2年後
あれから2年が経ち7歳になりました。
あれから2年が経っていた。背もだいぶ伸びて、120cmくらいになった。
アルヴィを抱きかかえるのに魔法を使わないで良くなったけど、両手が塞がってしまうので、基本的には魔法で体にくっつけている形だ。
四六時中アルヴィと共にいるので、ジュマードの街にいた頃みたいに、常にお互いを感じ合って生活している。
そして俺の魔法発動は通常とは違うようで、その研究目的で城内の研究所内で生活している。
魔力封じの枷は、2年も経つと信用されたのか今では外している時間の方が多い。
日常生活にも支障が出るし、ちょっかいを出されなければ俺も暴れないので許されたのだろう。
この2年で判明した事ではあるけど、俺の魔法は原始魔法というカテゴリで、原始の魔法は今の一般的な呪文を唱える形式は無く、イメージを再現するような形式だったようだ。
現在でも精霊などが使っている言い伝えがあるくらいで、俺の魔法は特別珍しい発動方法のようだった。
だが、その原始魔法でも説明できないことがある。
魔力封じを受けてなお、魔法が使えることだ。
とは言っても、自分自身ではどういうものかの見当はついている。この力の代償は記憶だ。
それに古い記憶から優先的に消費されている、と思う。
アルヴィのために使った記憶を消費した聖魔法は、いまだに継続して発動できているので周りからは見えない。
力の正体が分かった時に少しいじって、俺だけには視認できるように改良するくらいは、十分自由に扱えている。
俺はこの記憶を消費する魔法を崩壊魔法と名付けた。いずれ記憶が無くなってしまうのでは、という不安からあえてマイナスイメージを持たせた。
それに原始魔法とは区別しておかないと、使い分ける時にややこしい。
【名前】コーダ
【年齢】7
【レベル】12
【ジョブ】奉仕人
【魔法属性】雷 闇 聖
【体力】150/150
【魔力】500/500
【力】 50
【守り】15
【速さ】30
【運】 12
【スキル】『毒耐性』『病気耐性』
【状態異常】記憶障害
今のステータスはこんなところだ。自分で意識することが、明確に反映されるのだと最近になって思う。
研究所によれば、使うものほど成長しやすいらしく、魔法特化な俺は著しく魔力が伸びている。
それに一般的な冒険者のステータスは、どれも100前後に落ち着くらしい。そういう意味では、俺はまだまだ非力な子供だ。
この世界は、イメージや意識など抽象的なものが形になるので、分かりやすい面もある。
でもあくまでそれは魔法を使える人間だけで、普通の人間には普通の世界にしか感じることはできない。
◆
そして今、俺は研究所での日課である魔物を使っての実験をしている。原始魔法は、呪文詠唱がない魔法なだけなので、それとは別の崩壊魔法の研究を主としているようだ。
自分自身では分かっている事ではあるが、前世の説明のしにくさ、消費している記憶の証明など面倒ごとが多い。
今の生活もあるし、お払い箱にされるよりは良いだろうと思って黙っている事にしている。
王都の裏手、野生の森ではあるが研究所の管理下に置かれているらしい場所で、確認された魔物の間引きを行っている。
目の前には、1mほどの狼型の魔物、ブラックウルフという個体らしい。
俺に課せられている条件は、闇属性の崩壊魔法で砂のように分解させること。
俺にとっては戦闘経験を積めるありがたい作業だ。死角から撃ち込んで少しでもかすれば、その部分から分解されていく。
森の中を駆けながら、大体10匹ほどを間引いたあと研究員のいるキャンプへ戻った。
「今日も見事だね。その動きならもう実戦でも使えるだろうさ。」
「どうも。では早く帰りましょう。お腹が空きました。」
そう言う俺に頷いた研究員は、帰り支度を始めていた。
この研究員の名前はウィルと言って、昔にアルヴィに近づきやがって殺しかけたことがある。
(・・・いけない。落ち着け落ち着け。昔のことだ。こういう時はアルヴィの匂いだ。)
俺は胸あたりに抱えているアルヴィの体に顔ごとこすりつける。
アルヴィのスベスベの肌や柔らかい髪の毛にくすぐられて、次第に顔が緩くなる。
「ふふっ、くすぐったいよ。」
ああ、アルヴィがいればこの世の争いとかも無くなるんじゃないかな。そう恍惚な表情で、顔全体でアルヴィを感じていた。
「・・・はあ、これがなきゃ、普通の子供なんだが・・・。」
「・・・何か言いました?」
「いや、何でもない。さて帰ろうか。」
俺達は3人で馬車に乗って帰る。ウィルはいつも気を遣ってくれて、俺とアルヴィを2人きりにしてくれる良い人だ。
帰ったらうんと可愛がって、ベッドに寝っ転がって、一緒に昼寝でもしよう。
柔らかなアルヴィの頬に軽く口付けをして、窓の外を流れる景色を見ながら帰途に着いた。
◆
子供の身ではあるけど、本で勉強するのが割と楽しい。城内にある図書館から本を借りてきてもらって、勉強をしている。
第二王子というヤツが俺と同い年らしく、高等教育くらいまでの内容の本がある事には驚いた。
名前はもう思い出せないけど、俺と一緒に転生した人間に賢いのがいた事を覚えている。
大方、そいつがこの国の教養を高めている一因になっているんじゃ、と思う。
基本的には、外出禁止の身の上なので読書以外にやることがないというのもある。
夕食が運ばれてくるまで読書をした後、体を水で拭いてから寝床に入る。
当然だが、アルヴィの体も拭かなくてはいけない。誰にも見られないようにはなっているけど、アルヴィの全身を拭くときには、いまだに目をギュッと閉じていないと恥ずかしくなってしまう。
アルヴィの柔らかな肌に触れるたびに、ドキドキと心臓の鼓動が早まってしまう。急いで終わらせてしまわないと、おかしくなってしまいそうだ。
粗方、拭き終えた後は清潔な白い服を着せてからベッドに寝かせる。
「ふぅ・・・、いつになっても慣れないな。」
そう独り言ちてから、今では自分より小さくなったアルヴィに寄り添うように寝床に入る。
やっぱり、この瞬間が一番幸せだ。
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