プレゼント
主人公視点に戻ります。
その日の夜、仕事先から帰ってきた後に、ブローヌの一室でアルヴィを一目見た時、顔や腕に傷があるのを見つけた。
明らかに日常的な傷ではなかった。
「アルヴィ!どうしたの!?何かあったの!?」
「じ、実は、昼間に外で男の人に腕を掴まれちゃって・・・。」
すぐに治療魔法を過剰なくらい掛けたあと、アルヴィの言う事を聞く。
なんでも拐われそうになった所を騎士に助けられたのだとか。
拐われたと聞いた途端に体が反応して、アルヴィの肩を抱いたのは仕方ない事だろう。
(しかしその騎士には助けられたな。アルヴィに何かあったら、俺はどうなっていたか分からない。しかも貴族に売るとか言っていたらしいじゃないか。貴族ってのは全員クズだな。そうに違いない。)
アルヴィが俺の腕の中で何か言いたそうにしていたので、アルヴィを連れてベッドに腰掛けた。
「それでねっ。ずっとコーダに助けられているでしょ?だから・・・。これ!プレゼントだよ!」
アルヴィは顔を赤らめつつ俯いて、両手で俺の前に何かを差し出してきた。
それは金色と青色の2つのブレスレットだった。
「これ、俺に?」
「うん!私とコーダの瞳の色で選んだの。着けて、ほしいな?」
アルヴィが上目遣いにこちらを見てくる。とても可愛い。これなら誘拐してでも手元に置きたがる気持ちが少し分かるような気がした。
俺は差し出されたブレスレットを両手首にはめてからお礼を言う。
「ありがとう、一生の宝物にする。」
「そう!なら嬉しいよっ。」
嬉しそうに笑顔になるアルヴィを見てこっちも顔が綻ぶ。今なら行けるかもしれない、と俺も以前に買った物をプレゼントする事にした。
「それでさ、俺もアルヴィに渡したい物があって・・・。」
「ぅえっ!私にもあるの!?」
「うん・・・、あんまり高い物じゃないけど・・・。」
服の中からそれを取り出す。闇魔法で肌身離さず引っ付けておいたからだ。
アルヴィに見せるように手にのせてから目の前に突き出す。
「・・・アルヴィの髪がいつも綺麗で、それで・・・これ、プレゼント。」
「わぁ、これって櫛だよね?綺麗な赤色だねぇ。」
俺がアルヴィに買ったのは血のように赤い色をした櫛だ。アルヴィと初めてこの街に来た時に買ったものだった。
「ありがとうコーダ・・・。でも・・・。」
「・・・え?でも?」
「私の髪だけが・・・好きなの?」
「い、いや!アルヴィが好きなんだ!」
完全に余計な一言だった。口に出した途端に、俺の顔は見る見るうちに赤くなり、アルヴィの顔から目を離せなくなる。
アルヴィは意を決したように、ワタワタと慌てている俺を見た後に返事をしてくれた。
「嬉しい。私もコーダが好きだよ・・・。」
そう言ったあと、赤く紅潮したアルヴィの顔が近づいてきた。スローモーションのようにゆっくりと、アルヴィの顔が俺の顔に近づく。
心臓がバクバクと脈打ち、何も考えられない。お互いの吐息が感じられる程に近づく、そうか俺はこのままアルヴィと。
「晩飯できたぞー!」
「うわぁ!」
2人して飛び上がりベッドの両端にしがみ付く。
アルヴィと顔を見合わせてから、何もなかったかのように振る舞って部屋の入り口を開けて返事をした。
アルヴィに手を差し出し、一緒になって食事に向かう。横目で見たアルヴィの顔はまだ赤いままだった。
◆
「見つけやしたぜ、旦那。」
そう言ってきた荒くれ男は、こっちに向かって手を差し出していた。情報代って事なんだろうと、適当に硬貨を摘んでそこへ置く。
男はしげしげと金を観察して、不満げな顔をしている。
「これっぽっちですかい?せっかく他領まで来て成果を出したんですから、もっとくだせえよ。」
「本当かどうか確認してからだ。男か女どっちだ?」
ズレた眼鏡を直しながら目の前の男から情報を引き出す。目的の子供であるかどうか確認しなくてはいけない。
「女でしたね。金色の髪を肩くらいにして青色の目をした、こんくれぇの小せえガキでしたぜ。連れてこようと思ったんですがね、騎士がうろついてたんで逃しちまった。」
「・・・そうか。ならもういい、取っておけ。」
男は自分の腰くらいの高さを手で示しながら情報を喋ってくれた。適当に袋から硬貨を掴んで男の手に乗せる。
しっしっと手で払ったあと、左手で自分の顔の傷を撫でた。
(サマター領では1年前から学校とかいうのに子供は預けられている。つまりこの街の子供は今もういない。いるとすれば別の領出身の子供だけ。)
そう考えて口から笑いを漏らす。ようやく見つけた。この私に傷をつけた子供を。
ガラの悪い者達の手を借りてまで、ここまで逃げて来たんだ。ロンバードのあの趣味が露呈した時は、私も芋づる式に捕らえられるはずだ。
その前にあの少年を殺さないと気が済まない。あとは雇った用心棒に報告してから算段を立てるだけ。
「楽しみですねぇ。大事なモノを奪われる瞬間の彼の顔。あはっ。あはははは!」
眼鏡をもう一度直し、席を立つ。あの子供達の事に思いを馳せながら妖しい笑みを浮かべる。
せいぜい、死ぬまで残りの人生を楽しむ事だ。
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