家族3人で
自警団でモンテルロと合流した後、抱っこはバーリーに代わってもらっていた。ガスティマはモンテルロと共に先導していて、後ろに俺を抱えたバーリーがいるような感じだ。
俺達は〈アンハルト通り〉をそのまま進んでいる。先ほどバーリーから説明があった中に冒険者と言うのがあった。気になるので聞いてみる。
「ばありい、ぼうけんしゃってなに?」
「冒険者っていうのはね、動物や魔物の退治から街のお掃除まで出来る仕事のことだよ。冒険者ギルドっていうところで簡単な受け答えができたら誰でもなれるんだよ。」
「へー。じゃあぼくでもなれるんだ。」
「さすがに今のコーダ君だと冷やかしだと思われちゃうかもね。雑用とかもあるから、力が必要なんだ。」
冒険者というのは何でも屋みたいなものだろうか。こんなゴツい2人が冒険者か、さぞかし力が必要なのだろう。
そんな話が聞こえたのか先導していたモンテルロが振り向いて声をかけてくる。
「あと自警団は、冒険者ギルドが金を出してくれてるんだ。引退した冒険者も働かないと食っていけないから、こういう自警団ってのは国中どこにでもあるんだ。
だが、ホントにしっかり喋れるんだな。まさか見た目が小さいだけで歳は取っているんじゃないか?」
モンテルロが突拍子もない事を言ってきた。あながち間違いじゃないこともないけど、コーダとしては1才半くらいだ。
我ながら早熟すぎるとは思うけど、意識が17才だし仕方ないと思う。
そんなモンテルロの隣に歩いているガスティマが反応する。
「確かに今は普通に見えるかもしれねえが、保護した時はガッリガリだったんだぜ。
あの時はホントにすぐ死にそうに見えてたくらいだったんだよ。ま、すぐにこれくれえになったがな。」
ガスティマはそんなように見てたのか、心配をかけていたようだ。今思えば、あんな痩せ細ってよく生きていられたと思う。ひどい生活環境だったけど病気とかもなった事がないし、俺の体はけっこう丈夫なのだと思った。
◆
しばらく歩いていたが、入り組んだ路地にあった目的の家屋に到着したようだ。
道が狭くて人が往来する時は身をよじらないといけないほどだ。
普通のスラムが家と家が引っ付いている集合住宅だとすれば、ここは土地を柵で区切って並ぶ一軒家の住宅地なのだろう。
記憶を辿ってみても、1年も前にはなるがここまで道は狭くなかったはずだ。あの時は扉を開けて飛び出したんだ。もっと玄関先にゆとりがないと無理だろう。
モンテルロからここはどうだと質問がきた。
「コーダ、こういう家だったか?」
「ううん、ちがうよ。もっとみちはひろかったし、いえもこんなにおおきくなかった。」
「がすてぃだったら、ねれないかもしれないくらいだった。」
確かに最初の家は小さかった。1畳ほどで、いつも俺はエコーに抱かれて寝ていて、横にダコタも並んで寝ていた。それでも布は多かったので、狭かったけど苦しい感じはしていなかった。
そんな返答に、モンテルロとガスティマは話し始めた。しばらく待つと、狭い家は候補の中で一つしかないという話だったようだ。
一つしかないのは不安になってしまうけど、行ってみることにした。
◆
一旦、俺達は〈アンハルト通り〉に出ていた。先ほど見た家とは、通りを挟んで反対側にあるそうだ。少し来た道を自警団本部側に戻って、右側の路地に入る。
ここもさっきのような狭い道だ。もし違っていたらと思い不安に駆られる。
狭い路地を抜けると広場に着いた。公園のようで小さい子供も多く遊んでいた。そんなところに体の大きな体の男達が見えると、チラチラと見ながらこちらを避けるようにしていた。
俺はここが見覚えあるかないかが微妙だったが、この公園のそばにある小さな物置にも見える家の前に着いた。外観は全く分からないので戸惑っていると、モンテルロが扉を開けた。
「あ、ああああ!ここ!ここだよ!」
「せまいけど、おかあさんとおとうさんといっしょにねたことあるよ!ここ!」
俺は久々にみた家の中の光景にテンションが上がる。懐かしいという感情がここまでとは。故郷に帰ってきたかのような安心感だ。
そんな俺にバーリーが驚いたように声をかける。
「コ、コーダ君。ここで合ってるってことだよね?ここってコーダ君の両親と住んでいたところで間違いないんだよね?」
バーリーは、戸惑いながら俺に確認をしてくる。
「そうだよ。このいえだよ。なつかしいっておもうよ。」
「でもコーダ君って両親に酷いことされそうになったって言ってたから、家を見せるのはどうかなって思ってたんだよ。それなのに・・・。」
バーリーは俺があの両親を思い出して嫌な思いをするんじゃって思っていたのか。確かにそうだけど、この家じゃない。
「うん。このいえじゃないから。ここは、おとうさんとおかあさんとぼくで、さんにんでくらしてたんだ。いやなんかおもわない。」
俺の返答にぽかんとする男達がいたのが少し面白かった。
でも俺を保護してくれた人達がこんな思いやりのある人達で良かったと思う。嬉しさを噛みしめながら目の前の大人達に笑顔を向けるのだった。
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