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ルイスの変化


 あの日からルイスは変わった。排他的で驕り高ぶった性格は鳴りを潜め、外を知りたがるようになった。

 従者に対しても話しかけるようになり、話しかけられている方は怯えているだけなのが少し面白い。



「私は今まで、ひどい王子でした。他者を見下し、弟を(しいた)げ、果てには家族にまで見放されていました。

 コーダという者が私に世界の真実を教えてくれたのです。この城の中しか知らない私に、普通の人間がどう生きているかを。」


 ルイスはこの国の最重要人物である、国王ロイエルにひざまづいている。

 以前は誰かに頭を下げるなんて誰も想像しなかった。


 それと何よりも、自分の悪行を認めているような言い回しだ。


「私は第一王子という身でありながら、この国の品位を落とすような行いばかりしてきました。

 一度でもいい。私は外の世界が見てみたい。国王様どうかこの願い叶えていただけませんでしょうか?」


 第一王子というのは、ただ出掛けるだけで大仰なんだな。外で何かあったら一大事だし考え物だよなあ。

 かしずくルイスを見下ろしている国王は、近くにいる宰相と幾たびか言葉を交わした後に口を開いた。


「ルイスよ。これまでお前の行いによって不利益を被った者は数知れん。お前が直接手を下さずとも被害に遭っていた者もいるやもしれん。

 今、お前の言う事に頷くことは出来ん。沙汰を待て。」


 そう言うと、ロイエルは玉座から立ち上がって宰相を連れて部屋から退室した。

 俺は、玉座のある場所から真反対側、ルイスの後方の壁に立っている護衛や衛兵の列に並んで一部始終を見ていた。



 国王が退室したのを確認した後、ルイスは立ち上がって、国王が退室した扉とは違う出入り口へ歩き出した。

 チラリと俺の方へ視線を寄越したので、ルイスの向かっている扉を開いて、ルイスとともに退室した。



 廊下を歩いてルイスの私室の扉が見える場所まできた時、扉の前でずっと待っていたのか、聖女が顔を上げて会釈をしてくるの見える。

 俺以外の侍従がいないルイスと、珍しく1人だけ護衛を連れた聖女と相対する形になった。


「フォミテリアだったか、何か用か?」

「殿下に少しお話があります。あと・・・、幸田くんにも。」


 聖女はずっと俺の方を見ていたので本題は俺にありそうだったが、ルイスは聖女を私室に招き入れた。



 聖女とルイスはソファに座って向かい合い、俺と聖女の護衛──シエラというらしい──は、互いの主人の傍に立っている。


「話というのは、転生者の所在についてです。」

「転生者・・・。以前の話から、コーダとお前を含め8人いるという事だったな。」


「はい。・・・そしてその8人は同時にこの世界に生まれた事が分かっています。つまり、現時点で7歳と8ヵ月の才能ある子女が対象になります。」


 細かいところまでは分からないけど、多分俺もそのくらいの歳になるかな。


「それでそいつらを探してどうしようと言うんだ?」

「私達はこの世界にはない知識を持っています。転生者を一堂に集めることで、この国の、いえこの世界全体の文明開化に繋がるのではないかと思っています。」


「文明、・・・開化。」


 なんとも難しい話だ。それに俺を数に入れたところで、覚えていないのだから抜けさせて貰いたいくらいだ。

 目の前の聖女は、俺のそんな思考も想定済みなのか、ルイスにある提案をした。


「私は、今までこの国の至るところを訪問しました。その時に、ある程度は目星をつけている人達がいます。

 ・・・ルイス殿下は、市井をご覧になりたいと仰っていましたよね。私に同行する形で外の世界を巡ってみませんか?」


 こんな提案、今のルイスには喉から手が出るほどに好都合だ。そして俺はルイスのただ1人の護衛。

 俺は、まんまと聖女の策略にはまってしまったのだった。



 聖女は日程などを調整するために去っていった。

 ルイスも国王へ直談判するとかで、俺は完全に単独行動をすることとなった。


 うろつくと怪しく思われるので、ルイスの私室でそのまま暇を潰す事にした。



 抱えているアルヴィを柔らかいソファへ寝かせてあげる。アルヴィを抱えていると、少し湿っぽいように感じられるのが、最近不思議だ。

 特製の隠蔽魔法なので、アルヴィ自体は俺以外に見えないけどこの湿気はどこから来るのだろう。


 ベッドで寝かせたあとも似たような状態な事が多い。俺が見る限りはいつも変わらぬアルヴィなのだけど。


 アルヴィの髪の毛を手で梳いているサラサラとした感触に、レティシアと話した以来、久々に心が落ち着いていった。

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