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温もり

主人公から視点が変わって、ガスティマ視点になります


 ガスティマは、バーリーがコーダを寝かせているのを見ながら体の奥からフツフツと沸く怒りを感じていた。自分でも怖い顔をしているのが分かるが、そんなこと気にもならない。


 コーダのたどたどしく話す姿は、一生懸命こちらに思いを伝えてくれているようで、聞きながら途中で声を上げそうになった。

 まだ発音だってしっかりとしていない子供が、自分の身に起こったことを途切れながらも話してくれた。ぐっと歯を噛み締めてやりきれない悔しさを堪えていた。


「・・・団長。そんな怖い顔してたらコーダ君が起きた時に、怯えてしまうっすよ。」

「ぐっ!確かにそうだが、お前はあんな話聞いて平気でいられんのかよ!」


 バーリーに宥められるも、語気が強まってバーリー詰め寄ってしまった。


「ちょ、ちょっと。コーダ君が起きちゃいます。もうちょい静かにしてくださいよ。」


 バーリーが両手で俺の肩を抑えながら注意をしてくる。

 熱くなり過ぎていたようだ。小さく寝息を立てているコーダを見て、起こさなかったことに安堵した。バーリーが慈しむようにコーダの頭を撫でる。


「ベッドに寝かせたらすぐに眠ってしまいました。僕には兄弟はいなかったっすけど、弟の世話をしている感じがしました。こんなケガだらけで〈ヴォーガ〉を走り回って、どんな思いだったんだろうって思っちゃうんすよね。」

「お前くらいの歳だったら、早いヤツならこれくらいの子供がいるだろうよ。」

 

 バーリーとコーダを見ながら、あの話をもう一度思い出してみることにする。そんな時にバーリーが話しかけてきた。


「団長。さっきのコーダ君の話っすけどあれってどうなんでしょう。本当だと思います?」

「子供の言うことだから信憑性がねえって言いたいんだろ、バーリー。」


 バーリーが図星を突かれたと罰が悪そうな顔をした。


「いや責めてるわけじゃねえ。普段なら、子供の言うことなんて、俺だって疑いながら話を聞くだろうと思うぜ。」


 そうなのだ。ここはスラム。自分の明日の命さえ保証されねえ場所だ。子供でも嘘をついて大人を騙すくらいやっている。

 だが、コーダからはそういう狡猾さは微塵も感じられなかった。ガスティマは椅子から立ち上がる。


「ここじゃなんだ。横で話してたらコーダを起こすかもしんねえ。場所変えんぞ。」


 バーリーも了承すると席を立った。


「悪りいな。もう夜も明けちまったが、残業だ。」

「団長は昨日からずっとでしょうよ。若くないんですから無理しないでくださいよ。」


 外から小鳥が鳴いているのが聞こえてきた。またぞろゴミでも漁っているのだろう。バーリーの軽口に小さく笑いながら部屋の出口に向かいコーダを見る。


「ゆっくり休め、コーダ。」

「おやすみ、コーダ君。」


 静かに扉を閉めたあと、決意を新たにする。

 コーダの話に出たヤツら、許しておけねえ。絶対に俺が捕まえる。



 居間に移動した俺達は、コーダの話していたことを整理する。


「さっきの話だとコーダ君は以前、引っ越しをしているようでしたね。その時、大きな袋を抱えている父親を見たと。」

「ああ。状況からみて、夜逃げではなさそうだ。子供を抱えながら〈ヴォーガ〉の暗闇を走れる訳がねえ。」


 ガスティマは、自警団なんかやってるからよく分かっている。子連れなどイカれたヤツらからは格好の獲物だ。まだ日も高いうちに移動したのだろう。


「その後、川周辺の家に着いて、そこにいる誰かに大きな袋を渡した。見返りはなんだったんでしょう?」

「住処の提供だろう。家族で家を捨ててるんだ。食料や金を貰うのは道理が立たねえ。川ってことはやっぱ〈ヒルー川〉だろうな。あそこは家が密集していて死角が多い。よそ者が居たところで紛れられる。」

 

 そうコーダの状況説明から、情報を肉付けしていく。


「なら両親から殺されそうになったってのはどういう事なんでしょう?邪魔になったとかってそういうことでしょうか?」

「うぅむ。そこが少し飛躍してるのだよな。両親に殺されそうになったってのが、衝撃で色んなもんぶっ飛ばしてる感じかねえ。」


 この話を整理していくとやはり思い当たる事件がある。ここのところ自警団を悩ませる、あの殺人事件だ。


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