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深夜の強襲

主人公視点に戻ります。


 法佳を救うと誓った数秒後には、幌馬車の屋根に降り立っていた。


 姿は隠しているものの、音を消すことは出来ない。

 出来るだけ静かに慎重に屋根を伝って、幌の内部に目を凝らしてみる。


 幌の中は小さなランプの火が頼りなく揺れているので、全容は分からないものの5人の人間が横たわって寝ているようだった。


(まだ朝にもならない時間帯だし、居眠りでもしているのか。)



 声を上げられると面倒なので、崩壊魔法を頭部に打ち込んで物言わぬ死体に変えていく。

 やがて寝息も聞こえなくなった頃、周りを見回してみた。

 荷物が積まれているだけで人間がいるようには見えない。どこにいるんだ。


 見張りを殺したのは失敗だったようだ。でもまだ聞ける口は残っている、そいつに聞こう。



 幌から出て屋根から御者台にいる2人のうち、手綱を持っている男に脳天から電撃を浴びせる。


 鋭い光と高熱で御者台は跡形もなく弾け飛び、荷台部分とは分離してしまった。

 幌の方は熱によって燃え上がりヒラヒラと空を舞って地面に落ちていった。



 荷台の方は何とか吹き飛ばないように抑えていたけど、御者台に座っていた、もうひとりの女の方を見失ってしまっていた。


 俺の魔法は何でもかんでも威力がありすぎる。夜に紛れるには、俺の魔法じゃ落第だ。



 薄暗い空にいくつか光球を打ち上げて周りを見てみると、数メートル先にうずくまる人影が見えた。


 人影に近づくと、俺の足音が聞こえたのか呻き声をあげて、どうにか声は出せるようだった。

 回復魔法を使って火傷や外傷を癒やしていくと、やがてただれた顔をこちらに向けてきた。


「あ、あいあとう、ございばず。」


 俺を単なる通りすがりの救世主だとでも思っているのか、お礼を言ってきた。


「聞きたいことがあるんだけどさ。積み荷の中に女の子がいるはずなんだけど、見当たらないんだ。あなたなら知っているでしょ?」

「うぁ!え、いや、・・・し、ししりまぜん!わたじは!たのまれただけでっ!」


「どこにいるの?それだけ聞けたら終わりだから。」

「しっ、しらない!なにも!」


 知らない訳ないだろうに。

 一旦、回復魔法を止めて女の体を見ると、下半身の傷は少ないように見えた。

 今も俺から逃げ出そうとしているのか、足で土を掻いている。


 そして俺は闇魔法を使って、ぎこちなくうごめく女の膝から下を叩き潰した。


「あっ、あああぁっ!」

「・・・片足はすぐ痛くなくしてあげるよ。片足はね。」


 女の左足だけ回復魔法を当てて、出血と痛みを和らげていく。

 痛みの方に大した差はないだろうけど、治せる事実を見せる事は重要だ。

 

「それで、どこにいるんだ?言わないと治してあげないよ。」

「あっがあぁ、あっあし!足がぁっ・・・。」


 自分の体の心配しかしていない女には、俺の声は聞こえないようだ。

 注意を引くために、まだ千切れたままの女の右足を蹴りつける。


「ぐがああっ。・・・お、おく!奥のはこ!布に、くるんで・・・。これで、全部、です。た、たすけ。」

「そう、ありがとう。」


 女に強めの電撃を浴びせて一息に息の根を止める。思っていたより強めにしてしまったのか、黒く炭化したところから次第に赤く色付いて燃え上がっていく。



 女だったものは、次第に肉の焦げるような嫌な匂いを発しはじめたので、顔を背けてその場から離れる事にした。

 足を踏み出すと、ねちゃりとした液がつま先についていたので地面にこすりつけてから荷台の方へ歩き出した。



 あの女の言う通りならば、法佳は箱に詰められているらしい。けっこうな衝撃があったし、中で取り乱しているかもしれない。



 手前にある鞄やら武器やらを放り捨てて奥に突き進んでいくと、釘で打ちつけられた大きな木箱が出てきた。


 強引に蓋を引っぺがして中を見ると、布に包まれて幸せそうな寝顔の法佳がいた。


「こんな事があっても起きないのか?・・・すごいな。」


 思ってもみなかった光景に思わず独り言をこぼしてしまった。

 箱の前面を潰して、手で慎重に抱え上げる。


 この少女は意外と図太いのかもしれない。

 木屑がついている頭を撫でて綺麗にしていくと、あむあむと何かを食べているような動作をした。


(はぁ、この顔を見ていると何だか気が抜けるな。・・・早く帰ろう。)

 


 アイーシャの土産の鞄もついでに抱え上げてから、荷台から出る。

 死体もあるので、再び雷魔法を打ち込んで火をつけてから教会へと舞い戻った。



 静かな教会の仮眠室のベッドに寝かせてから、何事もなかったかのように周りを片付けて屋敷の部屋へと帰る。

 着地する時に少し目眩のような感覚を覚えたので、そろそろ魔力切れになりかけているのかもしれない。


(それにしても聖女を誘拐するとは。警備をもっと厳重にしないといけないだろ。・・・そういえばシエラはどこにいた?)

 


 朝日が顔を出した頃、聖女誘拐を防げた事とシエラへの不信感を考えながら、またフカフカの寝床に潜り込んでぼうっとする頭を休める事にした。

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