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懐かしい料理


 ガスティマ、バーリー、モンテルロと一緒に最初の家を確認した後、今日の予定は終わったらしく外食をしに大通りへと戻った。

 モンテルロが言うには、子供でも食べられるものがあるということだ。


 〈アンハルト通り〉を自警団本部方面に歩いて行く。道すがらそのお店の事を話してくれるバーリーに相槌を打つ。さっきの家の時にテンションが上がりすぎたのか少し眠い。


「お店の名前は、ファーナって言ってまだ20才後半くらいの夫婦がやってるんだ。そこの主人は実は僕と同期の自警団員なんだよ。

 たまに奥さんが持たせてる弁当がおいしくてね。今ではスラムからも自警団からも好かれるお店になったんだよ。」

「そうだぜ、スラムの人間は俺たちを見て怯えているようだが、うまいメシ食う時は関係ねえって感じだな!」


 バーリーに続いてガスティマまでも、ファーナという店を絶賛する。期待も高まるものだ。

 自警団本部前まで来ると、モンテルロが指を差す。自警団本部の真向かいにある小さな家屋だった。文字は読めないが看板には、店名とメニューが載っているようだった。

 俺達は中に入り空いているテーブル席に向かう。満員とまではいかないが、8割くらいは入っている。バーリーは俺を椅子に座らせ、自分達も席につくとキッチンの方から男の人が出てきた。 


「いらっしゃいませ、団長と副団長もお揃いでありがとうございます。バーリーもありがとう。ゆっくりしていってくれ。」


 少し日に焼けているがバーリーと同じくらいの好青年が挨拶してくる。俺にも気づいて笑顔を向けてくれる。モンテルロが料理を注文して、俺を指差して子供用の料理も注文してくれた。


 しばらくして同じ男の人が料理を持ってきた。ガスティマ達は、野菜を入れたコンソメスープのようなものと、パンに肉と野菜を挟みサンドイッチにしたものだった。俺の方に出された料理はスープには入っているが、白い色の麺状で厚さは5ミリほどの料理、うどんだった。


「これなに?しろいの。」

「うん?こりゃあっニヴェて言うんだ。ちっとやわらけえが腹にたまるし味も結構いいぞ。

 俺らの食ってるパンに挟んでいる食べ物はファーナって言うんだ。店と同じ名前だから自信があるんだろうぜ。」


 ガスティマの話を聞いてニヴェを食べてみる。子供用の二股に分かれたフォークを使ってうどんに刺す。簡単にぷちんと切れてしまう。コシとかがないようで注意深く持ち上げて食べてみると、今の俺の生えかけの歯でも簡単に噛めてしまう。

 味に関しても塩を少し感じるだけで物足りない。〈ヴォーガ〉では薄味が流行なのだろうか。

 

 10分ほどニヴェを食べた頃だろうか。眠気がひどく襲ってきた。朝から、賑わいのある街に外出したり、前の家を見に行ったりしたので疲れてしまったのだろう。お腹もいっぱいになってしまったので、ニヴェを3分の1ほど残した状態で眠気に勝てず寝てしまった。



 バーリーは、横で小さく寝息を立てるコーダに気付いて自分の膝の上へ移動させた。あの家を見たあと、自分の腕の中で眠そうにしていたから食事をして我慢出来なかったのだと思う。慈しむように頭を撫でていると、ガスティマが話しかけてくる。


「寝ちまったか。まああそこであんだけ騒げばな。」

「ええ、コーダ君の前の家を見せるのは難しいとは思っていましたけど反応は意外でしたね。」


 あの反応は意外という他ない。嫌な記憶を思い出させるとも思ったし、泣いてしまうかも知れないとも。そこにモンテルロも話に入ってくる。


「やっぱりお前達から見てもそう思うか。あの歳の子は大人が想像してるほど弱くないってことなのかね・・・。

 だが、この家じゃない、か。考えさせられることを言うじゃないか。」


 僕も同じことを考えていた。コーダ君の話では両親から襲われたということだったけど、それはあくまでも引っ越してから両親が変わったと思っているのだろうか。

 前の家ではあんなに普通に過ごしていたのにって思っているのだろうか。もしそうだったならと考えると胸が痛む。コーダ君の父親は自分の家の大家を殺し、死体を人に売るような男なのだから。


 元々そういう男だったのだ。何故だか悔しくて歯を噛み締めていた自分がいた。


「バーリー、そんなに気にするんじゃねえよ。コーダの反応は確かに予想外だった。

 でも俺らは自警団だ。この〈ヴォーガ〉の治安維持を担ってる。コーダみてえな子供が今後現れねえように出来るのは俺らしかいねえ。」

「分かってます。コーダ君と出会ってからまだまだ日は浅いっすけど、これからも一緒にここで生きていくんです。」


 僕はそう思う。この事件が解決したら、コーダ君が安心して外に出られるようになったら。

 僕はコーダ君と家族みたいに過ごしていきたい。


「っし!じゃあ次は川沿いの家の捜索だ。苦労すっかも知れねえが気合い入れて行くぞ!」


 そう高らかに言うものだから、膝の上のコーダ君が大きな声に反応して身動ぎをしたので、団長に注意するのだった。

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