誰がですって?
初めての拙い作です。
初めての拙い作です。
舞踏会、煌びやかな装いに美味しそうな立食。
本来なら来る予定ではなかったわたくし、リナーレル・ド・シャンデルは溜息を1つ零した。
公爵令嬢でありながら、リナーレルは公の元に出る必要が無いからである。兄であるドネールのエスコートで王家主催の舞踏会へ参加した。
「リナーレル、大丈夫かい?」
「ええ、ええ.......大丈夫ですわ。お兄さま」
本来で有ればリナーレルの出席は必要ないのだが、今回に限り王族の印が押された招待状に必ずリナーレルの登城が求められていたからである。
中に入り旧友とも言えるアリッサ伯爵令嬢と歓談していると、アリッサ伯爵令嬢がぴたりと止まるのを肌で感じる。
兄の腕に絡ませていた手を引き抜き肩にそっと手を添え扇子で口元を隠しながら
「何かありましたの?」と不安そうな表情を浮かべた矢先に、若い男性の声が響く
「リナーレル嬢、今を持って婚約を白紙にもどしたいのだが宜しいだろうか、私は真実の愛に巡り会い、またそれを無下には出来ぬのだ。どうか分かってもらいたい」
しん、と静まるダンスホール。王族であるギラン第二王子の言葉に周りから声が消えていった。
リナーレルは声のした方へ体を向け、カーテシーをし
「発言失礼致します。白紙.......ですって?どういう事でしょう。」
困惑したままギランに問いかけ小首を傾げる所作は洗練された美しいものである。
「そなたという婚約者がいながら私はこちらのメリル嬢に好意を抱いてしまった。なのでそなたとの婚約を解消、白紙としたいのだ。目も合わさず、婚約者としての役割も果たさないそなたとは関係を続けていくことは難しい」
「あらあら、ふふっ失礼.......ギラン様、お言葉ですが本当に婚約を白紙にと、わたくしに仰ってるんですの?間違えではなくて?」
「嗚呼、そなたに行っている。何故笑うのだ!不敬だぞ」
「お兄さま、お聞きになって?わたくしとギラン様はいつの間にやら婚約してたのですって。ふふっギラン様の側近候補としてお兄さまが幼少のみぎりより仲良くさせてもらってソレに伴ってわたくしも交流はありましたが、まさか婚約者なんて.......ふふっ王家が許すはずないではありませんか」
リナーレルは兄の方に顔を向けてからギランに顔を向け直す
「わたくし、目が幼少期の高熱で見えなくなってしまったのをギラン様はご存知ではなくて?それにギラン様には未だ婚約者がいないではありませんか。ふふっもう駄目だわ、お兄さま。」
兄の方を扇子で叩きながら、令嬢としては失格な程な笑いをするリナーレル。リナーレルは幼少期の高熱で目を悪くしてから公の場に出られない為最低限のマナーしか習わず育った為、この場で笑いを抑える事が出来ずにいる。
「なっ!私を懇意にしていたのではなかったのか?!母上とも良く共に居たでは無いか!王妃教育の一環であろう?」
「ふふっもう、お辞めになって?確かにお兄さまと共に登城した事は何度かありますわ、お兄さまが執務の最中に王妃様が目の見えないわたくしにまで優しくしてくださって庭園を案内してくださっていただけでしてよ?それにわたくしは成人を迎えたら修道院入りが決まっておりますわ。さ、これ以上はギラン様の為になりませんわ、辞めましょう?」
「そうか、そうだったのか.......私の勘違いだった.......のか。それは済まない事をした。」
「分かってくださればいいのですよ。あと.......くれぐれも公の場でこのような事なさらない様に。ギラン様は王族なのですからお気をつけ遊ばせ」
ギランは行き場のない感情に困惑し、兄に黙礼する。
リナーレルはもう一度カーテシーをし兄の腕に手を絡ませ、「帰りましょ?」と、問いかける
たったこれだけの為に登城を命令したのかと兄は冷めた目でギランを見る。
第一王子派閥、第二王子派閥、この様な醜聞を起こした彼に我が家はどちらに付くか検討される事だろう。
面白い事もあるものね、とリナーレルはしばらくそのネタで思い出し笑いをするのであった。