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第23話 ツーリの想い

「はっ!! 」


 ツーリは真夜中の森の中で目が覚めた。額からは冷や汗が流れている。


「悪い夢を見た……」

 ツーリはポツリと呟く。


  「貴方、大丈夫? 」

 隣で立ったまま寝ていた妻のモミジンが声をかけて来る。


「あぁ、私がまだ小さかった頃の夢を見たんだ。魔力に目覚めたばかりの私は、ウキウキ気分で森の中を探索していたんだ 」


 モミジンは優しい顔をして話を聞いている。


「歩き疲れた私は、大きな湖のほとりで一休みをする事にしたんだ……それがあんな悲劇を招く事になるなんて……」


 ツーリは暗い顔をして下を向く。

 そして勇気を振り絞る様に再び語り始めた。


「私は『なんか腰回りが痛いな 』と思って目を覚ますと腰の辺りに茶色の生物が噛み付いていたのだ 」


「あ、貴方、それはまさか? 」


「そう、そのまさかだよ。我ら人面樹の宿敵である魔ビーバーだ。奴らは人面樹が好物で、人面樹を食らうんだ。

 私は枝を伸ばして奴を引き剥がそうとしたんだ。しかし、その時トンデモない事が起きたんだ……」


 ・

 ・

 ・


「離れろ!離れるんだ!! 」

 僕は枝を伸ばして魔ビーバーを捕まえようとした。


 その時、2つの茶色の塊が僕の枝に噛み付いた。


「ギャアアアァ 」


 新しく現れた魔ビーバー達が枝に噛み付いたのだ。

 枝を振り回しても、しっかり噛み付いて離れない。


「むしゃむしゃ……」

 僕の枝先が食べられる。


「ギャアアアアァ 」

 僕は悲鳴を上げながら枝を振り回す。


 ガサガサ


 すると水辺の草むらから音がする。


 僕がそちらを見ると暗闇に光る10の目。

 新たに5匹の魔ビーバーが現れたのだ。


「ヤバイ、殺される 」


 幹や枝に次々と噛み付いて来る魔ビーバー。しっかりと噛み付いて来て離れない。


「だ、だ、誰か助けてくれーっ!! 」





「見てられないな。仕方がない 」

 森の奥から若いエルフの男が現れる。


「魔族である人面樹は嫌いだけど、それを食べて魔ビーバーが増え過ぎて、森を荒らしても困るしね 」


 若いエルフの男は杖を掲げて魔法を唱える。


炎の玉(ファイヤーボール)!! 」


 ツーリに噛み付いていた魔ビーバー達に炎の玉(ファイヤーボール)が当たっていく。


 次々と燃え上がる魔ビーバー達は、ツーリから離れて急いで湖に飛び込んだ。



「人面樹君、大丈夫かい?」


「は、はい。ありがとうございました 」


「そうか、良かった。なら僕はこれで……」

 若いエルフは(きびす)を返して帰ろうとする。


「お、お名前を、お礼をしたいんです 」


「ふふ、律儀な人面樹君だね。ただの通りすがりのエルフの若者さ。名乗るほどの者でも無い 」


「危うく死ぬ所だったんです。この恩は忘れません 」


「君たち人面樹も、僕たちエルフの事を高慢だって嫌っていたはずだけど……」


「ぽ、僕はエルフと初めて会ったし、命を助けてもらったし……」


 若いエルフは顎に指を付けて考える仕草をする。


「そうだね。僕は名も無き1人のエルフさ。だから……もし苦しんでいる者が、助けを求めている者がいたら種族に関わらず助けてあげてくれないか 」


 若いエルフはツーリの目を見つめて来た。


「僕には大した能力は無い。魔法の才能だって大したことは無いしね。

 ただ僕が助けた君が、苦しんでいる誰かを助けて、助けられた誰かが他の誰かを助ければ……少しはマシな世の中になるかも知れないね 」


 ツーリは頭を下げる。

「わかりました。僕も困っている人に会ったら種族に関わらず助けます 」


「うん、そうしてくれると嬉しいね。僕と君は種族も立場も違うけど同志だ。

 僕は……まぁ良い。元気でね、律儀な人面樹君 」


 ・

 ・

 ・

 ・

「だから私はエルフの戦災孤児や、助けを求めている人達を種族に関わらず助けて来たんだ 」


「そうだったんですね。それでシーデス様達と出会って国を興したのね 」


「うん。弱い者達も助け会って生きていける国を作ろうとするシーデス様達と出会えた私は幸運だった 」


「それで恩人のエルフの方とは再び出会えたのですか? 」


「いや……後で気になって調べたのだが、彼はエルフ間の戦争に召集されている途中だったみたいなんだ。

 彼は、その戦争で亡くなられたそうだ 」


「それは……」

 絶句するモミジン。


「彼と私の出会いは、私の人生の中ではほんの僅かな時間なんだ……でも、私の心には彼の真心が残っているんだ……」


 ツーリを見つめるモミジン。


「私は魔王軍四天王だが実力は大した事が無い。でも、最後の時まで彼との約束を守りたいんだ。歩く人面樹のツーリは最後までこの国を守り続ける 」


 ツーリは力強く断言した。




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