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共同生活

第五章のスタートです。

途中で視点の変更があります。


 俺がアルヴィの家に居候するようになって3か月ほどが過ぎた。部屋が一つ空いていると言っていたので、そこを使わせてもらっている。

 その部屋にはベッドはないようだったけど、俺の大きさなら椅子でも余裕だし楽だった。

 毎朝アルヴィやヴァレリーさんと顔を合わせるのには、まだ慣れないけど悪くはない。


 最初に見たヴァレリーさんは、アルヴィと同じように明るく元気な人だと思ったが、体が弱いのか1週間のうち5日は寝込んでいる。

 アルヴィが言うには、1年ほど前から休む時間が増えてきていたそうだ。アルヴィは俺が怪我を治す魔法を使えることを知っているので、3日に一回くらいでヴァレリーさんが寝ている間に忍び込んで治療魔法をかけている。


 治療魔法の後は、安らいだような顔をしているけど、根本的な解決に至ってはいなかった。



 居候生活が始まった当初に、アルヴィに付き添われて冒険者登録をした。金銭的に負担になるわけにはいかなかったので、冒険者という仕事は渡りに船だった。


 主に採取や雑用などをこなしており、アルヴィと別行動する事もあって、アルヴィ以外の知り合いが増えてきた。


 魔法使いである事をひけらかすつもりも無いので、隠れて魔法を使い自然を装った発動が上手くなっていた。



 今日も、アルヴィとは別行動で鍛冶屋の雑用の依頼を受けている。1週間に3、4回と高頻度で馴染みとなった依頼だけど、力仕事なのと暑苦しいのとで人気がなく、最近では俺が専任となっている依頼だった。

 〈エイラス広場〉を抜けて、〈ミーラ通り〉という職人街に俺の目指す鍛冶屋はある。鍛冶屋の名前は、ハティルという。主に剣や槍などの武器や鎧を扱っていて、それなりに評判だそうだ。


「おはよう!オヤジさん!」

「おーう!コーダ、時間通りで助かるぜ。じゃあ早速開店準備でもすっか。」


 鍛冶屋の店主は、ローウェンという人だけど、名前で呼ばれるのが嫌いみたいで周りからは「オヤジ」と呼ばれている。

 俺の仕事は店番で、文字は読めないが計算は出来るので意外にも適役なのだとか。

 

 近所の商店の人もすぐ顔馴染みになって、子供の店番というだけで変に突っかかって来る人はいなかった。


 客が剣や槍などを頼んでも、俺は闇魔法を補助にして持ち上げる事が出来る。

 裏で鍛冶をしているオヤジさんもわざわざ店に出てこなくて良いというのが、俺が適役という一番の理由かも知れない。


「んじゃ昼休憩にすっか。今日も広場で友達と食うのか?」

「うん。いるかどうか分かんないけどね。」

「おー、そうかそうか。友達は大切にな。悪いけどいつも通り、帰りに肉の串焼き2本な。」


 俺はオヤジさんのいつものお使いを快諾したあと、〈エイラス広場〉に走って行く。

 ちょうど中央の噴水のへりに座っているきれいな金髪をなびかせた待ち人を見つけた。


「アルヴィ!ごめん遅くなった!」

「いや別に待ってねえぜ。早速昼メシ食おうぜ。腹減っちまった。」


 以前とは違い、2人で仕事をするようになって色々な露店を巡るようになった。アルヴィは主に肉を中心に食べていて、俺は野菜や魚中心だ。

 アルヴィと昼飯を共にするのは、出会った当初に戻ったみたいで嬉しかった。一緒に生活をしていてもこの時間は何ものにも代えがたい。


「アルヴィはこの後どうするの?」

「オレは帰って母さんの様子を見るよ。お前のおかげで辛そうなのも、和らいでいるみたいだけど心配だからな。」

「うん、分かった。今日も夕方くらいになると思うから。」

「おう、頑張れよ。」


 昼飯を食べた後、アルヴィは露店で野菜や果物を買ってから家に帰って行った。

 

(アルヴィは母親が伏せっているんだから辛いはずだ。少しでも俺が支えないと。)


 アルヴィを見送ったあと、俺は新しく出来た家族のために、再び鍛冶屋に踵を返すのだった。



 コーダと別れて家に帰ってきたオレは、買ってきた果物を持って母さんの部屋に入った。

 まだ寝ているみたいで起こさないように近づいて、顔を覗きこんだ。


(やっぱり、痩せてきてるよな・・・。このまま何もしなかったら・・・いや何を考えてるんだ。)


 母さんの寝息だけが聞こえる静かな部屋で椅子に座る。しばらくは髪を撫でたりしていたが、急に咳き込み始めた。


「大丈夫か!」

「うぅん・・・。あ、アルヴィ・・・おかえりなさい。・・・早かったのね。」

「母さん、無理に起きなくていいから寝ててよ。」

「ありがとう、優しいわねアルヴィは。」


 目を覚ました母さんはやっぱり元気がなさそうだ。母さんをベッドに寝かせたあと、ナイフで果物を剥いて母さんに見せた。


「うまそうなのがあったんだ。母さん、これ食って元気出して。」

「ありがとう、・・・あとで頂くわ。」

「あ、ここに水もあるから!」


 苦しそうにまた咳き込んだ母さんに水を差し出す。コーダが一度沸かした方がうまいって言うから、最近ではそうしている。


「あら、悪いわね。」

「全く心配させるんじゃねえよ。」


「アルヴィ、そんな言葉遣いじゃコーダ君に嫌われちゃうわよ?」

「あ、アイツはそんなんじゃねえから!」


 母さんが突拍子もない事を言って、オレをからかってくる。コーダは良いやつだし頼りになるけど、さすがに子供すぎるだろ。

 まぁでもアイツが大きくなったら・・・。


「あらあら、コーダ君の事になったからって真剣に考えすぎよ。」

「いや別にそういう事じゃねえから!」


 それから母さんと他愛もない話をしていると、玄関のドアが開く音が聞こえて、コーダが帰ってきた。

 もうそんな時間だったのかと立ち上がってドアに手をかけた。


「コーダは良い子よ。私が保証するわ。」

「言われなくても分かってるって。」


 母さんに返事してからドアを開けて、帰ってきたコーダに挨拶をして、コーダと一緒に夕飯の支度をするのだった。

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