プロローグ
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生まれとは人生を左右するものと断言していい。スタートラインが違うのだ。到達点に差が生まれるのは当然である。
あるものは王族に、あるものは貴族に、あるものは平民に。
そしてあるものは孤児に。
◆
俺こと幸田次郎は高校2年生でクラスメイトと共に、修学旅行でとある博物館に来ていた。修学旅行も最終日となり、最後に短時間だけだが衝撃的なものを見させてもらっている。巨大なものが盛大に壊れている様は生徒のみならず、教師達も驚きや戸惑いを隠せないでいる。
ここは、列車や航空機などの事故状況を再現・記録している博物館だ。通常は一般公開していないが、関係者が卒業生だったため一部のみ観覧することを許されたのだ。
「すげーなー。幸田、見てみろよ。あそこ多分衝突したとこだぞ。グシャグシャにぶっ壊れてるじゃねーか。」
そう列車同士の正面衝突事故を、興味深そうに話しているのは友人の友沢裕二だ。こいつは何にでも興味を持ち、事故の細部まで注意して見ている。そんな友沢は友人も多く俺からすれば羨ましい限りだ。
なんでも父親が車の工場でを働いているらしく、同じ血が流れているようで少しおかしくなってくる。適当に相槌を打つと、
「こりゃあ良いレポートができそうだ!お前もここ書いておけよ!特に座席とかがこんなに変形するもんなんだなーって思うぜ。」
「ふーん。ちょっと見てみるかな。」
俺は目を凝らして内部の状況を見る。確かにいつも座っている座席が変な方向に折れ曲がっている。窓枠も砕けてガラスが散乱している。日常の一部がひどく壊されていることに驚いてしまう。
事故は当事者同士が気をつけていても起こってしまう危険なものだと説明を受ける。これは些細な連絡ミスであったが猛スピードで走る列車同士の事故、乗客乗員の死者・重軽傷者あわせて600名を優に超える大惨事であったそうだ。もし自分達が利用する列車であったならと思うとゾッとする。
改めてこの博物館が一般公開されていない理由が分かった気がする。
そんな説明を受けている時、ちらっと小さく赤く光るものを見た気がした。何か引っ掛かりを覚えた俺は、それの正体が知りたくて目を凝らしてみた。その赤い光は2つ横に並んでおり、まるで目のように見えた。
「ちょっと友沢、あの窓枠のとこ見てみて。なんか顔みたいなの見えない?なんだろうあの赤いの。」
すると、友沢が顔を近くに寄せて俺と同じ方向を見る。
「んーどこだ?俺にはわかんねーなー。あーあれじゃねーか?模様が人の顔っぽく見えるやつ。シュミット現象だったっけ。」
「シュミラクラ現象な。ああ確かにそれかも知れないな。」
あのような説明を受けた後だ、変なものを想像してしまったのだろうと、俺は思考をやめて目線を外そうとした。しかし俺は目を動かせなかった。なぜなら目に見えた2つの赤い光以外にも顔を構成するパーツを確認してしまったからだ。
暗くて見えにくいが、ほのかに光る赤い目で浮き出たシワが深く、老人のような輪郭が見える。髪はボリュームがなく、白くざんばら髪で生気が無いように感じてしまう。じっと見ていると、口角は上がっていき白い歯が見えて、赤く光る目が細められる。
この奇妙な老人は、俺を見て笑っている。そう思った瞬間、自分の口から上擦った悲鳴のようなものが出た。
「ヒィッ」
「どーした?なんか見たのか?まさか幽霊なんかじゃねーよな。」
「・・・い、いや何でもないよ。ありがとう大丈夫だよ、見間違いだよきっと。」
俺は小さく手を振りながら友沢に、気のせいだと伝える。友沢は不審に思いながらもレポート用のメモ書きを再開していた。
そこで、周囲を見てみるとクラスの集団が違う展示物に移動していることに気づいた。友沢にも声をかけて、一緒に急いで集団に混ざるのだった。
しかし、あれは何だったのだろう。友沢には見えなかったようだけど、俺にははっきりと見えた。
あの楽しそうで不気味な笑顔を。
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