第13話 魔竜襲来
ある暖かな昼下がり、国境警備隊所属 林檎の人面樹アプルンは、お昼寝……では無く警備をしていた。
「う〜ん。素晴らしい日当たり。最高の光合成が出来そうだ 」
一人で満足気に頷くアプルン。
「今年の林檎の出来も期待出来そうだぞ 」
ニヤニヤしている最中に異変が起きた。遠くの空から爆音が聞こえたのである。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーッ!!!
「何だ?何だ?」
慌てて音のする方に顔を向ける。
すると巨大な飛竜が魔王城の方角に向けて飛んでいる。
ヤバイ!魔王城が危ない。
アプルンは緊急連絡用の昼用打ち上げ花火を用意する。
この打ち上げ花火は、魔法で昼でもハッキリと見えるようになっている。
ひゅ〜ん……
ドカーン!!!
空に巨大な林檎が浮かび上がる。
「もう一丁 !!」
ひゅ〜ん……
ドカーン!!!
空に「オシロ ピンチ 」
の文字が浮かび上がる。
「俺の役割はここまでだ。後は頼んだぞ、みんな 」
アプルンは満足そうに目を閉じた。
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魔王城の城壁では大騒ぎになっていた。
轟音が聞こえてその方角を見ると、巨大な飛竜が飛んで向かって来ているのである。
「すぐに飛んで来るぞ 」
ガーゴイルの警備隊長が周りに注意を促す。
ひゅ〜ん
そこに山の上空に花火が上がる音
ドカーン!!
そして、浮かび上がる巨大な林檎
「何だ、何だ?」
騒めく城兵。
ひゅ〜ん
ドカーン!!
空に「オシロ ピンチ 」の文字が浮かび上がる。
「知ってるよ!! 」
警備兵達のハモリが響き渡った。
バサッバサッ
飛竜の音が響く。
「何を知っておるのだ 」
体長10mはありそうな巨大な飛竜が城壁の上に降りて来た。
「貴様、何の用だ。この城が魔王シーデス様の居城と知っての事か!! 」
隊長を中心に飛竜を取り囲む警備兵達。
「儂の名は魔龍ディストラ。人魔共存を掲げた魔王シーデスの首に10億ギルド ( 1ギルド=1円 )の賞金がかけられたのだ 」
「な、何だと!! 」
「主ら雑魚に興味は無い。シーデスを呼んで参れ。さもないと城を破壊するぞ 」
「ふざけるな!! 」
警備兵達が魔龍に近づいて行く。
魔龍ディストラは周りを見渡して、櫓の一つに目を止めた。
そして
「破壊の息」
強力なブレスを櫓に向けて放った。
ドガガガーン!!!
櫓が爆発して砕け散った。
魔龍が警備兵達を見渡して告げる。
「早くしろ。この城が崩壊するぞ 」
「シ、シーデス様をお呼びするのだ 」
慌てて部下に指示を出す隊長。
部下達が下に降りる階段の扉に向かおうとした時だった。
「必要無いぞ 」
扉が開いて魔王シーデスが現れる。
「シ、シーデス様!! 」
警備兵達がシーデスの周りに集まる。
「どうしてこちらに?」
隊長が聞いてくる。
「花火の音が聞こえたので、外を見たら『オシロ ピンチ』の文字が浮かんでおったのでな。幸い近くの部屋に居たので、様子を見に来たのだ 」
魔龍がニヤリと笑った。
「貴様が魔王シーデスか?破壊の息だと粉々になってしまいそうだな。大人しく首を差し出してくれんかの? 」
「この愚か者め、魔龍ごときが魔王に勝てると思ったのか 」
ゴキゴキと手を鳴らすシーデス。
「Cランク魔王と呼ばれる3流魔王の分際で魔龍ディストラ様に楯突くなど、愚か者の極みよの 」
「フン、たかが10億ギルドで我が首を狙うなどケチくさい奴め ……」
魔龍の目が険しくなる。
「気が変わった粉々に砕け散るがいい 」
魔龍は口に魔力を集めてブレスの体制に入る。
シーデスはニヤリと笑った。
「待て、金よりも良い物をやろう。我が配下になるのなら世界の半分をやるぞ 」
「破壊の息」
「甘い!! 」
魔王シーデスがブレスを避けて、ブレスは後方の城の一部にぶち当たる。
ドガーン!!
「見え見えのブレスなど魔王には当たら……」
ドーン!!!
魔龍の尾がシーデスを捉えて弾き飛ばす!!
「いらん。山と森だけの小さな国などの、更に半分などいらんわい 」