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灰谷勇の転生

平民に転生したクラスメイトのお話です。


 俺は、今の人生に嫌気がさしている。ネットで見た異世界転生小説にハマった時から、俺も転生してみたいという考えが頭から離れなかった。


 転生した時のために、剣道も習ったし運動も出来るように頑張った。勉強はそれほどだったが、ネット小説を読み漁ることだけは日課としていた。



 そんな俺のついに夢が叶ったんだ!バスの事故で転生した俺は、異世界に転生してユーゴーという名前をもらって、幼児期を満喫している。

 俺を慕う妹と隣の家にも可愛い幼馴染みもいるし、勝ち確(・・・)だ。

 あとは冒険者になって、金も名声も手に入れてウハウハハーレム生活だ!



 そのためにも王道でもある魔力操作だな。魔法の有る無しで今後の人生も変わってくる。

 体の基礎訓練と魔法操作を主軸にして、冒険者を目指す!


 

 今日は3歳の誕生日。隣家の同い年の幼馴染み、ロナを巻き込んで一緒にお祝いをした。

 一歳下の妹、トレッサは俺にひっついていてとても愛くるしい。


「おめでとっ。ユー!」

「ユーにいさま。おめでとう。」

「はははっ。ありがとう2人とも。嬉しいよ。」


 テンプレ通りに目の前の2人の頭を撫でる。顔を緩く綻ばせた2人はとても可愛らしい。

 ああ、異世界転生できて良かったなぁ。


「あら、2人とも嬉しそうねぇ。そんなにユーゴーの事が好きなのかしら。」

「うん・・・。あっ、ちがうわよ!ぜんぜん、そんなことないんだからっ!」


「あらあら、うふふ。」

「っもう!お母さんったらなに言ってるのよ!」


 ロナが柔らかそうな頬を膨らませて、ぷんすか怒っている。

 俺はロナを宥めつつ頭を撫でることに専念する。そんな光景を見て、妹のトレッサが俺の体へ抱き着いてくる。


 ああ、異世界転生できて良かった。



 4歳になった頃、冒険者になるための小遣いが貯まったので、ついに冒険者ギルドの扉を開く。


 子供が入って来ても何一つ空気が変わらなかったものの、登録受付まで来ると少し緊張したような空気が流れた。

 ガタイの良い壮年の男のいるカウンターの前まで来ると、その男から声がかかった。


「少年、どうした?ここは依頼受付じゃないぞ?ここは冒険者になるための人の受付だ。」

「分かっている。俺は冒険者になるためにここへ来たんだ。金もある。」


 俺がそう言うと、耳をそばだてていた周りから笑いが漏れるのが分かる。

 そしてそんな俺を足蹴にするように、大柄の男が俺のそばまで来ていた。


「オイオイ、いつからここは子供の遊び場になったんだぁ?いいから帰んな。ここにはこわぁ〜い人がいぃ〜っぱいいるんだぞー?俺みたいに優しいやつも珍しいぜぇ?」


(これは洗礼だな。俺が転生したからってここまでイベントが目白押しだとは。ここは有り難く踏み台になってもらう。)



 俺はそんな大柄の男の腹あたりに手をかざして、受付の男をチラリと見る。

 受付の男は俺が何をするか分からないと言ったようで、俺に疑問の目を向けてくる。


(ハッ!このイベントにはちょうど良い噛ませ犬だ!見とけよ、俺の実力を。)


「ウィンドブラスト!」


 そう俺が魔法を唱えた瞬間、かざしていた手から風の衝撃が放出される。

 至近距離でぶつけた大柄の男は、体をくの字に曲げて後ろの机に突っ込んでいった。


「これで文句ないな。」

「・・・ああ、いや。分かった、ここにサインしてくれ。文字が分からないなら私が書くから、その物騒な魔法はもうやめてくれ。」

「分かればいい。早速だが依頼ってのはあるか?」


 俺はおののいている受付の男の手渡す書類に自分の名前を書いた後、初日から出来る簡単な依頼をこなしてから帰路についた。

 


 夕方遅く、家の前には何故かロナとトレッサがいて出迎えてくれた。


「どこ行ってたのよ!心配したんだから。」

「ユーにいさま、いなくてさみしかったよ。」

「ちょっと冒険者登録して来ただけだよ。あ、そうだ。2人にプレゼントあるんだ。」


 俺は帰りに露店で目についた安い髪飾りを、2人に贈った。2人ともの髪色に合わせて俺が選んだものだ。

 ロナには赤色、トレッサには青色の花かんざしだ。


「喜んでもらえた・・・かな?」

「うん!ユーにいさまっ!だいすき!」

「あっあ、あ、アンタにしてはやるじゃない!・・・宝物にするわ・・・。」

「ん?何か言った?」


 ロナのぼそっと言った言葉を聞こえなかったフリをして聞き返してみる。

 アワアワとして耳を真っ赤にしながら、慌てて後ろを向いてしまったロナの頭をポンポンと撫でた。


 抱きつくトレッサも片手で抱きしめてから、ロナが家に入るまでを見送ってから家に向かう。


(異世界って楽勝だな。あとは冒険者として名を上げるか。)



 更に一年が経ち、冒険者の肩書きもだいぶ板について来た頃。

 最初に受付をしてくれた壮年の男──ギルド長だった──から、とある依頼の案内を受けた。


「ユーゴー君、君に王都への護衛依頼を受けてもらいたい。内容は犯罪者を乗せた隊商の護衛だ。」

「犯罪者?そんなもの護衛の必要があるのか?」


 ギルド長の言うことに疑問符を浮かべる。そもそも犯罪者の時点で守るべき人間じゃないだろう。


「これは奉仕人として王都に移送する道中の護衛だ。それに王都では、5歳の子供に魔力測定をさせる期間があってね。ついでに受けてきたらいい。」

「ん?魔力なら調べなくてもあるだろう?」

「まぁそうなんだが。これを受けると、才能ある者は貴族の肩書きも貰えるすごい事なんだ。ユーゴー君もしっかりと自分の評価を知りたいんじゃないかと思ってね。」


 ギルド長は俺のことをそこまで考えてくれていたのかと、その依頼を承諾した。

 その隊商は、サマター領からここ、エルダール領を経由して王都に向かうそうだ。


 ここからだと2日くらいで王都らしいから、駆け出しの俺にとっては有り難い初級イベントだ。


「一応これ、私の直筆のサインだ。王都にある一番大きな教会にいる、カルヴェールという人に渡してくれ。君のことが書いてあるから良くしてくれるだろう。」

「教会にいるカルヴェールね。分かった。」


「予定では3日後らしいからしっかり準備しとくんだぞ。野宿のやり方はドンゴに聞けばいいからな。」

「オッケー。分かったぜ。」


 ギルド長の部屋を後にして階下に降りる。そこには一際大きく目立っている大柄な男がいた。

 初日に俺に突っかかってきた男、ドンゴだ。


「オウ、来たかユーゴー。あの依頼受けたんだろ?」

「なんだ知ってるのか。」


「そりゃあそうだぜ。何せ俺が推薦したんだからな。オメエもそろそろ外の依頼に出るべきだってな。」


 コイツが手を回していたとは。意外とこう言うことに気が回る優しい奴なのか。


 ドンゴと適当に打ち合わせしてその日は別れた。

 後は明後日に、食料やらを買い込んだりするみたいで、とりあえず今はやる事はなさそうだった。



 そこからは早めに家に帰ることにした。この遠出を説明しないといけないので、少し甘い果物を買ってから帰路へ着く。

 案の定、家の前には2人の少女達が待ち構えていた。


(どうしてこうも勘が良いんだか。まあこれ依頼さえ終わればゆっくり出来るだろう。)

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