一緒だから
翌朝、目覚めるとまだ朝日が顔を見せていたところだった。全然寝られなかった。アルヴィと喋っている時は、こんな感情にならなかったのに。
俺はかぶりを振って暇つぶしの魔法の研究をする事にした。
反発力で浮く方法は良いアイデアだ。今の俺なら軽いし、高く浮く必要はないから少量で済む。
(まずは適当に試してみよう。磁石と金属は、大丈夫。落としてないな。)
鉄を巻き付けた磁石に雷魔法を流す。そうすると磁力が強くなった。これは昨日やったな。
次は2つの金属に、同じ方向になるように意識して雷魔法を流してみる。
バチィッと音がしたと思ったら、2つの金属が勢いよくお互いが反発し合って、両側の路地の壁へ激突してしまった。
(つ、強すぎたか・・・。あんまり魔力を使ってないんだけど。2つの金属が相乗効果で強く反発してしまったって感じかなぁ。)
こんな勢いだったらもう弾丸に近い。下手したら人なんて一発で殺せそうだ。そんな事を考えていると、通りの方から叫ぶ声が聞こえてきた。
(なんだ?こんな朝早くに。誰かを探しているような声だな。)
磁石と金属を回収して路地の中から、通りに出て耳を済ませてみた。
「・・・どこにいるんだー。おーい!いたら返事してくれー。」
ん?あれは・・・アルヴィか!?こんなとこで何してるんだ。
「コーダ!どこだー!返事しろー!」
アルヴィが俺を探してるのか?朝は用事があるって話だったのはどこ行ったんだよ。
近所迷惑だし俺を探してるんなら、出ていくか。隠蔽魔法を解除して、顔を拭ってからアルヴィに声をかけた。
「アルヴィ!どうしたの、こんな朝はやくに。」
「コーダ!やっぱりここだったか!お前に、すぐ、話したい事があったんだ!」
俺が姿を現すと、アルヴィは駆け寄ってきて、息を切らせながらも大声で喋る。アルヴィは軽く深呼吸してから話し始めた。
「昨日、帰ってから母さんに聞いたんだ。お前と別れる時にあんなことを言われたって。それから今までずっと考えてた。んで、オレはお前に言わなくちゃいけないことがあるんだって、そう思ったんだ。」
俺はアルヴィの言葉にどんなことを言っていいか分からずに、黙ったまま聞いていた。
「オレは・・・お前に」
「っうるっせえぞ!!朝っぱらから!!」
「うわぁっ!」
俺たちは、その怒号にビックリして飛び上がった。俺たちは声を揃えてその声の主に謝った後、お互いに頷いて逃げるように駆け出した。
何だかおかしくなって笑ってしまって、隣を走ってるアルヴィも同じく笑っていた。
◆
俺達は場所をアルヴィの家の前に移して、息を整えていた。
「いやぁ、ビビったぜー。集中してるときにあんな大声出されるんだもんなー。」
「アルヴィもあんな大きな声だしてたんだし、おあいこだよ。」
俺達はそんな感じで笑い合っていた。昨日の別れ際のぎこちなさなんて感じない程に。
「アルヴィ、俺からもはなしがあるんだけど、いいかな?」
「ん、ああ。先に話していいぞ。」
俺はアルヴィに打ち明ける。俺は醜くて底意地の悪い人間なのだと。
「俺はアルヴィのことを、うらやましいって思ってたんだ。この街で、ひとめ見た時からアルヴィのことが頭からはなれなくって。アルヴィのこと、つけまわしてた」
「えぇ・・・。そうだったのか。オレの事、前から知ってたんだ。」
きれいなアルヴィの顔が少し歪んで、引いたような仕草をした。
俺は頷いて、言葉を続けた。
「この前、アルヴィが大人達にひどい、ぼうりょくをうけていた時も、何でアイツらを、ほうちしてたんだって。もっと前にアイツらを何とかしておけば、こんなことにならなかったのにって、ごめんアルヴィ。」
「あの時もあそこに・・・。いや別にいいぜ。終わった事だし、なんか解決したみたいだし。」
俺は自分が後悔している事を打ち明けた。ザンク達を殺した事を言おうか迷ったけど、言わないでおいた。
「そのあと、アルヴィがボロボロになってて、ケガを全部なおそうと思ったんだけど、魔力が足りなくて。とちゅうでやめちゃったんだ。」
「なっ!お前、ケガ治したのお前なのか!?凄えなコーダ!」
さっき引いた仕草もどこへ行ったのか、詰め寄ってきて両手で肩を掴んできて、興奮した表情で話してくる。
「すっげえなお前!でも何でオレなんかの事を、興味持ってくれたんだ?」
アルヴィがぐっと見つめてきて戸惑う。意外と身長差があるのか俺が見上げる形になっている事も原因かもしれない。
一旦、間を置いて口を開いた。
「きれいだったから。アルヴィのこと、はじめて見た時から、きれいだって思ったから。」
「うぇえ!?ちょっお前急に何をっ!?」
俺の言葉を聞いてバッと離れて、顔を背けるアルヴィ。さっきから興奮しっぱなしで顔が赤い。
「お前そういう事は、きゅ、急に言うもんじゃねえぞ・・・。」
「だからアイツらに殴られてるアルヴィに、もうしわけなくって助けたいって。」
「あー!あー!もういい!凄え恥ずかしい!嫌われたかと心配して損した!」
アルヴィがそんなこと思ってたなんて・・・。自分の事しか考えてなかった、アルヴィがどう思うなんて想像してなかったと後悔した。
「ごめんね、アルヴィ。」
「あー・・・、別にいいよ。さっきも言ったけど終わった事だしな。お前の言いたい事はそれだけだな?」
「うん。アルヴィは何かあるんだよね?」
アルヴィは優しいな、俺に気を遣ってくれているし。俺はアルヴィが言いたかった事をひとつも逃さないように気合いをいれた。
「オレの話っっていうのはな、お前ほど複雑じゃねえ。昨日、母さんとも話し合った結果だから、お前が気にすることじゃねえからな。」
「うん。分かった。」
「別れ際に言うつもりだったのに・・・。うぅ、何か恥ずかしくなってきた。ああ!よしっ、言うぞ。
・・・オレと一緒に住まないか?」
俺に伝えてきた事は全くの予想外で面をくらってしまった。
◆
アルヴィが説明してくれるには、昨日の様子から家が無いんじゃないかという見解に至ったらしい。
それでアルヴィが友達だって言うもんだから、母親が一緒に住めばって言ったようだ。
(なんか軽いなぁ。アルヴィは何か恥ずかしそうだし何か隠してる?)
でもアルヴィはどう思ってるんだろう。俺はアルヴィの近くにいられるのは良いけど、アルヴィはどうなんだろう。
俺はアルヴィの顔をしっかり見て話し出した。
「アルヴィは、俺のことどう思う?アルヴィみたいに明るくもないし、元気でもないよ。せけん知らずだし、文字もよめないんだ。」
「・・・オレはお前といるのが、けっこう心地良いっていうか、あと魔法も凄えし。お前がどう思ってるか知らねえけど、オレはお前と住んでも良いなって思ってるんだ。」
アルヴィがここまで言ってくれた、俺も隠していた事を言わなければいけない気がした。
「アルヴィ、俺は人をころした事がある。それも君の知り合い、ザンクたちだ。」
「は・・・え?お前それって。」
「俺はあの夜、アルヴィがなぐられてるのを見て、怒りがおさえられなくて、魔法でアイツらをころした。俺は、すごく危険で怖い人間なんだ。」
俺は打ち明けた。これを言えばこの関係が終わるのは分かっていた。でも言わないまま一緒に住むなんて絶対出来なかった。
俺はアルヴィから目を背けてしまったが、両手で顔を挟まれ強引に引き戻された。
「コーダ!俺はコーダがザンク達をやってくれたならって思ってた!お前の魔法ならそれが出来るだろうから!」
アルヴィは俺にガバッと抱きついて耳元で話を続けた。
「コーダ!お前はオレの事凄いって言ってくれたけど、オレもお前を凄いって思ってる。一緒なんだ!ずっと一緒にいよう。」
「アルヴィ・・・。本当に俺なんかでいいんだね?」
「お前じゃないとダメなんだ。」
俺はアルヴィを抱き返して泣いていた。ここまで求めてくれたんだ。今更断るなんてない。
「これからよろしくね、アルヴィ。」
「ああ、これからよろしく、コーダ。」
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