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王都

長いです。

このお話で、この章の主人公視点が終わりです。


 奴隷。

 現在、この王国では禁止されている概念だ。かつては存在していたようだが、最近になって廃止されたそうだ。


 今代に決まった法であるためか、奴隷商などは仕事を失わされたこともあり、けっこうな騒ぎになったらしい。


 人権などが一般化されてないような世界では、貧困者や犯罪者が労働力として、自分を売ることはよくある。

 容易に金を手に入れられた手段を、国に奪われた形が反発を生んだのだと思う。



 そのため王国は各地の犯罪者を、奉仕人と銘打って国のために奉公させる道筋をつけ、奴隷商はその犯罪者を全国からかき集めてくる仕事で食いつないでいる。


 貧困者には仕事を斡旋する形で冒険者ギルドが支援しており、表面的にはクリアで清らかなお国柄になったらしい。



 その陰で、〈ヴォーガ〉のような掃き溜めが存在している点がこの国の問題点だと思う。

 そんな感想を抱きながら、目の前でツラツラと難しい事を喋るエリートっぽい男が説明していた。


(つまり俺は奴隷になるのか。今では名を変えて奉仕人らしいけど。)



 意外にも周りの人は安堵したような顔をしている者も見える。

 名前が変わっただけで、大した印象操作だと思う。


 俺達を乗せた馬車を操る男は、そのエリートっぽい男から重そうな小袋を受け取っている。



 やってる事は人身売買と変わらない。この国は何を変えているつもりか知らないけど、臭いものには蓋をして見ないようにしているだけ。

 本質は何も変わっていない。俺はそんな思いを胸に、自分の生まれた土地に想いを馳せていた。



 見せ物のように練り歩いた都会らしき街は、この国の王都だった。

 〈ヴォーガ〉、〈ジュマード〉、〈ルォード〉と3つの街を見てきた俺であっても、圧倒的に都会である事が分かった。


 街中は非常に間隔が広くとられていて、下町のような家屋が詰まった印象がない。暗いことが当たり前の路地でさえも、日当たりを計算しているのか死角がない。


 道はどこも石畳で大きくとられており、馬車同士でさえも3台はすれ違えるほどだ。


 すれ違う馬車の窓に映る、垢の染み付いたボロを着た俺達は、一目で異物だというのが分かった。

 今までも奇異の目で見られているという自覚はあった。

 でもこれほどまでに人間扱いされていない状況はなかった。


 さすがの俺も身がすくんでしまって、アルヴィに抱きつくようにして周りを睨んでいた。



 馬車が大きな屋敷の裏手に停まったあと、檻が下ろされて中に詰められていた同類が連れられていく。


 俺もあの屋敷に入るのだと思って、持ち上げられられる衝撃に構えていると、そのまま馬車は走り出した。

 またあの奇異の目に晒されるのかと、同乗している冒険者に聞いてみた。


「・・・おい、俺はここじゃないのか?」

「ひっ、喋れるのか。・・・あ、アンタは特別なんだ、もっと立派な方へ行くんだ・・・。」

「・・・そうか。」


(そんなに怯えなくてもいいだろ。まあでも特別とは何だろうな。)



 屋敷の裏手を出た後は、先ほどよりも更に豪奢な通りに出た。

 煌びやかで美しい宝石や服飾店などが整然と並び、別格という言葉を感じさせた。


「アルヴィ、君に似合いそうなのばっかりだ。髪飾りなんてあんなにキラキラとしていて。・・・ふふっ、そうだね。さすがに高すぎるよね。」


 アルヴィを撫でながら街中を旅行気分で観察していく。あの辺りにある装飾品とかをアルヴィがつけたら、さぞ綺麗だろうと思って夢想する。

 そうなると本当にアルヴィを誰かに見せることが躊躇われる。あんなに美しいものは、自分の手に届く所に置いておかないと。でもアルヴィと一緒に買い物も行きたいし。


 俺はそう考えながら一人ほくそ笑んで、街を練り歩く。

 俺が言葉を発する度に、同乗している冒険者の顔が、青ざめていくことなど気付かないままに。



 この街で一際大きな建物に入っていく。大きな門には兵士が立っていて、行く手を遮るかのように武器を構えている。


 止められた御者は、何か手形のような札を見せて門を開けてもらっていた。


 門の中は荘厳で、桟橋のような通路を抜けたあと、暗い感じを受ける建物に向かっていった。


 目の前に見える建物の奥には、遠くから見ても一際大きい建物がある。

 王都にある城。つまりここは王城だ。


 俺は今、王城に来ているんだ。



 暗い感じの建物の中へ檻ごと移送されていた。鎖に繋がれているので当然なのだが、暴れるつもりもないので出してくれたっていいと思う。

 人ひとり入れるような独房の前で檻から出されて、中へと誘導される。


 忘れずにアルヴィを持ち上げてから、ゆっくりと中へ進む。悲しいかな、今まで魔力に頼って来たから、フラフラとしてしまう。


 何も見えない人からみたら不思議だろうけど、アルヴィは俺にとっては生きる意味だ。

 寝床らしい場所にアルヴィをゆっくり寝かせてから、静かに座った。


 ここまで一緒に来た冒険者達は目を背け、新たに俺を見た看守達は何故か目をこすって目を瞬かせている。


(意外にも劣悪な環境じゃないっぽい。ここなら何かされない限りはそれなりに暮らせそうだ。)


 意外にもこの状況で卑屈になっているわけでもない自分に驚きもある。だが、それは自明というものだった。


 今の俺にはアルヴィがいる。ここがどこでもアルヴィと一緒なんだ。


もし気に入っていただけましたら、感想・評価・ブクマよろしくお願いします!


次回は他転生者のお話を投稿します。


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