第21話 交渉
荷馬車が湖のほとりで止まった。目の前に砦がある。
「なんだ?お前らは 」
2匹の魔ビーヴァーが前に出て来る。
大きさは通常のビーバーと変わらない。
「クックック、シーデス人魔国のピンクミイラと勇者ミックに魔法使いラナだ。魔ビーヴァーの親方にいい話を持って来た。案内して欲しい 」
ビーバーが確認の為に砦の中に入って行った。
10分後〜
「親方がお会いになるそうだ。付いて来い。くれぐれも失礼の無いようにしてくれよ 」
1匹のビーバーが砦の中に入って行く。3人は案内役のビーバーに付いて行った。
砦の中は広々としていて奥に大きな湖があった。
「付いて来い!! 」
ジャボンと飛び込むビーバー。
顔を見合わせるミックとラナとピンクミイラさん。
ぶくぶくぶく
水面に泡が上がる。
そしてビーバーが顔を出した。
「カモン!! 」
「この装備だと泳げないな……」
ミックが皮の鎧を脱いで、ブーツを脱ごうとした時だった……
「ククク、ククク、クックック……」
ピンクミイラさんが堪え切れないといった感じで笑い出した。
「2人ともどうした? 」
「クックック、俺はミイラ男だ。包帯は脱げないので泳げない 」
「私もレディーだから、こんな所では泳げないわ 」
「えっ? 」
ぶくぶくぶく
水面に泡が上がる。
またビーバーが顔を出す。
「ヘイ!カモン!! 」
ピンクミイラさんは包帯の中から林檎を出して、ビーバーに向けて放り投げた。
「クックック、親方へのプレゼントだ。実はプレゼントが沢山あって泳げないんだ。親方に来てもらえる様に聞いてもらえないか? 」
魔ビーバーは困った顔をする。
「親方は安全な巣の中で会いたいんだ。無理だ 」
ピンクミイラさんは、もう一つ林檎を放り投げた。
「ククク、あんたの分だ。もっとあるぞ。俺たちの国と仲良くなったら食べ放題だ 」
ビーバーは林檎を一口食べてみた。
シャリ……シャリシャリシャリ
「美味い、凄い美味い。 美味い、美味い……わかった、聞いてくる 」
案内役のビーバーは水の中に潜って行った。
「美味しそうだったわね……」
「ピンクミイラさん。どうだろうな 」
「クックック、わからんよ。ただ交渉のメリットは示したんだ。決めるのは向こうだ。会うのも嫌だと言われたら仕方が無い 」
「泳げないしね 」
ラナが薄い胸を張る。
「ククク、その通りだ 」
ザバーン!!
水の中から一際大きな魔ビーバーが現れた。続いて先ほどのビーバーも現れる。
「よう!お前らだな。さっきの林檎をくれたのは 」
「クックック、どうだ、美味かったか? 」
「あぁ、凄く美味かった。仲良くなったら食べ放題と聞いたんだが、本当か? 」
「ククク、うちの国には果樹系の人面樹が大勢いるんだ。優先的に安く売る事が出来るぜ 」
「うちには金なんか無いぜ 」
「クックック、金なんて無くていいさ。ただ川を使った物資の輸送とか、木材の加工とかを手伝って欲しいんだ 」
「俺たちの得意な事だな 」
「ククク、その通りだ。悪い話じゃないだろう 」
「あぁ、良い話だ。だが、それだけでいいのか? 」
「クックック、条件がある。うちの国には人面樹やはぐれエルフが大勢いる。彼らとの争いは辞めて欲しいんだ 」
ビーバーの親方は困った顔をした。
「俺たちは人面樹が大好物なんだ。エルフ供は、俺たちが森を荒らすとか言って攻撃して来るんだ。俺たちは悪く無いぞ 」
「ククク、人面樹に関しては果実等を提供しよう。エルフに関しては特別な木以外の食事の邪魔はさせない 。これでどうだ 」
「木の皮より林檎や果物の方が美味いからな。人面樹に関してはそれでいいぜ。特別な木ってどうするんだ?」
「ククク、ラナ、どうするんだ? 」
「えっ、私? 」
「クックック、ピンクの使徒は常在戦場だ。全てが修行の場だと思うんだ 」
「そうね、特別なヒモを巻くなんてどうかしら?ただ範囲が広いと大変ね。ビーバーさん達が食べるのは川辺から100m以内とかに限定した方が良いと思うわ 」
「クックック、どうだ親方? 」
「わかった。その条件を飲もう。その代わりに俺たちからも条件があるんだ 」
「ビーバーさん達からの条件……」
「クックック、何だ、言ってくれ 」
ビーバーの親方はニヤリと笑った。
「ククク……クックックとクククを禁止だ 」




