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電磁浮遊

コーダ視点です。

なお今回登場する電磁気系の情報は、正しいかどうか分かりませんので、どうかご容赦を。


 自警団から出発したアルヴィを3mほど後ろから追って、石畳の大通りを抜けて脇道に入った。住宅街に差し掛かったけど、しっかりとした造りの一軒家が多く見られた。


「いやあ凄いな。これが普通なんだろうけど、雲泥の差ってヤツだよこれは。」


 アルヴィは、何かキョロキョロとしながら歩いていて、曲がり角を曲がった。俺は少し早足で追いかけて曲がるとアルヴィが見当たらなかった。


(うぇっ!?どこいった?)


 辺りを探すと曲がり角の家と家の隙間にしゃがんでいた。


(何が探し物か?それとも会いたくない知り合いでもいるのかね。なんだかストーカーしてるみたいで後ろめたい。)


 アルヴィはしばらくジッとしていたが、辺りを見回してからスッと立ち上がって、早足で歩いていった。


(何だったんだ?一体・・・。ん?これって何だ?)


 アルヴィを見失わないように、サッと疑問に思った物を拾い上げてまじまじと見る。それは鉄のような錆びた金属のようだった。

 先を歩くアルヴィは、ある平家の一軒家のドア開けて中へと入っていった。


(へぇ、あそこが家なんだな。今までの住宅よりグレードは落ちるけど、良い家じゃないか。)


 などと失礼な事を思いながら、その家へ近寄って窓から中を覗く。

 中では、アルヴィと泣いている大人の女性が抱き合っていた。


(あれは母親かなぁ・・・。感動の再会ってやつか。)


 俺は人を殺した事など忘れて良い事をした気になり、その場を後にした。とりあえず今拾ったこれでアイデアが閃いた。それの検証をしないと、と思って近くの小道に腰を下ろした。



 足音を立てないという事で、一番に思いつくのは浮く事だろう。

 地面に接していなければ、そもそも足音がない。忍び足で歩いたところで、昨日のように床板が(きし)めば意味がない。


 そういう事を実現するのには、「何かの力」が必要だ。空から糸で吊り下げられるなら気にしなくてもいいだろうけど、そんなことは到底無理。「何かの力」で浮かせないといけない。


 そこで目をつけたのは、磁力だ。同極同士で反発すれば浮くだけなら簡単なはずだ。

 高校の授業で磁石を作った時を思い出す。鉄にコイルを巻いて電流を流すと、磁力が発生する。

 ならば足の裏と地面に同方向の電流を流せば、反発するはずだ。幸いにも雷魔法は自由に使える。習熟すれば消費自体が少なくなりほぼ無制限で使えるだろう。


 今はこの金属が一つしかないし、もう一つ探しに行こう。これを拾った場所なら他にもあるかも知れない。



 この金属が落ちていたところに行くと、軽い金属や重い金属など様々な物が多かった。鍛冶屋でもあるのだろうか。

 中でも磁石自体があった事に驚いた。だがこの磁石はあまり強くないようで、周りの鉄に引っ付きにくかった。


(確か磁石って弱くなるんだよな。銅を巻けば、戻るんだったっけ。)


 磁力が無いなら与えれば良い。鉄を闇魔法で強引に曲げて、磁石に巻きつけて雷魔法を使う。

 あり得ない力もあり得ない威力も、魔力を注げば使えるんだから凄い能力だ。


 闇魔法で巻いた鉄を剥がそうとすると、強い力で吸引し合っている。


(このまま持っておけばいいか。近くにある鉄も磁化させて・・・。よしっ2つの磁石が出来た!あとはこれを試すだけだ。)


 顔を上げるともう辺りは暗くなってきていた。気づかないくらい熱中していたのか・・・。

 まあ今日はこれくらいにして、早いけど寝るか。


 アルヴィの家の近くで座り込み、革袋から出した腐りかけの果物(ヤヤ)を頬張ってから横になって目を閉じた。



 朝起きると、もう昼くらいで太陽が真上にあった。


(寝過ぎた・・・。一昨日は寝てないから仕方ないんだけど。さて、今日は実験をしないと!)


 そんな事を思っていたら、アルヴィが家から出てきた。どこかに出かけるかと思っていたら、大声で何か言っている。


「あー!今日は、川にでも行って魚でもとるかー!」

(な、なんだ。どうしたんだ一体。・・・でも川か、〈ヴォーガ〉の川はヒドかったし、この街のにもちょっと興味あるな。)


 アルヴィは歩き出したので俺も後をついていった。昨日とは違って周りも気にしてはいないようだ、と思っていたら急に走り出して角を曲がっていった。


(ちょっと、待ってくれ。俺も川に行きたいんだよ。)

 

 急いで後を追って曲がり角を曲がると、正面にアルヴィが立っていて飛びかかってきた。


「つかまえたー!オマエ昨日から付け回していただろ!見えないからってバレてるんだよ!」

「う、うわあぁぁ!ビックリしたー!」

「ん?この感じ、子供かお前!?」


 まさかバレてるなんて思いもよらなかった!そのまま地面に倒れて暴れるも、今の俺は2歳くらいで、アルヴィには全然敵わない。


「観念しろっ!まあとりあえず姿を見せるってなら離してやってもいいぜ。」

「うっ。いやでも今までずっとこのままだったし、今さらはずかしいっていうか・・・。」

「実はオレが困るんだよ。周りから見たら、空中に座ってるし誰もいないのに話してる変なヤツなんだって。」


 確かに今の状態は変だろう。アルヴィに上から退いてもらうように言った後、俺は隠蔽魔法を解いた。


「えっと、初めまして、かな。俺はコーダっていうんだ。」

「おうなんだ、普通のヤツじゃねえか!焦ったぜ変なヤツだったらって・・・ん?おいお前・・・。」


 アルヴィが俺から少し後ずさって距離をとった。何かやったか俺!?


「お前・・・くっせーぞぉ!ちゃんと水浴びしてるのかぁ!?」

「うえっ!?あっ、そういえばぜんぜんしてないな・・・。」

「お前もっかい姿隠せ!川に連れていってやるからそこで水浴びしろ!いいか!」


 俺は頷いて、隠蔽魔法を使って姿を隠した。いつから水浴びしてないんだよ俺は。最悪の対面だなこりゃあ。


「おぉー。ホントに消えるんだなぁお前。まぁいいや。早く行くぞ!」


 俺は駆け出すアルヴィの後をついて行く。先ほどまでとは違い後ろめたさは無かった。

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