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守るための努力


 あの日から、暇な時は決まって魔法の練習を励んだ。バーリーとの食事と会話以外は寝るだけで、非常に退屈だったからだ。魔力は1時間で5回復し、俺の魔力は2日で完全に回復する。


 もっと練習して自由自在くらいまで制御出来るようになったらガスティマ達に話してみるのもいいかもしれない。食事を作る時、明かりが必要な時に助けられるかも知れない。


 彼らは俺をどん底から引き上げてくれた恩人で家族と思える存在だから。



 とある朝、久しぶりにガスティマが帰ってきた。何でも俺に話があるようだ。バーリーも一緒にいつものポジションにつく。

 

「まず、俺が自警団に入ってるってえのは言ってあるよな。そこで今やってる事件とコーダの話が重なる部分があったんで、仲間と話してたんだよ。

 そんなら、一度コーダに会ってみてえって言うんでな、せっかくなんで会ってみねえか?」


 ガスティマは、俺に同意を求めてきている。勿論、オッケーだ。俺でも役に立てるなら願ってもないことだ。自警団がどういうことをしているかも興味あるし。


「じけいだんいきたい。あってみたい。」


 少し前の俺からすれば目を見張るほどの成長を感じる。


「んじゃ今から行くぞ!今からなら暗くなる前に帰れるだろうしな!」


 断っていても強引に連れて行かれたんじゃないかという勢いで、ガスティマ達と初めての外出に繰り出すのだった。



 部屋着からガスティマが買って来てくれていた外出着に着替えて、家から歩いて外に出ると、2週間ぶりくらいの日光を浴びる。ここしばらくは部屋に引きこもっていたし、たまには外に出るのもいいだろう。青空も見上げ眩しくて目を細める。


「うぅ、まぶしい」

「コーダはけっこう久々な外出になんじゃねえか?ここら辺はいいが、足場も悪りいし抱えてやるよ。」

「う、わあぁ!」


 ガスティマが俺の脇の下に手を入れてひょいっと持ち上げる。あまりに軽々持ち上げるものだから勢いがついて情けない声が出てしまった。

 ガスティマは俺を左腕だけで抱えるようにする。右を見るとガハハと笑うガスティマが見える。

 こうすると俺も視点が高いし周りを見やすいから景色を見れてありがたい。



 家の前は閑散としている道で、土を均しただけの裏道という印象だった。スラム特有の密集した住宅はあるものの静かで人があまりいないように感じた。


「団長、あんまり乱暴にして落とさないでくださいよ。ただでさえデカいんだから。」

「おー、バーリー言うじゃねえか。お前もしばらくは休んでいたからな。ちょっと体動かしたほうがいいぜ。」


 そんな会話をしながら3人で出発する。通りを真っ直ぐに進んでいると3mくらいの高さのアーチが見えた。その先には多くの人が歩いている。〈ヴォーガ〉のメインストリートだろうか。

 バーリーがこの辺りのことを話してくれる。


「ここは〈ヴォーガ〉で一番大きな道で〈アンハルト通り〉だよ。自警団の本部もこの道沿いにあって、もっと進むと平民街との境目もあるよ。」

「へぇ。こんなところはじめてだ。」


 やっぱり外に出ないと色んなことを知れないから定期的に外に出たいものだ。最近魔法で遊んでいるのでふと思いついてしまう。

 影を出す闇魔法なら夜や暗闇に紛れられる、なら光を出す聖魔法なら昼に紛れられるのではと思う。機会があれば挑戦してみよう。



 アーチを抜けた先にガスティマほどのゴツい男が2人立っている。どちらも強面(こわもて)で周囲を威圧している。

 こちらを見ると少し頭を下げて挨拶してきた。


「お疲れ様です。団長。」

「おう。いつもご苦労さん!」


 この強面(こわもて)は自警団員だそうだ。こんなのが巡回してると治安維持には効果覿面(こうかてきめん)だろう。男達はお揃いのバッヂを帽子につけている。自警団員の証だろうか。



 急に増えた人の量にビクっとして驚いてしまう。人の喧騒が聞こえる程ではないが、経験した中では一番人の多いところだ。

 〈アンハルト通り〉は、幅もけっこうある。車が往来出来るほどで9mくらいだろうか。道沿いには露店があり、大きな鍋で動物を丸々煮ていたり、肉塊を吊るして切り売りしているところもある。

 

 少し獣の脂臭い匂いがするが、気にしているのは俺だけなのか、これが日常のようだ。

 しばらく歩いていると右手の方からスラムとは思えない立派で大きな建物が見えて来る。


「見えるかコーダ。あれが俺達の仕事場。〈ヴォーガ〉の自警団本部だ。」


 ここが、ガスティマとバーリーが所属している自警団か。近づくにつれてガスティマに挨拶してくる人が確実に増えている。スラムの人間であっても自警団には好意的な視線を向けている。

 自警団本部の玄関先に到着すると、何人かの団員が話しかけてきた。


「団長、おはようございます。」

「団長、まさかお子さんですか?歳の割にえらく小さいですね・・・。」

「いやあれだろ噂の保護したっていう。」


 口々に俺を何かと訝しんでいる。

 

「おー。悪りいがモンテルロ呼んできてくれんか?コーダを連れてきたっていやあ分かるからよ。」


 ガスティマと目があった団員が本部の中へ駆けて行った。

 俺の事を話してたっていう人だろうかと疑問に思っているとバーリーが答えてくれた。


「モンテルロっていうのはうちの自警団の副団長の1人だよ。ちょっと心配症だけど僕の直属の上司でもあるよ。冒険者時代から団長とは仲が良かったらしくって今でも良き相棒って感じだね。」


 先ほどガスティマにお使いを頼まれた人が戻ってきた。連れているのは、バーリーと同じくらいの他と比べれば小柄(・・)な男だ。あの人がモンテルロかな。


「ついにきたかガスティマ。それとコーダ、初めましてだな。モンテルロだ、よろしく。

 じゃあ善は急げだ。早速連れてって昼前には仕事終わらせてしまおうか。」

「だな!おっしゃ実況見分と洒落込もうぜ。」


 モンテルロの挨拶にうなずきながら返答をする。

 どこか行くのかな。と、つぶやくと、すかさずバーリーが解説してくれる。


「今からコーダ君の前の家を探しに行こうってことだよ。何軒かあるけど、コーダ君には合ってるか合ってないか判断してほしいんだ。」


 なるほどそういうことで連れて来てもらったのか。それは当事者である俺しか分からない。

 せっかく頼ってもらったんだ、少しでも頑張らねば。

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