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第22話 譲れないもの

 俺は耳を疑った。


 クックックとクククを禁止。


 ピンクミイラさんと出会った日から『変だ、変だ』と思っていた事を遂に指摘する奴が現れたのだ。


 しかもビーバー。


 ピンクミイラさんは固まったかの様に一言も発さない。心なしかピンク色の包帯が青ざめて見える気がする。


 俺はラナを見た。ラナも固唾を呑んでピンクミイラさんを見ていた。





 私は耳を疑った。


 発言の度に、最初にクックックとかクククをつける不自然。いつかは慣れると思っていたが、やはり慣れない。だって、別に面白くもなんとも無くてもクックックとか付けているんだから。


 ピンクの使徒として、いつか先生に告げようと思っていた事。先を越されてしまった。


 それもビーバーに……




ピンクミイラさんは、固まった状態で脳みそをフル回転させていた。


 クックック、頭の中で考えるのは良いんだろうか?いつからだろうか?発言の前にクックックとか付けるようになったのは?


 何の為につける様になったのか?

 これは何かの呪いなのだろうか?

 それとも自己アピールの為の差別化?


 クックックを止めた瞬間、呪いか何かで爆発してしまいそうな不安。


 クックックを止めた俺は、果たして本当の俺なんだろうか?


 ククク、しかし、俺の夢を叶える為には、シーデス人魔国を救う為には、弱肉強食の世界の理不尽を止める為には、魔ビーバー達との同盟が必要。


 クックック、しかし、俺にクックックを止める事など出来るのだろうか?


 ククク、こんな所でこんな事になるなんて、

 クックック、恐るべしビーバー親方。


 ククク、俺はどうすれば……




 ビーバー親方はピンクミイラさん達を見ていた。


 クックック、ついに言ってやった。毎度、毎度、何が面白いのか『クックック』とか『ククク』とか言いやがって。もうウンザリだ。


 仲間も仲間だ。仲間が毎度変な事を言っているんだ。注意して上げるのが真の仲間だろう。


 そんな薄っぺらい奴らと同盟なんて出来ようか!!


 悪い条件では無いので同盟を結ぶのに異存は無い。

 さぁ、見せてくれ、ピンクのミイラよ。『クックック』と同盟とどちらを選ぶのか!!


 ミック、ラナ、ビーバー親方の視線がピンクミイラさんに集中する。




 そして、遂にピンクのミイラが動いた。


「ウッヒッヒ……」


「え? 」

「え?」

「え? 」


「ウッヒッヒ、同盟成立だ。これで良かろう 」


「……」

「……」

「……」


「ウヒヒ、俺は約束は守る男だ。親方、次はあんたの番だ 」


「お、おう 」


「ウッヒッヒ、見たかミックにラナ。これが外交って奴だ 」


 ピンクミイラさんは包帯から同盟の締結書を取り出した。


「ウヒヒ、さぁ、この締結書を確認してくれ 」




「ミックさん……」

「どうした、ラナ? 」

「クックックの方が良かったわね 」

「そうだな。ウヒヒだとヤバイ人っぽいな 」

「クックックだと神秘的な感じがあったわね 」

「そうだな。何か知っている感じがあったな 」

「ウッヒッヒだと何も知らない感じね 」

「こんなピンクミイラさんは嫌だな 」

「そうね。私達はピンクの使徒なのよね 」

「……どうしよう? 」


「すまなかった、お前ら 」

 同盟締結書にサインしたビーバー親方がやって来る。


「まさか、こんな薄気味悪い事になるなんてな 」


「それは俺達が言いたい。俺達は長い時間をピンクミイラさんと過ごすんだ。毎度、毎度、『ウヒヒ』とか『ウッヒッヒ 』とか聞かされるんだぞ 」


「そうよ、『ウヒヒ』と『ククク』は違うのよ。『ウッヒッヒ』と『クックック』は違うの 」


「ウヒヒ、泣き言を言うなミック、ラナ。ピンクの使徒に泣き言はいらない 」

 書類を片付けたピンクミイラさんがやって来る。


 ウヒヒも要らないと思うミック。


「ウッヒッヒ、さぁ、次は魔女の村だ。行くぞ 」


 ピンクミイラさんは颯爽と出て行く。

 ミックとラナが続く。


「すまない、すまない。俺は薄気味悪い何かを作り出してしまった……」

 残されたビーバー親方は悔やむ様に頭を下げ続けた。





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