目覚め
主人公視点に戻ります。
目を覚ますと、眠る前と変わらぬ景色でホッとした。目の前にはバーリーが椅子に背を預けて眠っていた。
良かった・・・。ガスティマとバーリーに出会えた事が、夢ではなかったのだと胸を撫で下ろす。
逃げている時は暗かったので、もう昼頃なのだろうかと思う。
ベッドからノソノソと出る時に自分の体に傷がないことに気づく。昨日は至るところに傷があったけれど、俺は治りが早いのかもしれない。
喉が乾いていたので、昨日飲んだ綺麗な水の残りを飲み、目の前に座って寝ているバーリーに気づかれないように周りを見渡してみる。
昨日は観察しているとすぐにガスティマと話していたので、あまり細かなところまで見られなかったからだ。
前世の感覚からすると、6畳程だろうか。一人暮らしの部屋みたいだ。ガスティマは扉から食べ物を持って入って来ていたし、向こうにはキッチンでもあるのだろう。
天井までは3mあるかといったところだ。壁には所々、石が組まれていて頑丈そうに見える。光を取り込む窓も壁にある。火も使える部屋だから換気もしているのか、昨日から開けっぱなしだ。
ベッドの近くに、ベッドと同じくらいの大きな机がある。そこには乱雑に置かれている紙やペンがあり、持ち主の性格を表しているようだった。机の横には、本棚があり、何が書いてあるか全く分からないが多くの本があるのが見える。いつか文字も学んでみたい。
今まで生活していた家と比べるのもおこがましいくらい、生活水準が高く、少し感動してしまっていた。
前世だったら、当たり前って思えるくらいだったのに、感覚がおかしくなっている。
そんなことを思っているとバーリーが目を覚ましたようだった。
「うぅん・・・。あ、コーダ君。起きたんだね。おはよう。ってもう昼過ぎかもだけどね。」
バーリーが起きてすぐ俺に挨拶してくる。まだあくびをしているから眠そうだ。
「おはよう。」
「うん。えらいね、挨拶も出来るんだ。あ、もう水も飲んだんだね。おかわり持ってくるからゆっくりしておいてね。」
バーリーが椅子から立ち上がり、伸びをしたあとコップを持って扉から出て行った。
◆
バーリーは、水と一緒にガスティマも連れてきた。ガスティマが挨拶してくるのでそれを返す。
2人はベッドの前の椅子に腰掛けて、バーリーはメモを取る準備をしている。
昨日のことでもっと知りたいことがあると言うので、バーリーが質問したいと言ってきた。
「最初に聞きたいんだけど、コーダ君のお父さんの顔ってどんなだったか説明できるかな?髪の色とか目の色とかでいいから。」
「・・・おとうさ、は、かみは、ばありい。」
「めは、がすてぃ。」
と、少し考えてから2人の特徴で答えてみる。色は説明しにくかったから助かった。俺が答えると2人は顔を合わせてお互いを確認した後、バーリーは紙に文字を書いていく。
更にバーリーは質問をしてくる。
「それで、コーダ君。昨日の言ってたことなんだけど、君の両親と一緒に家を変えた日ってどれくらい前だったかわかる?」
「うぅーん。いまより、あつい、ひ、だった。」
この世界の暦みたいなのも分からないから、感覚で答えてみる。もっと細かく情報を言いたいけど、日本とは違うだろうから梅雨とか何月とかじゃ伝わらないのがモヤモヤしてしまう。
「暑い日か・・・、まだ確定じゃねえが他のヤツらと相談出来るくれえにはなってきたな。」
「まぁまだ証言だけっすからね。でも昨日団長が言ってたこと、真実味を帯びてきたってのは分かりますよ。」
目の前にいる2人が俺に聞こえないようにコソコソと話している。彼らに得のある話が出来たようで良かった。
すると話は終わったとばかりにガスティマは立ち上がる。
「コーダ。ありがとうな!俺は出掛けてくっからよ。ここでゆっくりしといてくれ。たまに様子を見にくるが、なんかあったらバーリーに言ってくれ。」
「はい、早くこのことを皆に知らせた方がいいっすからね。お願いします団長。僕はここでコーダ君の世話しときます。」
バーリーはメモをガスティマに渡しながら、俺に視線を向けてきた。仕事だろうか、何か出掛ける雰囲気だったから置いて行かれるかと思ってしまった。
ガスティマはさっさと服を着替えて帽子をかぶると出て行ってしまった。
「コーダ君。話したから疲れちゃったんじゃない?水持ってきたから飲もうか。」
と、優しそうな顔で俺の世話をしてくれるのだった。
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