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暖かい

第二章スタートです。

これからコーダ君の周りに人間が増えていきます。みんないい人です。


 ぱちぱちと音が鳴っている。何かが弾けているような音だ。暖かい・・・。こんなに暖かいのはいつ振りだろうか。安心して意識を沈めて眠ってしまいそうだ。心地いい・・・。




 ハッとする!何でこんな状況なんだ!無理矢理意識して目を開ける。


 周囲を見てみるとしっかりとした部屋だった。暖かいと思っていたのは石造りの小さな暖炉の熱を感じていたようだ。所々に石材を使っているようで、木造の家に火が移らないようにしているのが、今まで感じた事のない品格を感じさせた。


 今、俺が寝ていたのは、ベッドだ。大人用として大きめな印象を受ける。フワフワっていうわけじゃないが、今までに比べたら段違いの文明開化だ。木を組んで布を敷いただけの物がここまで有り難いものだとは。涙が出そうだった。


 毛布をめくって体を見ると、体が傷だらけであることに気づく。裸足で走っていたから足の方も傷がありそうだ。

 所々に包帯が巻いてあり誰かが処置してくれたのだろうか。




 そう感動に震えていたら、ベッドとちょうど対角にある扉を開く音が聞こえた。

 誰か入ってくる・・・!と身を固くしていると、


「おお、起きたか坊主。随分寝ていたから腹が減ったろう。坊主みたいなのだと柔らけえもんしか食えねえだろうから、豆の潰したヤツ持ってきたぞ。」


 扉を開けて入ってきた男は、俺に向かって話しかけてくる。大きな男だ。扉をくぐるように入って来た。身長は190cmくらいでデカい、身体も相当に屈強なのだろうと思うほどデカい印象を受ける。髪は赤茶色で、瞳はグリーンだ。



 食べ物を持ってきたようだが、俺は反応出来ない。大きな大人の男を見て身を縮こませていたからだ。

 男は俺が見つめているだけで反応がないことを不審に思い、やがて得心がいったように声を出した。


「ああそういうことな。俺が何かするんじゃねえかと思っているのか。あー確かにこの見た目じゃあな・・・。あー俺は、坊主には難しい事言っても分かんねえかも知れねえが、俺はこの辺を警備してる自警団の団長だ。心配すんじゃねえ。この食べ物も近所のヤツに作ってもらったもんだ。そんでな・・・」

「あ・・・あ、」


 俺は感極まってしまう。先ほど涙が出そうになっていたこともあって、歯止めがきかない。

 この人は俺を助けてくれたのだ。

 あのクソみたいな生活から、家族と思っていた人達から殺されそうになっていた状況から。


 この人は助けてくれた。


 俺は感情の奔流に呑まれながら、ただこの男に思いの丈をぶつける。


「あ・・・あ、ありが、とう。」


 俺は心の奥からせっつかれるように涙を流し、脇目も振らず大声で 泣いてしまったのだった。



 ガスティマは、小さな子供が泣いている事に戸惑った。自分の大柄な身体は、相手をビビらせるには重宝してきた。デカいのは強いからだ。野生の動物だって知っている。今回も怖がらせないように、食べ物と一緒に言葉をかけることで緊張を解そうとしていた。


 最初は、怖がらせたのかと思った。しかし違った。

 この子供は、自分に感謝の言葉を伝えたのだ。聞き間違いなんかじゃない。目の前で泣いているまだ生まれて、そう年月が経っていなさそうな子供が、俺を見て感謝したのだ。どれほど辛い経験をしてきたのかと、胸が痛んだ。

 声を掛けようと言葉を選んでいると、自分の背後から肩を叩かれ、声を掛けられた。


「うぉ、なんだバーリーか。ビビらせるなよ。」

「いつも子供を泣かせてる団長の方にビビってるんす。んでまた泣かせちゃったんすか?」


 肩を叩いたのは、自警団の同僚でもあるバーリーだ。こいつはまだ若いが1人で生活していることもあって、料理がそれなりに出来るのだ。俺が子供を保護して寝かせたあとに、今日は非番だったが応援を頼んだのだ。

 そんな冗談を言うバーリーに返答する。


「俺を見て泣いたのは確かみてえだが、そういう感じじゃなさそうだ。話すことも出来るみてえだから落ち着かせたあと、メシでも食いながら話してもらおうって思ってる。」


 俺の返答に驚いたようにバーリーは、


「こんな小さな子供が話すって冗談っすよね?いくら筋肉バカだからってそんくらいのことは分かるでしょうよ。」


 と、少し失礼な感じで答える。こいつなりに明るくしようとしている事も理解するが、終わったらあとで小突いておくか。


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