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治療魔法

ちょいグロです。


 確かな成長と郷愁の思いに感動していると、静かな空間に小さな呻き声が聞こえてきた。疑いつつもそちらに意識を向ける。


(ん?まだ息があったのかな?)


 ザンク達の意識が戻ったのかと警戒して近寄る。歩みを進めると、ザンク達ではなくアルヴィが声を上げていた。

 俺はアルヴィに駆け寄り、うずくまってぎこちなく上下している肩を抱き、小声で声をかけた。


「お、おい。大丈夫か?息できるか?」

「う・・・ぅあ・・・。お、れは・・・しにたく、ない。・・・しにたく・・・ねえ・・・。」


 アルヴィはうわ言のように呟いているだけで、意識は無いようだった。綺麗な顔もボロボロで、長時間、暴行を受けたのか痛々しい痣が目立つ。

 何か出来ないか・・・何か。


(そういえば俺は魔法があるから回復力が尋常じゃない。それを分ける事が出来るならアルヴィを助けられるかもしれない。)


 攻撃に使う闇魔法や雷魔法は、今のアルヴィに何かあったらと考えると使えない。あとは聖魔法か。やらないよりマシだ。まずは魔力の確認だ。


【魔力】75/210


 総量が増えている?今はそんな事どうでもいい。これくらいあれば何とかなりそうか。アルヴィに弱く聖魔法の光をかける。


 アルヴィの体全体が淡く白い光に包まれていく。

 しかし10秒ほどかけ続けるも何かが変わりそうな事もなかった。全体に広げているからいけないのだろうか。今度は局所的になるように意識してみる。


 傷口に光が当たるとジワジワと傷がふさがっているように見えるが、遅い(・・)


(こんな速度だったら夜が明けても、大半は治っていない。もっと早くならないか。)


 最初は打撲で出来た痣を何とかしないと後々に酷く跡が残ってしまう。

 傷の治り方を想像する。内出血は皮膚に近い血管が損傷しているから起こる。まずはそこを繋げるイメージをする。それから血管外に流出した血液の吸収だ。患部の血液を周囲の細胞に行き渡らせるイメージだ。

 それらを踏まえて再度聖魔法をアルヴィにかける。

 

 淡い光が薄くアルヴィを包みこみ、見えるところ全ての内出血や痣が瞬く間に消えていった。


(す、すごい!局所的な魔法にはならなかったけど、イメージした治療が魔法で再現出来た!使い勝手が良すぎるぞ。)


 これは今までの聖魔法とは全く違う効果だ。・・・別の魔法として分ける方がしっくりくる感じ。


(じゃあ一応これは、治療魔法としておくか。それよりもアルヴィが心配だ。)


 まだアルヴィの傷は残っている。他の外傷は目立つ部分はなさそうだが、骨が折れているかも知れない。次はそれだ。


 骨折は、複雑化していないのならば、繋げることで治るはず。骨を繋ぐ(のり)は細胞だ。分かれた骨の破断面の細胞分裂を伸ばすようなイメージだ。ウゴウゴと蠢く細胞を伸ばしくっつける。

 俺は治療魔法と意識してをアルヴィにかける。


(まあこれは見た目に変化はないだろうから、経過観察だな。)


 それっぽい事を思いながら、ステータスを確認する。


【魔力】23/210


 けっこうギリギリだったか。俺はホッと息を吐き、アルヴィを地面に優しく寝かせると、路地を出る。さすがに姿が見えなくても、朝起きて雑踏に塗れるのはごめん被る。

 ちょうど向かいにあった、昼間入った冒険者ギルドと、別の建物の間に空いた狭いスペースに座り込む。


 今日は色々あった。新しい街に来て新しい出会いがあった。どの街でもクズはいるけど、魔法の訓練にちょうど良さそうだ。

 明日は、アルヴィの様子を見ないと・・・と思いながら眠りについた。



 朝起きると、向かいの路地に人が溜まっていた。昨日も冒険者ギルドに野次馬がいたけど、この街の人間はヒマなのか。


(俺も立ち会ってみるか。アルヴィもどうなったか気になるし。)


 隠蔽魔法がちゃんと機能してる事を確認して人混みを抜けて、昨日の現場に顔を出した。俺も当事者の1人、というか犯人なんだけど。中を覗いてみると、〈ヴォーガ〉で見た自警団のバッヂを付けている人が3人、門番の人と同じような装備をした人が3人いた。

 彼らは倒れている人の意識を確認しているようだ。ただザンク達は並べられており生気が感じられるように見えなかった。


(あの時は必死だったけど、人を殺せる出力だった。自覚はある。ダコタに雷をぶつけた時ほど罪悪感がないのが不思議だ。)


 死体には目を向けずに目的のアルヴィを探す。アルヴィは自警団の人に抱き起こされているが、意識は覚醒していないようだ。昨日の時点で、息絶え絶えという感じだったから、もしかしてという考えが()ぎる。

 よく見ると弱々しくも呼吸はしているようで、生きてはいるようでホッとした。


 そんな時、揺すられている事に気付いたのか、アルヴィが目を開けた。声は出せないようだったが、生きてはいるようだ。


(初めて治療魔法を使った人間が死んでたら意味ないしな。何にせよ良かった。)


 アルヴィの意識は朦朧としていて、自警団の人に担がれて路地を抜けていった。後で様子を見に行こうと思うけど、今はザンク達がどうなったか確認しないと。

 出来るだけ音を立てないように近づいてみると、ザンクの腰辺りの服が焦げているのが分かった。見ようによっては手形が見てとれるので、人為的な事件だと捜査されそうだ。


 それはそれで面倒だから、次回からは直接するのはやめておこう。


 女の方は、ほとんど外傷が無いと言っていい。体内はどうなってるか分からないけど、強力な電撃で心停止でもしたんだろう。

 もう1人の男の方は全身がひしゃげて即死か。あまり強く捕まえたつもりは無かったけど、闇魔法で掴んだところが潰れている。


(対人間だとこうも圧倒出来るのか。でも俺の魔法だけな訳無いよな、恐れている人が多いって事はこれが当たり前の威力なんだ。)


 ザンク達は担架に詰まれ、どこかに移送されるようだ。ならもう用はない。


 さて、アルヴィが心配だし、様子でも見に行くか。

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