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ユーゴーの思惑

今回も平民に転生したクラスメイトのお話です。


※魔力測定について描写不足だった部分を加筆しました。


 なんとか2人を丸め込んで、帰ったら俺を一日中好きにしていい事を約束させられてから3日後。

 ついに俺はこの街を出る。出ると言っても、護衛の見習いとしてだが。


 意外にも経験豊富だったドンゴは、いつも依頼をともにしている者達とパーティを組んでいた。


(確かにこういう依頼は独りよがりではなかなか辛いだろうし、こういう仲間を作るのは必要だよな。)



 俺はそのパーティに混ぜてもらい、この護衛依頼のやり方を教わっていく流れになっている。

 俺達以外にも、何組かのパーティがあり総勢で10人ほどがいた。


 俺のように付き添いで来ているような、弓を背負った10歳くらいの少女も1人いて、手を振ってみるとお辞儀を返してきてくれた。



「オッ、来たぜ。」


 ドングが指差す平原の先を見ると、大体10人くらいの人間に護衛された大きめの幌馬車が2台あった。


「あれ?けっこう護衛いないか?」

「んああ、アイツらはここまでで、ここからは俺らが引き継ぐんだ。」


 リレー方式なのって賢いな。その分、金が掛かるだろうけど。


 その隊商が到着するやいなや、ドンゴなどこちらの冒険者達が歩いてきた護衛達を(ねぎら)う。

 俺と別のところにいた少女だけが取り残されてしまって、2人で顔を見合わせてしまった。


「へー、こういうことをして他の地方の冒険者と交流してるんだ。」

「・・・え、そういうことだったんですか?私はてっきり知り合いなんだとばかり。」


 俺が独り言のように呟くと、いつの間にか隣にいた少女に感心されてしまった。


「俺はユーゴー。君は?」

「わ、私はカナメって言います。ユーゴーさんの名前は聞いたことあります。すごい才能の持ち主でギルド長からも信頼を置かれてるとか。」


 そんなでもないと手を振って適当に相槌を打っていると、ドンゴ達が戻ってきていた。


 それからは仕事を引き継いで、初めての護衛をすることになった。


 俺の歩幅が狭いので、少し小走りになってしまっていたため荷馬車のヘリに腰掛けている。

 魔物が襲ってこない限りは暇なので、足をプラプラさせていた。



 荷馬車の屋根の上では、目の利くカナメや他の弓使いの冒険者が索敵をしていてちょうど今、顔を出してきていた。


「みなさん!敵です!右方向から狼型の魔物が10匹ほど見えます!」


 やっと仕事か。荷馬車はゆっくりと速度を落としながら止まり、俺はそれを見計らって地面に着地した。

 冒険者達はガチャガチャと武器を取り出して臨戦態勢といったところだ。

 

「一番前に白い個体がいます!気をつけてください!」

「白だとっ!気いつけろ、変異種だ!」


 変異種ねぇ。俺はとりあえず魔法使って様子見だ。


 他の冒険者より後方あたりで待機していると、カナメの言っていた白い狼が姿を見せた。

 その狼は他の同種より一回り大きく、むき出しにした牙は赤黒いシミがあるのが見えた。


 その白い狼は速度を落とさずに荷馬車の前に陣取っていた冒険者達へ接近する。

 カナメ達の放つ鋭い矢も意に介さないようで、疾走する風でぺたんと倒れた毛皮に弾かれている。


 白い狼は勢いを殺すことなく飛び上がって、冒険者達へ襲い掛かる。

 近くまで来ると、その大きさがありありとわかった。


 他の狼達は体高7、80cmほどだが、この白い狼は1mを軽く超えている。

 その大きく強靭な体を振り回しながら冒険者達を蹂躙している。


「うがぁ!なんだコイツは!」

「全然、刃が通らねえ!」


 冒険者達は1匹の狼相手に手をこまねいていた。5人ほどに取り囲みながらも、逆に追い詰められているのは冒険者だった。


 周りからは10匹ほどの狼も到着している。そろそろか。


「ウインドスラスト!」


 風が巻き上がり刃となって魔物に襲いかかる。硬い毛皮も速い足もお構いなしに切り裂いていく。

 刃が通ったところから血が飛び出すも、気づいてないのか滑稽に関節をバタバタと動かしている。


 同時に周りの狼達も巻き込まれて、物言わぬ死体と化す。


「うわあああ!なんだぁ!どうしたっていうんだ!」


 急にこの惨劇が目の前で起こされたものだから、魔物達の攻撃だと勘違いして慌てている者もいた。


「もう心配いらないよ。俺が魔法を使った。」

「・・・おい、ユーゴー。オメエ・・・。」


 前線にいた冒険者達の1人であるドンゴが俺の方へ向いて、武器をしまわずにこちらへ歩いてくる。

 血しぶきが鎧についていて、大柄な体型も相まってそれだけで威圧感がある。

 ドンゴは手を振り上げて、俺の肩を強く叩いた。


「オメエ、そんなんがあるんなら早くしろっ!」

「・・・へっ?」

「無駄に時間かけたじゃねえか。次からは出し惜しみすんじゃねえぞ!」


 ドンゴは意外にも怒ってはいないようだ。なるほど、これは転生後のあれ(・・)か。


 そのあとは、特に大きなイベントもなく無事に王都へと着いた。

 ただ荷馬車に乗っていた、俺と同じくらいの薄汚い子供がいたのだけが気にかかった。

 

 王都での用事を済ませる前に、ドンゴに聞いてみたことがある。


「あの子供、なんか気持ち悪い。目はギラついて、突然笑い出したりするし。」

「あー、あの何もいないところに話しかけているヤツか。あの歳であんなトコにブチ込まれちゃおかしくなるってもんよ。同情しちまうな。」


 確かにあんな所で生活していては、死んでしまう方が普通だ。奇跡的に生き残ったところで、あの環境なのは酷だろうなぁ。


(美少女だったら助けてやったけど、男じゃいらねえ。ま、元気に生きることだ。)


 俺はその子供や他の奴隷らしき人間を乗せた馬車を見送ったあと、本来の目的地を目指すことにした。

 目指すは城と引けを取らないほど荘厳な建物、教会へ。



 俺は教会で鑑定魔法を受けつつ、魔力測定を受けている。魔力があればステータスを表示できるらしいので、あとでじっくり見ておくか。

 俺と同じく平民で魔力持ちというのは、意外と少ないらしい。


 そもそも貴族しか持ってないとされているのだから、平民が持つ事自体が異常だ。

 だが天才というものは、どの生まれにおいてもいるもので、魔力にしても生まれながらに持つ者がいるらしい。


 結果的に貴族が保護するらしいので、平民には誰一人魔力持ちは残らない。それなりに金品が支払われるらしいが。


 もし持ってたら儲けものという感じで、記念受験のような雰囲気だった。



 魔力というのは力の証明。持つ者は貴族という枠組みの中に滑り込み、平民の肩書きは捨てる事となる。

 俺はこの類稀なる能力を買われて、エルダール伯爵家の養子として新しい一歩を踏み出す事となった。


(ハーレムルートのためには、ロナとトレッサも連れて行く必要があるよな。気ままな冒険者稼業も良いけど、貴族になる方が安定か。)


 それにしても、あの汚らしい奴隷のような子供は何だったんだ。生まれが孤児とか浮浪児だったら、俺もあんな感じだったんかな。

 そういや孤児に転生したクラスメイトがいたっけ。元気にやってるかなぁ。


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