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第11話 魔王の過去

「姉さん……」


 魔王シーデスは墓参りに来ていた。山の中腹の陽当たりの良い広場にある小さな木のお墓。お墓の周りには小さなお花がたくさん咲いていた。


 暖かな風が優しく吹いている。魔王はお墓の前で目を瞑り、過去を振り返っていた。




 敵国に攻められて燃え上がる村。大人達が戦っている間に抜け穴を使い村を逃げ出した子供達。そこにはまだ子供のシーデスと、少し年上のシーデスの姉がいた。


 しかし魔犬を引き連れた敵が追いかけて来る。


「子供達を連れて逃げて、シーデス 」

 僕と姉さんは村の小さな子供達を4人ほど引き連れていた。


「でも、姉さんは?」

「私はここで敵を引きつけるわ 」

「駄目だよ。危ないよ 」

「私が一番年上だし、私の魔力は村一番よ。追いつかれたらみんな殺されてしまうわ 」

「でも……」

「私の魔眼の力は知っているはずよ。貴方達がいたら邪魔なの 」


 姉さんは強力な魔力を有する魔眼を持っていた。既に村で敵うものは誰もいない。いずれはSランク、魔王に到達するとも噂されていた。


「行きなさい 」


 姉さんの青い目が緋色に変わる。

 緋色の魔眼は精神に干渉する。

 僕は必至に抵抗するけど逆らえない。


「行こう、みんな 」

 僕は子供達を引き連れて駆け出した。


 ・

 ・

 ・


 僕達は薄暗い山の中を何時間も走り続けた。そして小さな小川の川辺で倒れ込んだ。


「くっくっく、お待ちしていましたよ……」

 黒いマントを羽織った魔法使いが、森の中から現れる。


「な、なぜ?」

 僕の後ろに子供達が隠れこんだ。


「くっくっく、私は北の魔帝国マズルのネクロマンサーのダーリ。子供の足に置いて行かれるわけが無いでしょう 」


「ど、どうして僕たち子供達なんかを追いかけて来たんだよ 」


「マズルは弱肉強食の戦闘国家なんですよ。子供の頃から地獄を見せて徹底的に鍛えるのですが、訓練で死んでしまうものが多くて常に補充しないといけないのです。私達はスカウトなのです 」


 ダーリはゆっくりと近づいて来る。


「うーん。とても素晴らしいですね。先頭の一番大きな貴方!!」


「僕? 」


「貴方以外の潜在能力(ポテンシャル)は最低でもBランクはありそうですね。先程、足止めに回って来た女性もSランクですし、大漁ですね 」


「ね、姉さんはどうしたんだ? 」


「ね、姉さん?貴方はあの潜在能力(ポテンシャル)Sランクの女性の弟さんなのですか? 」


「そ、そうだ。姉さんはどうしたんだ 」


 ダーリは下を向いて身体を震わせた。

「くくく、くっくっく。潜在能力(ポテンシャル)Sと言えば、育て方次第では魔王に到達しうる逸材……その弟が潜在能力(ポテンシャル)Dのゴミ屑とは 」


 ダーリは僕を指差した。


「くっくっく、貴方。お姉さんに良い所を全て持って行かれましたね!!

 お姉さんは私の上司のスゲーダ様がお相手してますよ。心配はいりません。マズルに連れ帰って未来の魔王になって頂きますので大事に扱いますよ 」


「シーデスちゃん……」

子供達が僕にしがみ付いてくる。


「貴方はDランクなのでいりません。お姉さんに免じて見逃してあげましょう。

さぁ、子供達を差し出すのです 」


「ふざけるな!!姉さんに頼まれたんだ。子供達は渡さないぞ!! 」


潜在能力(ポテンシャル)だけで無く知力もDランク、いやEランクですか……」


ダーリは僕に近づいて来て、長く鋭く伸びた手を伸ばして来た。


グサッ


僕の胸をダーリの手が貫いた。僕の口からも血が溢れ出した。


「シーちゃん!! 」

「シーデスちゃん!! 」

「シー……」



子供達の声が遠ざかる……


僕は意識を失った。



「う……う、うーん……」

僕は死んだはずだったのに意識を取り戻した。






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