第15話 魔王の先生
「魔王〜っ!!」
ズイマを先頭にご意見番達がやって来る。
「お前達見ていたのか? 」
ミックが前に出て来る。
「あぁ、ピンクミイラさんに『俺たちに任せてお前らは見ていてくれ 』って頼まれたんだ 」
「クックック、どうだい?俺と魔王様のタッグプレイは? 」
「見事だったわい。さすがピンクミイラさんじゃ 」
「そうね。さすがピンクミイラさんね 」
「ピ、ピンクミイラさんはカッコいいな……」
「ちょ、ちょっと待って、魔龍を倒してたのは余。ピンクミイラ先生じゃないの 」
「わかっているさ。ピンクミイラさんが魔龍の動きを見極める時間を魔王が、魔王が魔闘気を練り上げる時間をピンクミイラさんが稼いでいたんだろう。
見事なタッグプレイだと思うぞ 」
「クックック、魔王とは魔王が子供の頃からの付き合いだ。すぐに泣いていた小僧が魔王にまでなるとはな……」
ピンクミイラさんは過去を思い返すように俯いた。
「余は村が滅び、姉を失い、子供達を引き連れて宛も無く彷徨っていた時に、古代遺跡でピンクミイラ先生に出会ったのだ。
余が魔王と呼ばれ国を興す事が出来たのも、全てピンクミイラ先生のおかげだ 」
「クックック、褒めても何も出ないぜ 」
魔王は魔龍の死体を指差す。
「ミックよ、貴様らが余の元に来た時はピンクミイラ先生は腰痛で療養中だったが、もしいたら、あの魔龍みたいになっていたのはお前達だったのかも知れんぞ 」
「それは無い 」
ミックが胸を張って断言する。
「何だと!! 余と先生のコンビプレイに勝てると言うのか!! 」
「いや、それも違う 」
「ん?どういう事だ? 」
ピンクミイラさんが前に出る。
「クックック、ミック達とは事前に話がついていたのさ。コイツらは魔王城に来る1週間前に古代遺跡に来たんだ 」
「はい? 」
シーデスはミック達を見渡す。
「ククク……コイツらは俺の正体を知っていやがった……その上で俺の力を貸して欲しいと頼んで来たのさ……」
「そうなんだ。ピンクミイラさんと俺達の利害は一致したんだ。だから魔帝国マズルのスパイだった四天王の内の2人だけ倒したんだ 」
「そ、そうなの? 」
「クックック、魔王様よ、クーデター勃発まで時間は無かった。俺が動いては魔帝国マズルに俺の正体が知られてしまう。それは厄災を招いてしまうんだ 」
「そうね。だから私達が動いたの 」
「そうなんじゃ、だから、小さな国の魔王から世界の半分をくれてやると言われて、夢がデカすぎる夢追い人な魔王だと思ったんじゃ 」
「魔王、グッジョブ!! 」
ズイマが親指を立ててグッドのサインを出す。
「クックック、ズイマは夢の料理人になれたのだからな。魔王さまさまだ 」
「そ、そうだ。今日は久しぶりに俺が腕を振るってドラゴンの丸焼きの山賊焼風味にしよう。発酵ニシンをどう加えよう……」
ズイマは腕が鳴ると言う風に腕をグルグル回す。
「ちょ、ちょっと待てズイマ。お前は総料理長なんだから部下に料理は任せるんだ 」
シーデスが慌ててズイマを止めにかかる。
「き、今日は魔王が魔龍を倒した記念日だから、総料理長自ら腕を振るうんだ。
魔王の為に超熟成のとっておきの発酵ニシンを山盛り使うんだ。た、楽しみなんだな 」
ガビーンと青ざめるシーデス。
ククク……今日の魔王様は頑張ったからな。助けてやるか……
「クックック、総料理長。ドラゴンは肉厚で火の通りが悪い。丸焼きは時間がかかるし難しい。ステーキや焼肉の方が嬉しいな 」
「そ、尊敬するピンクミイラさんが言うのなら、ステーキと焼肉にするんだな 」
「ククク、味はそうだな色々な味が食べたいので色々なタレが欲しいな。だから肉には下味の塩と胡椒だけがいいな 」
ズイマが難しい顔をする。悩んでいるようだ。
「そうね。私は野菜系のソースが良いわね 」
「儂は醤油ベースじゃな 」
「わ、わかった。魔王には発酵ニシンベースのソースで良いんだな 」
「ククク、猫老師もそれが良さそうだ。ま、タレは自由に選べると食べ比べが出来て嬉しいな 」
「わ、わかった。料理人総出で料理するんだな 」
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ワイワイ……
魔王城の大食堂では国民を招いてドラゴンのステーキと焼肉パーティが開催されていた。
貴重なドラゴンの肉をタダで食べれるとあって大勢の人が参加している。
魔王シーデスは、発酵ニシンソースを猫老師にプレゼントして、醤油ベースソースでステーキを楽しんでいた。
皆がヤバそうなソースを次々と猫老師にプレゼントしている。
「わ、儂の必殺技の熟練度が、ものすごい勢いで上がっている気がするわい 」
笑顔の猫老師。
魔王はこの世に二人の恐ろしい男がいる事に気がついて戦慄した。
猫老師が本気になった時に止める事が出来る者が、この世に存在するのだろうか? 余は嫌だ。
そしてズイマを自在に操るピンクミイラ先生。二人が敵じゃなくて本当に良かったと思う魔王であった。




