すてえたす
今回はちょっと長めです!
よろしくお願いします!
生まれてから約6ヶ月ほどが経っていた。少し涼しくなったように思う。雨も最近はよく降っている。日本で言うと秋か冬くらいなのかな。
今では少し言葉が分かるようになってきた。父親の名前はダコタ、母親の名前はエコーと言うそうだった。
そして俺は少し動けるようになってきていた。あーあーと声を発しゴロゴロと転がる生活をしている。
離乳食も始まってきていた。母親が小さなスプーンで食べさせてくれている。茹でた豆を潰して水を混ぜたものだったが、慣れ親しんだ食事という作業が出来ることに嬉しさを感じる。
しかし予想もできていたことだが、やはりガリガリに痩せている。
周りにもけっこう子供がいるように思える。毎日きゃいきゃいと楽しそうな声が聞こえてくる。くすんではいるが、金髪や茶髪、青髪や緑髪なんているのだから嫌でも異世界であることが実感出来てしまうのが虚しい。
「ま・・・!くわ・・・い・・・い・・だろう!!」
「わか・・!!・・・つ・・・な・・いのよ!!」
ここのところ両親は喧嘩ばかりしている。たまに俺に視線が来るあたり、俺のことで怒っているのだろう。あまりこのことを考えるのも嫌気が差していたので昼寝をすることにした。
◆
生まれた時から1年ほどが経ったと思う。この辺りは温暖な気候なのか、冬みたいにすごい寒い日が続くとかがなくて過ごしやすかった。温暖な気候と川辺ということもあり、この辺りは虫が大発生すること以外はそれなりだった。
母親のエコーが父親であるダコタに呼ばれて家の外に出て行った。
エコーはこちらを一瞥するが、声をかけることもなかった。
秘密のお話かなと思っていたが、これはチャンスだとピンときた!
今までどうにか、歩けないか試していたが壁に寄りかかることで足を動かしていくことができるようになったのだ。
成長するにつれ拙いながらも歩けるようになってきた俺は、初めて自分の足で外の世界を見ることが出来た。
川は濁り、虫は何かに集り、向こう岸にもこちらと同じような家屋が見て取れる。
見晴らしが良いわけではないが、自分自身の力で見た初めての光景だ。俺はこんな場所で生きていかねばならないと、重く事実を受け止めた。
◆
声を細かく発することが出来るようになったこともありアレを試してみる。頭で考えてもどうやっても出来なかったことだ。多分言葉がキーなのだろう。
「すてえ、たす」
すると、自分の目の前にゲームのようなウインドウが表示された。驚いて後ろにゴロンと転がってしまったが、目の前に表示されたままだ。追従してくるようだ。
【名前】
【年齢】1
【レベル】1
【ジョブ】貧民
【魔法属性】雷 闇 聖
【体力】10/10
【魔力】200/200
【力】 10
【守り】10
【速さ】10
【運】 10
【スキル】『毒耐性』
で、出た。なんか感動する。名前のところが空欄になっているな。俺って両親から名付けられていないってことなのか?1年は同じ生活してるのにどういうことだろう。
魔法属性は雷と闇と聖。雷と闇は何となくイメージ出来るけど聖ってなんだろう。それと下の数値だ。魔力以外10なのは最低値だからだろうか。ベリルテスが言っていた転生特典とかいうのが魔力値になっているということか。
まぁ現実逃避はこれくらいにして、問題はスキルだ。
[毒耐性]ってどういうことだ?摂取していたのは、母親のエコーの母乳か、彼女が作っていた離乳食のみ・・・。
これは穏やかじゃなくなってきた気がするぞ。
◆
俺は魔法の検証をしてみることにした。体力とかの数値やスキルとかも気になるが、一番気になっているのはやっぱり魔法だ!
雷ってことは電気ってことかなっと思い、両手をかざして電気よでろーっと念じてみた。すると、
ぱちっ
っと光が走ったように見えた。見間違いかもともう一度同じようにすると、ばちっとさっきより強めの光が走った。
ふぅおおおお!こりゃすごい!
ステータスどうなってるのだろう。開いてみる。
「すてえ、たす」
【名前】
【年齢】1
【レベル】1
【ジョブ】貧民
【魔法属性】雷 闇 聖
【体力】10/10
【魔力】170/200
【力】 10
【守り】10
【速さ】10
【運】 10
【スキル】『毒耐性』
魔力が30も減っている!虫も殺せないような電撃で1割弱も減ってしまうのか・・・。2回目の出力が高かったことも考えて、最初の消費量は10、2回目の消費量は20だったということか。
むー・・・我ながら燃費の悪い能力だ・・・。
雷が電気なら、闇ってなんだろう。闇が出る・・・?よくわからないが、力を込めてみる。
すると、黒い影のような煙が手から体にまとわりつくように出たのだ。悪い感じはしなかったので、せっかくなので全身覆い尽くすくらい出してみる。
10秒ほどで煙に包まれたように自分が見えなくなったと感じる。自分の手を見ようと掲げてみると何も無い黒い空間を見ていた。ん?確かにここにあるのに見えないと感じてしまう。
すごいな。これなら夜や隠れるときなんかは大助かりじゃないか。魔力の減りを確認するためにステータスを唱える。
【名前】
【年齢】1
【レベル】1
【ジョブ】貧民
【魔法属性】雷 闇 聖
【体力】10/10
【魔力】160/200
【力】 10
【守り】10
【速さ】10
【運】 10
【スキル】『毒耐性』
おおっ、これは燃費がいいな。しかし毎回全部表示されるのも邪魔だし小分けにできないものかな、と試しに、ステータス・魔力と唱えると、
【魔力】160/200
おしっ!これで楽になる。ならば次はこれの隠密性でも確かめてみたい衝動に駆られくる。
そうだ。先ほど外に出て行ったエコーでも探しに行ってみようかな。
◆
外に出ていたダコタは、ガキをあやしているエコーを倉庫の物陰に呼び寄せた。
少し怒ったように問い質す。
「まだあのガキは死なねえのかよ。ここの大家からガキの死体が欲しいってせっつかれてんだ!」
ダコタは苛立っていた。ここの大家は変わり者で有名だ。何に使うかは分からないが死体を持ってくればそれなりの生活が出来るようになる。
以前借りていた家の所有者をこの大家に売ってからというもの、動物などを売っていたがそろそろ人間が欲しいと言い始めやがった!
近所のやつを殺すとすぐバレちまうから、自分のガキを毒で殺せば良い生活が出来るってのに!
くそっ!どいつもこいつも使えねえ!
「分かっているわよ!でももう半年以上は、毒豆を潰して飲ませてんのに弱りもしないんだよ、あのガキ。こっちが知りたいくらいよ!」
エコーも苛立ちを募らせる。ここの生活を奪われるわけにはいかない。ここは以前の借家と違い、水がある。汚物もゴミも溜めておかなくても良い好立地なのだ。
「今夜だ。今夜あのガキを殺して大家に売る。おめえもしくじるんじゃねえぞ。」
「仕方ないわねぇ。音は立てないようにしないとね。」
すると後ろの倉庫からガタッと物音が聞こえた。
「誰かいやがるのか!?」
「はぁ・・・。ネズミか何かでしょ。早く布か何か探しにいきましょうよ。」
この物騒な話しは誰にも聞かれることはなかった。物陰から伺うただ1人の少年を除いて。
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