン!!
ドガーン!!
遥か前方から爆音が鳴り響いた。数十メートル級の大蛇が宙に舞っている。
「シュシュ、なんじゃ? 」
「へ、蛇王様、あ、あの大蛇の、む、胸に大穴が……」
ドガーン!!
ドガーン!!
ドガーン!!
ドガーン!!
鳴り響き続ける爆音に宙に舞う大蛇達。その身体の一部には大きな穴が開いていた。
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「ここまでか……」
パルタス軍の最小単位は5名で構成される小隊である。味方とははぐれてしまった片腕の男は傷だらけの身体から血を流しながらも前進を続けていた。
もう助からない。長くは持たないだろう……
「死ぬのじゃ〜 」
後ろから数メートル級の蛇魔族達が襲いかかって来る。
しかし男は碌に見る事もせずに大きく剣を後方に向けて放った。
ズバッ!!
襲いかかって来た5匹の蛇魔族の胴体が両断された。しかし剣撃を逃れた2匹の蛇魔族が残された右腕と胴体に噛み付いた。
2匹の蛇魔族を引きずりながら、ドクドクと血を流しなから男は前に進む。そして数十メートル級の大蛇の前にたどり着いた。
「よう……お前の最後の敵は俺だ。腐れ蛇野郎。
俺の大切な人達は全て、お前達魔族に奪われた。
俺はお前達を絶対に許さない 」




