第26話 サイクロプスと悪魔
会場の人々の視線がサイクロプスに集まる。
「怪物がこっちを見てる 」
「あの城壁は高さ20mはあるはずですよね」
「ど、どれだけでかいんだよ…… 」
「に、逃げろ〜 」
パニックになる入場者達。
「チィッ、警備隊は何をしているんだ!! 」
ジレンオが城壁に向けて駆け出した。
「待て、ジレンオ!! 」
「俺は戦士だ。警備隊を助けに行く 」
ジレンオは再び城壁に向けて駆けて行く。
「ジレンオを一人で行かせるわけには行かない。俺たちも行くぞ! 」
「おう!! 」
「待て!アプルン!」
竜血樹の人面樹リュッケとバオバブの人面樹バオが現れた。
「リュッケさん、バオさん 」
「アプルン、みんな。サイクロプスの弱点は目だ。しかし、あの巨体の目にまで攻撃を届かせるのが難しいんだ 」
リュッケは目から真っ赤な樹脂を流しながらサイクロプスの方を見ている。
「アプル〜ン。俺たちに策があ〜る。ジレンオが時間を稼いでいる間に、協力してくれない〜か? 」
バオさんの目が光った。
城壁の上では警備隊が腰を抜かしていた。巨大なサイクロプスが目の前にいるのである。
「あわわ……」
サイクロプスの肩には黒いローブをまとった悪魔が座っていた。悪魔はサイクロプスに囁く。
サイクロプスは巨大な大鎚を振りかざした。
ドーン!!!
城壁に大穴が開く。
「もう一丁!! 」
ドーン!!!
「もう一丁!! 」
ドーン!!!
大穴が広がって城壁の一部が崩れ落ちた。
ニヤリと笑う悪魔。
「これで通れるな、中立など愚かな事をぬかす都市トレーディアと、そこに集うアリ供に罰を与えねばならん。悪魔神官ワルルの名の元に 」
サイクロプスが城壁の崩れ落ちた部分から都市内に侵入した時だった。
ドガーン!!!
ドガドガドガーン!!
ドガドガドガーン!!
隠れていた城壁警備の魔法使い部隊達から、爆撃魔法が雨あられの様にサイクロプスに降り注ぐ。
「どうだ? 」
「殺ったか? 」
爆炎の中から現れるサイクロプス。
「クックック、愚かな者達よ。ワルル様の魔法防御障壁の前では、いかなる魔法も効きはしない。
サイクロプスの肉体の前では、いかなる物理攻撃も効きはしないのだ 」
ワルルはサイクロプスの肩の上で立ち上がる。
「故に最強。愚か者の相手に軍など必要無い。我ら2人がいれば充分なのだ 」
サイクロプスが魔法使い部隊の前に立つ。そして大鎚を高く掲げた。
「ヒィッ!! 」
「殺される 」
「ちょっと待った〜!!」
ジレンオの声が響き渡る。
「何だ貴様は? 」
肩の上から見下ろすワルル。
「俺の名はジレンオ。蜜柑の人面樹ジレンオだ。中立国に攻め込むのは犯罪だぞ!! 」
「黙れ!人面樹の分際で!! 」
「人面樹は正義感が強いんだ、知らなかったのかい? 」
「まぁ、良い。踏み潰せ!!サイクロプス 」
サイクロプスは巨大な足を上げて、ジレンオ目掛けて踏み降ろした。
ドーン!!
「チィッ!! 」
ジレンオは横っ飛びで躱す。
ドガッ!!
躱したジレンオを、サイクロプスは反対の足で大きく蹴り飛ばした。
ヒューン……ドカン!!
ジレンオは城壁に叩きつけられる。
「ぐ……ぐふぅ」
増援に駆けつけた警備兵部隊が弓を構えた。
「撃てーっ!! 」
ピュンピュン!ピュンピュン!
ピュンピュン!ピュンピュン!
ピュンピュン!ピュンピュン!
ブーン!!
大鎚をぶん回して矢を弾いたサイクロプス。
「愚か者供め!殲滅しろ!! 」
サイクロプスは警備隊に向けて大鎚を振り下ろす。
ドガーン!!
地面が大きく破壊されて、警備兵達が弾き飛ばされる。砂煙の後には血塗れで横たわる警備兵達。
「はっはっはーっ、口ほどにも無い奴らだ。さぁ、サイクロプスよ。まずは品評会の会場を破壊するぞ 」
「待て!!ここから先は一歩も通さんぞ 」
竜血樹の人面樹リュッケの甲高い声が響き渡った。




