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EX 神、更なる高みへ

これも再投稿になります。

既にお読みになられている方は、お手数ではございますが、5・6部をお読みください。


ベリルテス視点です。次回からは主人公視点に戻ります。


 魂とは、その者の情報を記した名刺の様なものだ。年齢を重ねるにつれ大きさを増し、基本は無色透明であるが、大きな犯罪を犯した者は赤く、心に異常があるものは黄色く、というように死者になった状態に応じて姿形が変わるものである。



 我はベリルテス、数多ある世界の管理者である。


 我は絶望し恐怖した若者達の魂を喰らうために白の空間へと戻ってきた。この空間は世界の輪廻転生を一括管理できる場所でもある。川に水が流れているように、ここには多くの死者の魂が流れている。

 先ほどの事故もあり、処理できていない魂が多く、しかも絶望したようにドス黒く変色しているものが固まって流れていた。


 それらを流れから外し、1箇所にまとめて吟味していた時に我に衝撃が走ったのだ。

 あの若者がいないではないか・・・!

 あの若者のために、こうまで仕立て上げたのに肩透かしを食らった気分だった。


 再度流れの中を探してみると、即死した少数の中にその若者はいた。

 ああ、何と呆気ない。この者のためにあの作品を作り上げたというのに・・・と思いながら絶望に染め上げられ、ドス黒く変色した魂を喰らっているときに我は思った。


 そうだ、新たに生を受けさせて我好みの絶望の底で死んで貰えば良いのではないか、と。


 ベリルテスは残りの魂を喰い尽くし、この発想に打ち震えながら転生の準備をしていくのだった。

 今まで最高の味わいだと感じていた、ドス黒く変色した魂に物足りなさを感じながら・・・。



 転生とは、輪廻転生の輪の中から別の世界輪の中へ移すだけで済む。管理者からすれば造作もないことだ。

 この若者達が住んでいた世界には、転生を題材とした作品群が存在している。日々に退屈や無力感を持っているものが転生することで、異世界で成功を掴み取るというサクセスストーリーが主である。

 これを利用しない手はないと考え、似たような設定をしたデルランドと呼ばれる世界へ魂達を転生させることに決めた。



 デルランドは、魔法、スキル、レベル、ステータスなど地球でいうゲーム的な要素を持つ世界である。


 この世界は魔法によって優劣が決まり、王族や高位貴族から平民になるにつれ魔力を持たなくなるようになっている。魔力を持つ者は貴族とされ、持たざる者は平民となり、自らの身体を鍛えて冒険者となる者が多い、そういう世界だ。


 持つ者と持たざる者の境界線がハッキリしているのもあってか、貧富の差が顕著に見られるのが特徴でもある。



 白の空間の外れの方、遠くに我が管理する数多ある世界の魂の流れが、色とりどりに発光し美しい景色になっている。我のお気に入りだ。


 即死してしまった若者達の魂をここに集めて、今回の事態とこれからの転生を掻い摘んで話していく。

 あの若者を始め、即死した8人を白の空間で実体化させ転生を行うという旨を話すと、その内の1人が食いついてきた。

 その者は地球で似たような作品を読んでいたようで、ひどく興奮していた。


 この者のおかげもあって、話はスムーズに進み、彼らに生まれの選択をさせることにした。

 この生まれの選択が今回の発想の(きも)となっている。


 貧富の差が明確なデルランドにおいて、貴族であるかそうでないかは重要だ。王族となれば自由気ままに遊び放題できてしまう。なぜなら権力のヒエラルキーは勿論のこと、武力のヒエラルキーにも頂点に立っているからだ。

 王族から順に地位が下がるにつれ魔力が少なくなると言うことは、その分戦力が落ちる、平民に至っては武器すら無い、そんな状況に陥ってしまう。


 今回は生まれの選択に平民を混ぜ、更には最底辺である孤児も入れた。

 誰も選びたがらないのも興が醒めてしまうので、生まれが過酷であればあるほど、成長しやすいという特典も付けている。果てさてどうなってしまうか楽しみだ。



 なんとあの若者が、孤児を選択したというのだ!ああ、なんということだ、自ら我を悦ばそうとは頭が下がる思いだ!

 若者の気が変わらないうちに、我の歓喜が露見してしまう前に早速転生させてしまわねば!


 大仰な文言を唱え、若者達の前途多難を願い送り出す。


 少し急ぎすぎて不審に思われたかも知れないがもうどうでもいい。

 あの若者達が、絶望を胸にデルランドを生きてくれることを願いながら思わず笑ってしまうのだった。


「クァーハッハハハッハ!」

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