タハミーネ・デイジー侯爵令嬢
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そのとき、遠くの館から黒髪の小柄な少女が走ってくる。
「待たせたね!伝説の魔術師カオリの後継者!風魔術師コロン参上。さあ、僕のものになる哀れな妖蟲はどこだい……あれ?」
コロンが見たのは、ひっくり返ったグローブシャコに手をふれるリカルの姿だった。
「わが手により倒されし妖蟲よ。わが僕となりてわが身を守れ」
シャコから出た光の玉は、リカルの体に吸い込まれていく。同時に右腕に『瞬撃蟲』と浮かんだ。
「ち、ちょっとずるい。次は僕の番なのに!」
「何言っているんだ。倒したのは俺だろ」
リカルとコロンはギャーギャーといいあう。それを見て、助けられたショートカットの少女は首をかしげた。
「あれ?二人は知り合いなのか?」
「まあな」
「彼は僕の弟子。いずれ一緒に世界を救う旅にでるんだ」
コロンが妙なことをいっているので、リカルは慌てて首をふる。
「ちょっと。変なことを言うなよ。俺はどこにもいくつもりはないぞ」
「運命には逆らえない。君は僕のもの。ふふふ……」
そんなコロンの様子をみて、少女は慌てて名乗る。
「あたしはタハミーネ・デイジーってんだ。デイジー侯爵家の娘で、ここには親父の命令で疎開に来ている。あんたは?」
「リカル・ローゼフォン」
「ローゼフォン?ってことはここの領の子か?なんで一人で釣りなんかしていたんだ?」
タハミーネは首をかしげて聞いてきた。
「今日は高波で船を出したら危険だからな。晩御飯を調達していたんだよ。あのシャコのせいでめちゃくちゃになったけどな」
リカルは残念そうに海を見つめる。グローブシャコが暴れたせいで魚は逃げてしまい、釣れそうになかった。
「晩御飯?家に帰れば普通に出てくるだろ?」
「その家をお前たちにとられちゃったんだよ」
リカルが恨めしそうに言うので、タハミーネは気まずい思いをした。
「あっ、なんていうか、ごめん」
「全く、本当に迷惑しているよ。いくらうちが辺境の弱小貴族だからって、無理やり力づくで館をとりあげるなんて」
ローゼフォン家は男爵家だが、実質は田舎の魚村の村長に過ぎず、専業の兵士など一人も雇っていなかった。これでは武装した精強な兵士たちにかなうわけがない。おとなしく館を明け渡す以外の選択肢はなかった。
自分たちがリカルを追い出してしまったとしり、コロンとタハミーネはしゅんとなる。それを見て、リカルは苦笑した。
「まあ、お前たちを責めても仕方ない。別にここに来たくて来たわけじゃないんだろうし。それより手伝ってくれ」
「手伝うって、何を?」
そう聞かれて、リカルは巨大なシャコの死体を指差す。
「アレを解体する。すっげえうまいんだよ」
リカルの言葉に、コロンとタハミーネはお互いに顔を見合わせるのだった。
「いや、手伝ってくれてありがとう。これで今日の晩御飯は豪華になるよ」
リカルは解体されたシャコの前でホクホクしている。タハミーネとコロンはそんな彼を不気味そうに見つめていた。
「本当にこれをたべるのかい?」
「なんか気味悪いというか……これって妖蟲だろ?」
二人が疑っているので、リカルはムッとする。
「失礼だな。これを焼いて食べれはうまいんだぜ」
「そうか?なら、あたしが焼いてやるよ。『火矢』」
タハミーネが杖を振ると、炎の矢が飛び出し、シャコを焼く。殻がはじけとんで、辺り一帯にいいにおいが漂った。
「お、おい……。参ったな。もって帰って皆で食べようとおもっていたのに。殻がないんじゃ運べないよ」
リカルは苦情を言う。しかしコロンとタハミーネは、漂ういい匂いにうっとりとなっていた。
「なら、あたしたちで食べようぜ!」
「冒険の旅には苦労がつきもの。もしかして食べるものがなくなって蟲を食べないといけなくなるかもしれない。これもいい経験だね」
二人は涎をたらしてシャコをみつめている。
「仕方ないな。もったいないから食べるか」
浜辺でバーベキューが始まるのだった。
「これは……今まで食べたことのない味。くせになるよ」
「美味しい。美味しすぎる」
コロンとタハミーネは夢中になってシャコを食べていた。
「お、おい。そんなに食べて大丈夫なのか?貴族のお嬢様なんだろ。もっとたしなみをもって……」
慌ててリカルはとめるが、すでに巨大なシャコは食べつくされていた。
「いや~ここはいい土地だな。ご飯はうまいし自然は豊かだし」
「ここに来る前は、もっと妖蟲が跳梁跋扈して荒れた土地だとおもっていたんだけどね。僕もここを気に入ったよ」
二人がローゼフォン領のことを気に入ってくれたので、なんだかリカルまで嬉しくなってきた。
「そうか。それはよかったな」
「戦争がおわったら、お前もうちの領地に遊びにこいよ。歓迎するから」
「僕の領地も王都に近い。観光するなら案内するよ。それに冒険の旅に出る前には、王様に挨拶しておくのが定番だからね」
タハミーネとコロンはそうリカルを誘ってくる。
「そんな機会があるとは思えないけど……その時は頼むよ」
こうして二人との間に友情が成立するのだった。
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