油出ガエル
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ある日、漁に勤しんでいる村の元に、館から騎士たちがやってくる。
「全員、村の広場に集まるがいい」
兵士たちは剣を振りかざし、漁師たちを追いたてていった。
村のほとんどの人間が集まると、彼らの前に設置された台の上に騎士団長クロードが登場する。
「貴様たちには、今から狩をしてもらう」
「はあ?」
何を言っているんだという風な漁師たちに、クロードは説明した。
「我々が王都からもってきた干し肉も、あと少しで無くなってしまう。お嬢様たちは新鮮な肉をご所望だ」
それを聞いた漁師たちは、やれやれという顔をした。
「肉だって?この村には家畜なんて飼ってないぞ」
「こんな漁村で、何贅沢を言っているんだ。魚を食べればいいじゃないか」
そんな彼らを、クロードは怒鳴りつけた。
「だまれ!貴様たち下賎な者たちは知らぬだろうが、高貴なお嬢様たちの口には生臭い魚は合わぬのだ。鳥でも豚でも牛でもなんでもいいから、狩ってこい!さもなければ村を焼き討ちするぞ!」
一方的に言い放って、兵士たちは村人たちをにらみつける。
(あれ?お嬢様たちってタハミーネやコロンのことだよな。あいつら喜んで魚やシャコを食っていたけどな)
リカルは釈然としない思いを感じるが、父や漁師たちはそれを聞いて肩を落とした。
騎士たちは館に引き上げていった後、のこった漁師たちは、領主であるケイオスに相談する。
「お館様。どうするんですかい?この近くの山には、獣なんていませんぞ。いるのは妖蟲ぐらいですぜ」
「……仕方あるまい。なんとか全員で狩をして、鳥の一匹でもしとめて、それを献上するしかない。全員で取り掛かってくれ」
ケイオスに言われて、漁師たちはしぶしぶ山に入っていく。リカルも慣れない弓矢をもって狩に出た。
「どうせ鳥なんて落せる訳ないし、適当に時間をつぶして帰るか」
そう思ったリカルは、あえて森に入らずに近くの岩山にいく。その辺り一帯は涌き出ていて、かすかに卵の腐ったような匂いが漂っていた。
「ここの温泉をどうにか利用できるようになればいいんだけど、アレがボスとして居座っているからなあ」
そう思いながら温泉に近づいてみると、何か鼻歌のようなものが聞こえてきた。
「ん?誰かいるのか?」
不審に思って近づいてみると、近くの岩に幼い少女が着るようなワンピースが脱いであった。
「ま、まさか温泉に入るバカがいるんじゃ?」
慌てて覗き込むと、プクプクと泡立つ温泉の中に青いストレートの髪の美少女が入っていた。
いきなり現れたリカルを見て、その少女は硬直してしまう。
「きゃーーーーー!誰?ち、ちかん!?」
「ば、バカ!大きな声を立てるな」
リカルは小声で呼びかけると、少女によびかける。
「いいか!ゆっくりとそこから出て、こっちに来るんだ」
「いや。全部みられちゃいます!」
少女が自分の体を抱きしめて縮こまったとき、温泉の底が泡だってきた。
「ま、まずい。ええい!こっちにこい!」
「きゃっ!」
リカルは温泉に入り、強引に少女の手を引っ張る。
「いやーーー!こんな人が初めてなんていや!誰か助けて!」
「お前は何言っているんだ。いいから早くあがらないと!」
リカルがそういったとき、いきなり温泉の湯元から茶色い影が現れる。それは全身にイボがついた巨大な蛙だった。
「やばい。妖蟲油出ガエルだ!逃げろ!」
蛙のイボから油が染み出し、温泉を満たしていく。それに足をとられて、少女とリカルは足を滑らせた。
「うわっ!」
リカルたちはもんどりうって温泉の中に倒れこむ。次の瞬間、カエルから長い舌が飛び出し、少女とリカルに襲い掛かった。
「ま、まずい。このままだと!くそ。間に合え。『包甲蟲招来』」
舌に絡みとられる一瞬前、硬い殻が現れ、少女とリカルを包み込む。
「これで一安心……え?」
硬い殻ごと持ち上げられる感覚がして、次の瞬間リカルと少女はカエルに飲み込まれていった。
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