白い空間
3話目です!よろしくお願いします!
もう1話投稿します!そちらも良ければどうぞ!
体を何かに揺さぶられている。俺を呼ぶ声が聞こえる。
友沢の声かな。ならもう学校に着いたのかと思い、目を開けてみるとそこは白い空間だった。
「あっ!幸田やっと起きたか!」
「あ、え!?何この状況?どこここ?」
急な変化に思考が追いつかない。確か修学旅行の帰りのバスで寝ていたはずだったのに。俺を起こしてくれた友沢に状況の説明を求めてみたが、困ったような焦ったような顔をしていた。
「俺もわかんねーんだって!何か起きたらここにいてな。訳わかんねーし。クラスの連中に聞いても分かんねーって。分かんねーってことが分かる、そんな感じだ。」
「何だそりゃ。確かに椅子で寝てたのに地べたで寝っ転がってるし、白すぎて夢なのかと思っちゃうね。」
周りのクラスメイトは不安に思いながらも一塊りになって周囲を観察している。俺を入れて6人しかいないことに違和感を覚える。どこかに行っているのだろうか。
すると前の方から生徒会副会長の新田真吾と別のクラスメイトがこっちに歩いてきていた。
「向こうは何もなかったですね。見渡す限りの白い空間が広がっているようです。」
「流石に遠く行きすぎるのもアレなんで戻ってきたよ〜。あっ!幸田くん起きたんだ〜。」
新田達が探検に行っていたようで、大して周囲は変わらない光景だったそうだ。
新田は頭も良くてスポーツもそこそこで、次期生徒会長と有力視されている凄いやつだ。
俺が起きたのに気付いたのはもう一人の方で、猫沢優というお調子者だ。男女分け隔てなく接する彼は、小動物的な可愛さもあってか同学年なら知らない人はいないまで言われている。
俺の周りを見ると、立って周りを見回している剣道部のエースで無口な灰谷勇がいた。灰谷は無口だが実力は全国大会に出場する程で、修学旅行から帰ったらみっちり鍛錬をするつもりでいたようだ。
少し離れて女子が3人固まっている。陸上部で県大会にも出場していた火野愛子、うちの高校のアイドル的存在の双子、神山聖佳と神山法佳だ。
火野さんは、筋肉質でスレンダーな美人だ。ショートカットの髪型も相まって、男子よりも女子からの人気が異様に高いようなやつだ。
神山姉妹は、姉の聖佳さんが快活で明るく、妹の法佳さんが引っ込み思案で庇護欲をそそられる美人姉妹だ。神山姉妹のファンクラブがあり、同じクラスのやつは一目置かれる存在になれるらしい。
そんなことを考えていると、俺たちの正面ーーー2人が帰ってきた方向ーーーから青い光とともに人のような形をした存在が姿を見せた。
「ようこそ。ベリルテスの空間へ。君達は少々混乱していると思う。状況説明のために我の話を聞いてもらいたいのだが、よいか?」
急に出現した人のような存在に話しかけられて呆然としてしまう。この人のような存在は何なのだろう。神とかそういう存在なのだろうかと思っていると、新田が口を開いた。
「・・・あー。失礼だがあなたの名前をお教え願いたい。僕達は訳の分からない状況にいるので説明してもらうことは、こちらとしても大変ありがたいです。」
新田は戸惑いながらも冷静に会話を続けている。彼の言う通り説明が必要なのは、この場にいる全員の総意だった。なので目の前の存在の返答を待つと、
「これは失礼をした。我の名はベリルテス。この世界の管理者。君達の呼称する神という存在である。君達は不幸にもバスの事故によって死亡してしまったのだ。
あまりにも痛ましい事故であったため、我が前途ある若者達の魂を救い上げてこの場所へ召集したのだ。」
「んなっ・・・!!一体どういうことなんだ・・・。死んだ?僕達が?訳が分からない!」
新田がショックを受けたように、狼狽えている。他のクラスメイトも一様に青い顔をしている。
ふと自分にひとつの疑問が湧いた。喋るつもりは無かったが、何故かその疑問は口から出てしまっていた。
「前途ある若者、と仰いましたが先生方やバスの運転手はどうされたのでしょう?クラスメイトも全然いないし・・・」
他のみんなが俺と同じようにキョロキョロと周りを見た。確かにいないのだ。先生と運転手、それと多くのクラスメイトが。
「君達以外のものは損壊が激しく、魂も傷ついていたために君達のような実体を持てなかったのだ。あのバスには33名乗っておったが、実際に救い上げられたのは君達8名だけだ。我も全力を尽くしたが、助けられなんだ。申し訳ない。」
ベリルテスが頭を下げて謝罪をして、俺は慌てて感謝の思いを伝えた。
「こちらこそすみません!せっかく助けて頂いたのに責めるみたいなこと・・・。助けて頂いてありがとうございました。」
そんな風に俺が慌てていると周りからも声が聞こえてきた。
「そ、そんな・・・、真里もひーちゃんもアキナもみんな死んじゃったってことなの・・・」
「うん・・・そうみたいだね・・・。うぅ、ぇぐっうぐ・・・」
「泣かないでよ法佳・・・。うぅ私も泣いちゃいそう・・・。」
「修学旅行が終わったらカラオケ行こーって言ってただろうが、バイトも頑張らねーとってよ・・・くそっ!」
俺達は動揺が抑えきれないこの状況で、ただ後悔するしかなかった。ベリルテスが次の言葉を言うまでは。
「そこでだ。君達を我が管理しているもう一つの世界、デルランドへ転生させたいと思うがどうだろう。」
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