住み込みバイト
朝食を食べた後、アルヴィにこれからどうするかと相談する。
「まず、俺はここは前の街じゃないから仕事を探そうかと思ってる。ギルドがあればそれでいいけど、無かったら何処かお店で働かないとね。」
「そうなんだ、ならコーダの服をちゃんとしないといけないよ。」
やっぱりアルヴィはそこを指摘してくるか。女の子なんだなぁ。俺は椅子から立ち上がりながら、アルヴィに提案した。
「じゃあ早速行こうか。今日はこの辺を散策しよう。」
「そうだね、分かった。じゃあ私も買い物しようかな。」
2人して空になった朝食を持って部屋から出る。貴重品などは手持ちしかないので、部屋には何も残っていない。
ドアを閉めようとして時に、窓を見て昨晩設置した魔法を慌てて回収しておいた。いらぬ事故に繋がってしまう。
ドアを閉めて廊下の先に行くと、昨日は薄暗くて大して見えなかった店内がハッキリと見えた。
老婆と話した受付からこの廊下までには、椅子と机が3組ありロビーと食事スペースにもなっているようだ。
現に今は全ての席が埋まっており、俺達が食べた朝食と同じものが机に乗っている。
廊下から現れた子供2人に不思議そうに目を向けてくる人もいて、その目から逃れるようにして受付へ急ぐ。
受付には昨日と違い、30代くらいの女性がひとり作業をしている所だった。
「おはようございます。出掛けたいんですけどこの辺の地図ってありますか?」
「あっ、さっきお母さんが言ってた子達かな?」
「あ、はい。あと朝食美味しかったです。ごちそうさまでした。」
お母さん、というのは昨日の老婆だろう。ここの宿は家族経営なのかな。
「食器はこっちの机に置いてくれればいいからね。それでこの辺の地図だったわね。2ユクだけど構わないかな?」
「はい、大丈夫です。」
食器と地図分の代金を置いて、受付の女性から折り畳まれた紙を受け取った。
受付の女性にお礼を言ってから、俺達は宿のガラス戸を開けて外に出た。
宿の入り口から少し外れたところで紙を広げ、アルヴィとともに中をよく観察する。
「ここはサマター男爵領の〈ジロン〉って言うのね。けっこう中心から遠いけど、すごく人も多いし都会って感じだねー。」
アルヴィはここの周辺を見ながら、そんな事を言う。
(人が多いけど、武装してるような人もけっこう見かける。騎士のような鎧も見れるし、この辺りに駐屯地でもあるのか?)
大体の目星がついたので近くの雑貨屋や服屋を巡る事にした。宿場町という事もあってか、様々な種類の商品があり目移りしてしまいそうだ。
俺は適当に服を見繕って、アルヴィの買い物に付き合う事にした。
アルヴィは服屋の次に雑貨屋に寄っていた。普段はあまりこういう所に来れないから、息抜きになるなら構わない。
(こっそり買ってプレゼントしてみるか。)
アルヴィが他のものを見ている最中に目に止まった物を会計しておく。いつ渡そうか迷ってしまうな。
「コーダ?何してるの?」
「ぅわっ!」
急に声をかけられて驚いてしまう。買った物を急いで服へと入れ、振り返ってアルヴィをみると、買い物を終えたようでいくつか小さな袋を持っていた。
「な、何でもないよ。一回宿に帰ろう。お腹すいちゃった。」
「ふぅーん・・・。そうだね、帰ろうか。一緒にねっ。」
そこからは2人で手を繋いで帰った。俺はビクビクしながらもアルヴィの追求には何とか逃れられたと思う。
◆
宿に帰って受付の女性に、この街である〈ジロン〉の昼食のオススメを聞いたところ、もうすぐまかないの用意が整うらしくついでに作ってもらう事になった。
ロビーの椅子で隣同士に座って待っていると、昨晩の老婆が現れた。
「今日は元気そうな顔だね。昨日はよく眠れたかい?」
「はい。昨日は遅い時間にすみませんでした。おかげさまでよく寝れました。」
老婆と話していると奥から湯気が立つ料理を持った男の人が2人と受付にいた女性が歩いてきていた。
「コッティ、その子達が言ってたのか?確かに小さいなぁ。」
「あたしも最初見た時は目を疑ったね。でも話せるようだしさ、入れてやったんだよ。」
そう言われるとなんだか居た堪れない気持ちになってくる。隣にいるアルヴィも心無しか最初より近づいている気がするし。
アルヴィはあの貴族に嫌な思いを経験したからなのか、大人の男がいると少し怯えてしまうようだ。そんなアルヴィも可愛いけど、あまり他人と会話して欲しくないし個人的には悪くない。
「まぁまぁ、話はそれくらいにしてお昼を食べよ!コーダ君にアルヴィちゃんだよね?
私はルティアで、そっちはコッティとルォードで私の両親よ。私の横にいるのが私の旦那でスウェンというのよ。」
「はい、コッティさん、ルォードさん、ルティアさん、スウェンさん。分かりました。」
受付の女性、ルティアさんが口を手に当てて喜んでいる。周りの人もそんな感じだった。
「朝も思ったけど賢い子なのねぇ。うちの娘もコーダ君くらいの頃だったら、名前をハッキリ言えなかったくらいなのよ?」
「だなー。今じゃ領都の学校ってのに行ってるけど、ここまで賢いとは思えねーなぁ。」
「・・・学校?」
席についたところでルティアさんとスウェンさんの娘さんの話になった。どうやら学校に行っているようで、今はここには住んでいないらしい。
(随分と進んでいるなサマター領っていうのは。子供を学校に預けるっていうのに心配とかはないのかな。)
「アルヴィちゃんみたいに可愛いければ楽でしょうけどね、うふふ。」
こんな事を言われたアルヴィは恥ずかしそうにしている。この人達なら大丈夫そうかな。
昼食を食べながら、働き口を探している事を伝えることにした。
「そうだ。アルヴィをここで働かせて貰えないでしょうか。俺達このままだとお金も無くなっちゃうだろうし、ここならコッティさん達もいるし。」
「こ、コーダ。私そんなこと出来るか分からないし。」
ここの人達なら人も良さそうだし、俺も対応できそうでもある。
(今のうちにアルヴィに闇魔法でマーキングしておくか。)
以前実証できた方法で、気づかれないようにアルヴィに闇魔法をまとわりつかせる。
「あらいいじゃない!ちょうど人手もないし、配膳だけならいいんじゃない、ね?」
「でもうちは2人も雇う余裕はねえぞ?」
「いえ俺は近くだったら何処でもいいんで、大丈夫です。」
そのあとも俺達の話は進み、アルヴィはこの宿、そして俺は近くの知り合いの店で雑用係と追い回しをやる事になった。
俺はパッとしない見た目だから仕方ないけど、アルヴィの給仕姿はちょっと見てみたいな。
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