第3話 勇者の休日
「フフン、貴方達が束になっても私達には敵わないわよ。因みに私もSランク勇者。格が違うんだから」
アイリスが胸を張る。
「そうね、勇者ミックと戦士ズイマがいないと厳しいわね」
一歩下がるシルヴィア。
アキレアが近くにいたアプルンを捕まえる。
「さぁ、勇者ミックの居所を教えて頂きましょうか?さもないと、林檎の実を全部頂きますよ 」
「た、助けてくれ。お、俺は知らないんだ。本当に勇者ミックの居所なんて知らないんだ。お、俺の大切な林檎の実を奪わないでくれ……」
「誰か、勇者ミックの居所を知る者はいないの? 」
アイリスが人々を見渡した。
「アキレアは林檎が大好きだから、すぐに全部食べちゃうわよ 」
誰も答えない。
ブチっ
「ギャアアア 」
アプルンが悲鳴を上げる。
「ひと〜つ 」
アキレアが林檎を頬張る。
「くう〜っ 」
涙を流すアプルン。
「ふた〜……」
アキレアが二つ目の林檎をもぎ取ろうとした時だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。アプルンは俺の大事な親友。食べるなら俺のオレンジを食べてくれ 」
ミカンの実を付けた人面樹 ジレンオが前に出る。
「おぉ〜っ 」
ジレンオの勇気に人々から歓声が上がった。
アイリスがジレンオを見る。
「あら、貴方になっているのは、オレンジじゃないわよ、蜜柑ね。残念ね、私は葡萄好き、アキレアは林檎好きなのよ。お呼びじゃないわ 」
「……」
静まりかえる人々。
「くぅ〜っ 」
屈辱に震えるジレンオ。
「ひ、姫様。お待ちくだされ。た、確か、国王陛下が……ミカンが大好きとか 」
「はっ!!」
目を輝かせるジレンオ。
「違うわ。お父様が大好きなのはデコポンよ。ミカンじゃないわ 」
「……」
「デコポンの人面樹はいないかしらね。お父様へのお土産に連れて帰りたいわね 」
アイリスは群衆を見渡す。
「!!」
「!!」
アイリスと目があった人面樹が反転して逃げだす。
「お待ちなさい!! 」
大ジャンプして回り込むアイリス。
「あら、貴方。まだ小さいけどデコポンね。国王陛下への献上品として来てもらうわ。大丈夫。大切に扱われて、一生贅沢出来るわよ 」
「くぅ〜っ」
デコポンの人面樹は泣きだした。
「お、おのれ。まだ子供のデポコにまで手を出すとは。魔王軍二天王の一人。歩く人面樹のツーリが許さん!! 」
「……みんな歩いているじゃない 」
禁忌に触れるアイリス。
「くぅ〜っ」
悔し涙を流すツーリ。
「ちょ、ちょっと待つんじゃ。わかった、勇者ミックと戦士ズイマの居所を教えるわい 」
「あら、会長。2人の今日は公休だけど、知っていたのね 」
「うむ、公休ゆえに秘書室では無く、万が一に備えて会長の儂だけが報告を受けていたんじゃ 」
「私だけ知らないって……何か残念ね 」
「そういうな。彼らも見栄を張りたい男じゃ、女性のお主に知られるのが恥ずかしかったんじゃ 」
「それで、ズイマはいいとして、ミックはどこに行ったのかしら? 」
アイリスが目を光らせて聞いて来る。
パパラスは覚悟を決めて告げる。
「ミ、ミックは山に柴刈りに……ズ、ズイマは川に洗濯に行っておる 」
「……せ、せっかくの休みに何をしているのかしら、あの人達は……」
シルヴィアが呆れる。
「ざ、残念だけど同意するわ。シルヴィアさん 」
「柴刈りも訳がわからないけど、洗濯はお城でしてもらえるじゃない。何で川に洗濯に行くのよ 」
言わずに置けないシルヴィア。
「ズ、ズイマの隠れた趣味なんじゃ。川で洗濯をして、たまに魚を捕まえるんじゃ。ワニを捕まえた事もあるらしい 」
「家庭的な趣味なのか、行動的なサバイバーなのか、ハッキリしなさいよ!! 」
ぶち切れるシルヴィアさん。
「それに柴刈りって何よ?意味がわからないわ 」
ガサガサ
ツーリの葉っぱの生い茂った枝が揺れる。
ストッ
小枝を背負った男が落ちてきた。
「柴刈りとは、焚き火用の小枝を集めたり、雑木の手入れをしたりして、山の環境を整える事なんだ。
我が国は山が資源だからな、普段からの手入れが大事なんだ 」
勇者ミックが現れた。




