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第19話 魔法使いラナ

「大丈夫。広範囲魔法を使えばゾンビの大群だってイチコロよ 」

 聖女が優しく告げる。


「そ、そうだぜ。俺も一緒にぶっ飛ばされて、危うくゾンビになるところだったけどな……」


「そうだ、僕も危うくゾンビになるところだったけど、ラナの魔法の凄さは、僕たちが一番良く知っている……」


「大丈夫だ!! 」

 戦士と勇者がハモった。


「チャ、チャンスをちょうだい。私の価値を見せてあげるわ 」ラナが勇者に(すが)り付く。


「ダメよ。さっきもそう言って、あそこの大きな岩を狙ったのに、反対方向に飛んでいったじゃない 」


「なぁ、この前の魔狼の大群に攻められた町を救出した事を覚えているか? 」

 スキッドは頰を掻きながら聞いた。


 ラナは目を輝かせて胸を張る。

「フフン、私の特大爆裂魔法で魔狼の大群を一蹴した時の事ね。町の人達は私の事を女神って感謝していたわよ 」


「破壊の神 デストロイだろ……」

 スキッドが小さく呟く。


「違うんだ。お前が色々と特大魔法で破壊して、俺たちから多額の賠償金を巻き上げたから感謝していたんだ。モンスターに破壊されても賠償金はもらえないからな……」


「そんな……モンスターとの戦闘中の破壊行為は不可抗力で、責任は……あまり無いはずよ 」


「貴方が全く関係ない所に、魔法を飛ばしたからよ。戦闘行為とみなされなかったの。戦闘にもルールがあるの。守らなきゃ駄目なのよ 」


「そうだ。僕達は保険じゃ足りなくて、300万ギルドも賠償金を払ったんだぞ。僕はその為に炎の魔剣を質に取られたんだ 」


「それは……かわいそうな勇者……でも私は何も取られて無いわよ 」


「価値のある物、何も持って無いじゃねーか。だがわかっただろ。俺たちはお前の為に努力したんだ。でもこれ以上は無理だ。金が無い 」


「すまないラナ、出て行ってくれ。だいたいラナは、魔女の村に行った時に勝手に付いて来たんだ。ラナのお母さんも『危なかったら返してね 』と言っていたぞ 」


「まさか、危ないのは冒険じゃなくて、ラナの魔法とは思ってもいなかったぜ 」


「……」

 ラナは黙って涙を堪えていた。



「ちょっと待った。言い過ぎだ 」

 勇者ミックとピンクミイラさんが現れた。


「何だ、お前らは? 」


「シーデス人魔国の勇者ミックと、魔王の相談役のピンクミイラさんだ 」


「シーデス人魔国って、魔龍に攻められて撃退したって最近話題の奴か? 」


「魔龍をステーキにして、国民に振舞ったって……」

 ラナが目を輝かせる。


「本当に人魔が共存していたんだな……僕は元 炎の勇者グーヘン、戦士のスキッドに聖女のグレースだ。そして追放協議中の魔法使いラナだ 」


 3人は軽く頭を下げた。


「クックック、そこの魔法使いさんが問題児なのかい? 」


「そうなんだ、ラナは悪い子では無い。ただ魔法の威力が桁違いなのとノーコンで危険過ぎて、僕達のパーティでは制御不能なんだ 」


「ククク、原因は調べたのかい? 」

「原因? 」

「クックック、魔法の発動には非常に繊細なコントロールが必要だ。発動出来ているのなら、どこかバランスが崩れている可能性が高い 」

「そうか……僕達のパーティには魔法が分かるのはラナだけなんだ。魔法の専門家に見てもらった方がいいか……」

「ククク、調度良い。俺たちは旅の途中だが魔女の村にも行く予定だ。連れてってやろうか? 」


 皆がラナに注目する。


「うーん。ママならわかるのかしら?」


「クックック 、それは分からんがヒントぐらい有るかも知れんぞ 」


「わかったわ。ただし条件があるわ 」


「条件? 」

 ミックが怪訝な顔をする。


「私の趣味は料理なの。今、世界一と評判の料理人ズイマに会いたいの 」


「はい? 」

 ミックは噂話の無責任さに戦慄した。


「ククク、いいじゃないか。構わない。場合によっては奴の弟子にしてやってもいいぞ 」


「えっ? 」

 ミックは耳を疑った。ズイマに弟子は要らない。必要が無い。彼の料理の後継者が出来たら皆が悲しむだろう。


「わかったわ、一緒に行くわ。グーヘン、スキッド、グレース、今までありがとう。大変な旅だったけど楽しかったわ 」


「ああ、元気でな 」

「平和的な解決になって良かった。少し心苦しかったからな 」

「ラナ、2人に迷惑をかけないように気をつけてね。魔法のコントロールが治ったら、また会いましょうね 」


「うん!! 」

 ラナの顔に笑顔が戻った。


「ククク、それであんたらは何処に行くんだ? 」


「僕達は、ある町から依頼を受けて吸血鬼退治に行く所だったんだ。ただ地下迷宮に住んでいる奴で、ラナが一緒に来ると生き埋めの恐れがあったので……」


「それで追放しようとしたのか……」

 ミックは少し考えこんでから、顔を上げた。


「ピンクミイラさん。彼らも悪い奴らでは無さそうだ。あの剣を出してくれないか 」


「ククク、ミック。お前のそういう所は嫌いじゃ無いぜ 」ピンクミイラさんは召喚魔法で魔剣を召喚して、ミックに手渡した。


「これは極炎の魔剣サラマンディアだ。吸血鬼退治に役に立つだろう。今までラナを助けてくれた礼だ。受け取って欲しい 」


「い、いいのか?炎の魔剣より遥かに価値が高そうだか? 」震えながら剣を取る勇者グーヘン。


「ククク、気にするな。この魔法使いさんには、それ以上の価値がある 」


 皆がラナに注目する。


「クックック、ラナが破壊した跡を確認してから来たんだが、消費魔力に対して破壊力が異常に大きい。いずれ大魔導士と呼ばれるかも知れん 」


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