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悲しき決戦


 外に投げ出された俺は、何とか自分の体勢を整えて地上へと降り立つ。着地は幾度となく経験してきたことだ、だが、地上に人間がひしめいている状況は初めてだった。


「あああ!魔法、魔法つかったあ!」


 闇魔法を使って速度を落として着地した瞬間から、見るからに貧しそうな男が俺に近づいてきていた。

 脇目も振らずにこっちに駆けてくるのは、気味の悪い薄ら寒さを感じてしまって反射的に闇魔法で振り払った。


 砂でも払ったかのような軽い感触を覚えながら周りを見渡すと、何人かが俺の方へ首をぐるりと向けて薄闇に暗く輝く瞳で見ていた。


「魔法!魔法だあ!」

「魔法使いは死ねえ!」


 ひとりふたり、とこっちに進んでくると、それに気づいて誰かが方向転換をしてくる。

 いつの間にかそれは大きな流れとなって、俺を飲み込まんとしていた。


「冗談じゃない!魔法が使えるだけで殺される訳にはいかないぞ!」


 剣やナイフは拘束された時に失くしている。どうやっても魔法で対抗するしかなくて、それが悪循環を生んでいる。

 骨と皮しかない腕で組みつこうとヨタヨタと歩いてくるのは亡霊のように思えた。


 そんな時、上空からキラリと光る何かが落ちてきた。


 何とか防ぐも周りの人間にそれが刺さって死屍累々の様相だ。


(シータイトのやつ、ガラスでも落としてきたのか?これじゃあ外から上がるのは危険そうだな。)



 そのガラスの雨がシータイトの魔法だったのが、更に周りの人間を刺激した。


「仕方ない、別の場所から戻るか。それよりまず剣だ。まさかあの仮入団が役に立つとは。」


 近づいてくる人間達を振り払い蹴り付けてから屋外訓練場へと急いだ。



 基本的に騎士達は魔法を使って応戦している。そもそも近づくと反撃があるのだから、距離を取れる魔法を使うのは当たり前だった。

 結果として、今はそれが裏目に出てしまっているがありふれた戦法だった。



 静かな夜に相応しくない狂騒が聞こえる中、騎士舎の近くの屋外訓練場へと降り立った後、使えそうな軽めの武器を漁る。

 泥棒のような行為だけど、非常事態だし関係者なんだから許して欲しい。


 

 粗方の武器を物色したあと、外に出て飛びあがろうとした直後、遠くから大柄な男が歩いてくるのが見えた。


 それはどこか見覚えのある体格で、かつて指導をしてくれたデュアルなんじゃないかと思うほど大きい。

 不思議なことに無視をせずに立ち止まってしまったのが俺の失敗だったと思う。



 次第にはっきり見えてきた男は、赤茶に白を混ぜた髪に濃い緑色の目、顔面は深いシワを刻んでいる。

 記憶の中(・・・・)ではヒゲを蓄えていなかったが、口元に白いヒゲが見える。


 さっきの人達はやはり〈ヴォーガ〉の人々だったのか。シータイトに扇動されてこの国を取りに来たという事か。

 じゃあこの目の前に歩いて来ている人もその一員で、あの優しかった顔も魔法を忌み嫌い狂ったように変貌しているのだろうか。


 ついに目の前の人物が立ち止まる。俺を認識して驚いたような顔をしている。あれからもう長い年月が過ぎている、目もあまり良くないのか。

 お互いに相対して、ついに向こうが口を開いた。


「久しぶりだな、コーダ。こんなとこで出会うとは神様も残酷なもんだな。・・・そのナリ、お前も騎士になったんだな。」


「そうだよ、まだ見習いだけどね。白髪が増えたね、ガスティ。」


 そう目の前のこの人は、俺の幸せの記憶を作ってくれた張本人。もうひとりはもう思い出せないけど、いつも一緒に笑っていてくれた人。

 そんな人が俺を前にして腰の剣に手をかけている。


「他のヤツらは、イッちまってるが俺はそんなの頼ってねえぜ?そんなんに頼んなくても国取りが出来るってな。」


「・・・やっぱりガスティもそっち側なんだね。」


「ああ、こんなジジイになっちまったが恨みだけは消えねえもんさ。騎士ならこんなゴロツキどうすりゃあいいのか、分かるよな?」


 優しい目を細めて諭すようにして腰の剣を叩いている。もう避けられないのか、いやここにガスティマが見えた時点で運命は決まってしまったんだ。


「分かった。こっちも全力で行かせてもらうよ、終わったら事情を聞かせてもらうから。」


「おいおい、もう勝った気でいるならその余裕を叩っ斬ってやりたくなるじゃねえか!」


 そうして俺も左手に剣を持つ手に力を入れる。左手は剣で右手は魔法、この距離なら魔法で一発だ。

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