私はどこで選択を間違えた
あらすじはふざけました。
「やった、やったぞ、ついに私はやり遂げた!!」
私は先の戦争で負けた国の王女。戦勝国に属国の証として送られただの后となった。そこでは夢のような暮らしがあった。どんな願いも叶えてくれる環境。陛下都内だけだが自由に動き回れる。
私はこれを幸福に考えていた。
ある日、陛下と食事をした際に話しかけられた。
「ここでの生活は不自由はないか」
「えぇ、ちっとも御座いません。それどころかとっても自由です」
「あぁ、それは良かった。何か他に聞きたいことはあるか」
「それでしたら、陛下。私の国の近況を聞きたいのです」
「貴方の国は民が今飢えることなく過ごしている」
「それならば良いのです。ありがとう御座います陛下」
「でも貴方は満足そうな顔ではないね」
「それはどういった」
「いや、何でもない。もうご馳走様だ」
その食事会から数日、私はずっとモヤモヤを抱えていた。この暮らしに不満があるわけないのに。なんだかあの日から水面下で顔を出さずにいた何かを渇望しているような気がしてならないない。
そんなこんなをしているうちに後宮には私しかいなくなってしまった。元々は100人くらいいたが下賜やらなんやらで後を去っていった。私もいつかそうなるんだろうなと思っていたが一向にこない。
そんなある日、陛下に呼ばれ陛下の執務室に行った。
「失礼いたします」
「待っていたよ。突然だが貴方はずっと何かを求めている。そうだね?」
「陛下、私は別に何も求めてなど」
「しらばっくれるか。まぁいいよ。ここに呼んだのはこれを見せるためなんだ。」
と言われ差し出してきた絵を見ると、そこにはたくさんの焼かれた家、煤けた親子、走っている男性、子供をきつく抱きしめている人など様々な人がいた。そして遠くに見えるのは祖国の国旗。
「これってもしかして、私の国?」
「あぁ、君の国だ」
それを聞いた瞬間私は飛び出した。心の中にあったものがぐちゃりと潰された感覚がしたからだ。
このままでいては……
そう思い自室に向かい隠してある毒を煽ろうとした時、息を切らした陛下がやってきた。
「駄目だよ。そんなに恍惚した表情で死ぬなんて。民が苦しんでいると聞いて貴方は喜んだ。だが、貴方は王女であったときの感覚がまだ残っておりそれ故この感情を無かったものにしようとした。そうでしょう?」
「え、えぇ、その通りです。陛下。私はあの絵を見て、非常に高揚しました。だから死のうと思ったんです」
「でもそれが僕に止められてしまった。それにも憤りを感じている」
「その通りです。ですから自害することをお許しください」
「駄目だよ。君は駄目だ。」
「なぜですか!私は元王女としての務めすら果たせない人間にはなりたくないのです!!」
「駄目だよ。君は。だって君を愛してしまったからね」
「あ、あああ、あい……ですか?」
「うんそう。だから駄目。どんな君でも愛してる。どんなことでも許せるけど勝手に死ぬのもどこかにも送り出せない程にね。もちろん君が復讐したいと言うなら手伝うよ。あそこは五月蠅かったからちょうどいいし」
「申し訳御座いません、まだ頭が追いついていないので休憩の時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「いいよ。でも僕と一緒が条件。あと手に持っているのも頂戴」
「ありがとうございます。どうぞ」
何もかも急展開でこんがらがった頭を休ませているとこの状況を理解してきた。私は祖国が憎い。理由は家族が国民に殺されたからだ。自分たちを二の次にしてまで安寧と繁栄を求めて政治をしてきた。それなのに国一番と呼ばれるホラ吹き占い師のせいで王族がこの国を悪化させているという占いを出しやがった。それのせいで、国民がクーデター。そして運悪くこの国が攻めてきてあっさり負けた。私以外の家族は戦犯者ということで公開処刑された。私は証であったから免れた。父は優しくいつも国民を考えて行動していた。母は先導者としていつも高潔で潔い人だった。兄は外交が優れていていつも家にいなかったけれど帰ってきたときはいつもお土産とその国での話をしてくれた。姉は私が10歳の時に隣国へ嫁いでいってしまったけど、イタズラのやり方を教えてくれた。
みんなみんな大好きな家族だった。けれど国民の手で殺された。
今までは頭が深く考えないようにしていたけれど、今はっきりと思う。
祖国をもっと完膚なきまでにぐちゃぐちゃにしたい。
「僕を使って」
一人の世界に入り込んでいた私は隣にいる存在を忘れていた。まるで私の思考を読んでいたかの様に発言してきた。
「声に出てる」
そう言わればッと口を塞いだがもう遅い。その一瞬前に陛下の唇で塞がれたからだ。
「僕に手伝わせて。頷くまでずっと塞ぐよ」
「へ、へいか」
「ついでに僕の名前はアルね」
アル様と消え入りそうな声でぼんやりと呟いたあと、頷いた。
「じゃあまた後でね。単独行動は駄目だよ」
そう言って私の部屋を出て行かれた。私はヘナヘナと座り込みダンゴムシみたいに丸まっていた。
数時間が経ち、私は陛下との恋愛は後にして今は愛すべき国民への復讐を優先させることを決意した。
陛下とも相談をし一番効果対費用がいいものを選び遂に復讐の日がやってきた。
復讐の始まりだ
ドーンやら人々のざわめく人々の声、バババババババという音を聞き私は素晴らしい快感を感じた。一緒に来ている陛下もなんだか嬉しそうである。
時間が過ぎ、最後の村も完了したことを聞いた。遂に、遂に!!
「やった、やったぞ、ついに私はやり遂げた!!」
嬉しさのあまり声をあげた私を陛下は愛おしそうに見つめてきた。
「陛下、今までありがとうございました。私の復讐劇にお付き合い頂き感謝の言葉もありません」
「なに、気を使うな。この事は私も望んだことであるしな。まだやりたいことはあるか?」
「いえ、もうありません。行きましょう。あの国へ」
「あぁ、帰ろう」
その後は私が陛下を好きだと気づきひと悶着あったり、正妃となり大変な毎日を送ったりがあったりなかったり。
あの日私は復讐を選んでよかったと思う。
これ以降はハピエンではないやつです。
復讐を果たした日から1ヶ月。私は声が聞こえるようになっていた。
なぜ国民を殺した。
憎かったから。
なぜ憎いんだ。
私の家族を奪ったからよ。
家族を奪われるような原因は。
ないわ。ホラ吹きに国民が騙されたからああなったのよ。
お前たちは常日頃伝える努力をしていたか。
していたわよ!お願いもう黙って!
いいや、まだだ。お前はまだ終わっていない。穀物庫が少しずつ放出されていること。外交を必要と感じない人が多いあの国で必要性を周知していないこと。王宮を開けなかったこと。全部全部自分たちで完結させていなかったか?挙げ句の果てに家族は悪くない。国民が全て悪い。この考え方はあの国の考え方と一緒ではないか?もっと言うなれば
お願いもう帰って!!
今日帰っても、明日も来るぞ。いつまでもいつまでも来るぞ。
帰れ!!
私の今日の限界が来たとき声はしなくなる。だが明日も来ると考えると朝が来てほしくない。朝が怖い。朝に喰われる前に逃げたい。
日に日に顔が悪くなる私に陛下は何にも言わない。前に声をかけられた時に話を流したからだ。陛下はそれだけで触れてほしくないという話題ということがわかった。いっそ陛下にも話して楽になってしまおうか。頭にそれがよぎったが、どうしてもできない選択だった。前に声に
他の人に話してみろ。今度から声が2倍になって聞こえるぞ。
そう言われたからだ。
このことを伝えるならきっと手紙になってしまうだろう。
おやすみ陛下。
次の日、私は一つ決心をした。
まずお手紙を買った。陛下宛とその他宛だ。
次に自分の一番好きな衣装を買った。そして毒を買った。
久しぶりに声が聞こえていても私は穏やかに過ごせた。
いつも青褪めている私が機嫌良さそうなのを見て陛下は安堵し懐疑心を抱いていた。見てわかった。だから私は事前にいろいろなものを隠しておいた。絶対に陛下には見つからない場所に。
こんなにも気持ちよく朝が迎えられたのは久しぶりだ。
後は私があそこに行くだけね。朝食を摂って昼まで時間がある。その時間を使って行こうかしら。私は魔法が使える。今まで使うことがなかったから使わなかったが昨日陛下から準備品を隠すのに使ったり、今日あそこへ行けるように使ったり。
私は魔法を使って準備しておいたものを机の上に置いた。これはなんか恥ずかしいので翌朝に出現するように調整する。
昨日買った白いワンピースを身に纏い、あそこの場所──祖国の最後を看取った場所へ行く。
やっぱり私はこの国の人間なんだなと思いつつ毒を煽った。確実に息が絶えられるように魔法で周囲のいかなるものを通さないようにしながら。
煽った直後、何故か陛下の声が聞こえた気がした。
おまけ
なぜ陛下の声が?
今までずっと青ざめていたのに急に顔が良くなり諦めたような顔をしていたから先回りして来ていた
主人公は助かった?
ご想像におまかせします。作者は助からないと思っています。
なぜエンドツーパターン?
元々後ろのエンドを考えていました。ですが書いている途中に幸せになってほしいという気持ちが出てきてハピエンを追加しました。
急な魔法設定何で?
魔法を使わないと陛下に負ける。
陛下の言葉遣い
公とプライベートでは違うという設定があります
あの声の正体は?
自責の念です。別に家族とか友達とかでもありません。そもそも主人公ちゃんに友達いるかどうかも怪しいです
ちなみにハピエンはひ孫まで囲まれて陛下と主人公は微笑みながら老衰します。
もう一つは主人公はこの世を去り、それに絶望した陛下が後継者を育て引き継ぎをし後を追うように同じ場所同じ時間対になるデザインを着て、同じ毒で死にます。