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共依存

コーダ視点です。


 ヴァレリーさんの死の翌朝、目を覚ました俺は台所に直行して水を飲んだ。水を飲みながら、雷魔法で火花を出して、薪に火をつけ水を温めて白湯にする。

 白湯をコップに入れて寝室のドアを開けて、ヴァレリーさんの隣に寝ているであろうアルヴィに持っていく。


「アルヴィ、朝だよ。」

「ん、ぅうん・・・。こーだ、か。おはよう。」

「うん、おはよう。」


 寝起きのアルヴィは舌足らずな所もあって可愛らしい。目元が腫れているので、昨日の夜も泣いていたのかもしれない。

 体を起こしたアルヴィに白湯を渡す。


「あったかい。」

「それを飲んだら少し話そうよ。これからの事。」

「ああ・・・、そう、だな。」


 アルヴィがチビチビと飲んでいるのを見ながら、アルヴィの座っているベッドに腰掛ける。

 さて何から話そうかと考えているとアルヴィから声が聞こえた。


「コーダ、昨日からずっと考えていたんだ。でももう決めた。お前が色々考えてくれてたのも嬉しかった。コーダの力を貸して欲しい。」

「いいよ。何しようか?」

「母さんの・・・、墓を作ろうと思う。」

 

 アルヴィは俺に、決意に満ちた表情でそう言ってきた。アルヴィが決めたなら俺はやるだけだ。



 家の脇にある空き地。そもそも土地で管理を分けているかも分からないので、そこに墓を作る予定だ。

 土葬という事もあって直接入れるのも忍びなかったので、ベッドごとシーツで包むことにした。


 名を刻む石は、オヤジさんの工房で貰ってきた。あれ以来、全く顔を出さなかった俺が頼んでも快諾してくれた。また今度、落ち着いたら詳細を話そう、オヤジさんや近所の人達には、その恩がある。


 石を持って戻ってきた時、窓から見えたアルヴィは、部屋にいるヴァレリーさんの頭を撫でつけながら何かを言っていた。

 こっちに呼ぶ訳にもいかなかったから、闇魔法で土を掘り出していく。硬そうな地面だったけど問題なく掘ることが出来、中に入って足場を踏み固めている時にアルヴィの声が聞こえた。


「わりいな、コーダ。」

「別にいいよ。あとアルヴィに教えてもらいたい事があるんだけどいいかな?」


 アルヴィに手を差し出されて穴から持ち上げられた後、アルヴィに頼み事をした。


「俺、文字分かんないからさ、ヴァレリーさんの名前をどう書くか教えて欲しいんだ。」

「お前は何でもできると思ってたけど、そうじゃないんだよな。よしっ、ちょっと待ってろ。」


 アルヴィは何処かから棒きれを持ってきて、地面に何か書き始めた。キリル文字のような字喃のような、何処か見た事があるようでない文字の羅列だった。


 何度かアルヴィの手元を見てそれを石に刻んでいく。かつて使った雷魔法で作ったナイフで石を削る。

 なんとかヴァレリーさんの名前を刻むことに成功し、あとは埋葬するだけとなった。


 窓からベッドごと出して穴へ下ろしていく。側にいるアルヴィも難しい顔をしていて声をかける様子もないので、穴の底まで下ろした。

 

「アルヴィ、土、かけるよ。」

「ああ、オレもやるよ。」


 一緒になって穴に土を戻していく。出来るだけ柔らかく盛っていく。アルヴィは涙を流してはいるが、声を上げる事はなかった。

 完全に土に隠れるとヴァレリーさんの石碑を立てた。


「母さん・・・、オレ変わるよ・・・。絶対母さんの誇りになれるようになってみせる・・・!」

 

 アルヴィは何か決意しているようだった。そう言ったあとオレを見て笑うアルヴィに、俺は首を傾げていた。



 その日の夜、食事を済ましたあといつも寝ている部屋へ行こうとすると、アルヴィに手を掴まれて止められた。


「あの・・・コーダ。母さんがいなくって1人になっちゃうんだ。だから・・・一緒に・・・。」

「・・・え?」


 真っ赤に紅潮した顔のアルヴィの言っている事が理解出来なかった。


「ずっと一緒にいてくれるんだろ?・・・だから寝る時も、一緒だ。嫌か?」

「い、嫌なんかじゃないよ!」


 恥ずかしいのか無言のアルヴィと連れ立って部屋に入る。昨日まで2つあったベッドは、1つしかない。寂しさを感じるけど、今はそれどころじゃない。

 アルヴィと俺は意を決して同じベッドに入るものの、背中合わせの状態で端と端に寝転んだ。


 心臓の鼓動の音が激しく鳴り響く。目を閉じても眠れる気がしない。後ろで身動いでいる感覚が俺の平常心を奪っていく。


「なぁコーダ。お前には感謝してる。だからね。」


 背中にアルヴィの指が触れた。そのまま肩に移動して俺を優しく包み込む。


「ふふふっ、あの時のお返し。オレ、いや私は明日から変わるよ。コーダにずっと好きでいて貰えるように頑張る。私はコーダを絶対に離さない。」

「あ、え・・・、アルヴィ・・・?」

「私・・・女の子なんだよ?知ってた?」


 いまだ冷めやらぬ興奮を感じながら、アルヴィの言った衝撃的な一言に振り返ろうとするも、がっちりと抱きしめられているので動けなかった。アルヴィは俺の頭を撫で始め、俺に語りかけてくる。


「やっぱり、知らなかったんだ。ふーん。」

「え?あ、いや、でもアルヴィそんな仕草全然・・・。」

「まあね。でも女の子だからとかじゃなくて、私だからなんだよね、コーダは。」

「う、うん。アルヴィだから好きなんだよ。」

「嬉しいよ。私もコーダだから良いんだよ。」


(アルヴィ!こんな性格だったのか?でも女の子だって考えたら、途端に恥ずかしさが!)


 俺はその後も撫でられ続け、俺が寝落ちしてしまうまで続いた。

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