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連勝

教師の手によって氷付けになったユリシーズが運ばれていく。その手から虚しく『水蚊剣』が転がり落ちた。

「えーーっと。一応もらっておこうかな」

リカルは『水蚊剣』を拾い上げ、袋に入れた。

続いて大神官の息子クルーダが進み出る。

「ユリシーズを倒したくらいで調子にのらないでくださいね。彼は我々四人の中で最弱なのですから」

「そうか?実戦経験のない弱者が背伸びしているのはお前も変わらないと思うけど」

リカルはクルーダの挑発を軽くあしらった。

「生意気な……神とこの『土蜘蛛のメイス』に誓って、私はあなたに勝利します」

「はいはい、いいからとっととやろう」

二人は睨み合う。

「クルーダさま、がんばれー」

「神と私たちに逆らう、生意気な田舎ものに天誅を下してやって!」

女子生徒たちが歓声をあげる。

「それでは、始め!」

教師が腕を振り下ろし、第二試合が始まった。

『土針!』

クルーダがメイスを振り下ろすと、地面から土埃が巻き上がり、それを核とした鋭い針となってリカルに襲い掛かる。

『包甲蟲招来』

リカルは大きな盾を呼び出して、身を守った。

「ふっ。またその汚らわしい魔法ですか。残念ですけど、ユリシーズとの戦いで私は弱点を見抜いていますよ」

「弱点?」

自信たっぷりなクルーダに、リカルはおもわず聞き返してしまう。

「ええ。その盾は前方にしか向けられないのでしょう。でしたら全方向から攻撃すればいい。こんな風にね!」

クルーダのメイスが地面に叩き付けられると、周辺の地面から土埃が舞い上がり、リカルの視界をさえぎる。その間に、土でできた針がリカルを取り囲んだ。

「『土針陣』よ!奴を串刺しにしろ!」

クルーダの叫び声と同時に、全方位から針が襲い掛かる。ガキッという音と共に、何かが当たった音がした。

「やった。ついに生意気なリカルを倒したぞ」

喜ぶクルーダだったが、土埃が晴れるとそこにリカルはおらず、代わりに丸いボールのような物があった。

「残念だったな。俺は盾を全方位に展開できるんだよ」

ボールの中から、おどけたようなリカルの声が聞こえてきた。

絶対の自信を持っていた技が破られて、クルーダは動揺するが、あることに気づいてニヤリと笑う。

「ふっ。そうやって隠れていればいい。その間は攻撃できないのでしょう?では、そのまま土にでも埋めてあげましょうか」

「いや、攻撃できるんだけど」

リカルはボールアーマーの外皮を操って、勢いをつけて転がす。

「くらえ。ボールアタック!」

リカルの体当たりを受けて、クルーダは場外まで吹っ飛んだ。

「お前は思い込みが激しすぎだ。戦っている相手にも意思があるんだから、自分が思った通りになると思わないほうがいい……つて、聞いてないか」

場外に落ちて気絶したクルーダを見て、リカルはつぶやくのだった。


「おい。クルーダ様まで負けてしまったぞ」

「あのリカルって何者?もしかして強いの?」

見ていた法衣貴族の間で、ささやきが交わされる。

「そういえば、陛下から王宮騎士にと望まれているそうだ」

「四武貴族の令嬢とも仲がいいって聞くし……もしかして、王子たちは勝てないかも」

そんな声が上がる中、澄み切った声が響き渡る。

「ガイウス様。がんばってください」

声を上げたのは、最前列で観戦しているセーラだった。

「そうだ。ガウシス様がいる」

「大将軍の息子で、学園最強といわれているんだもの。きっとリカルを倒してくれるわ」

たちまちのうちにガウシスへの声援で、闘技場は沸き立つ。ガイウスは片手を挙げてさっそうとリングに上がった。

「ふん。とりあえず二人を倒したことは褒めてやろう。だがいい気になるなよ……って、話をきけよ」

ガウシスはリカルに怒声を飛ばす。リカルは彼を無視して、地面に落ちた『土蜘蛛のメイス』を拾い上げていた。

「えっと……すまんすまん。それで、なんだっけ?」

「てめえ……俺を舐めやって。一撃で首を刈り取ってやる」

ガウシスは『火蟷螂の鎌』をブンブンと振り回しながら威嚇する。それは鋭い刃をした禍々しい鎌で、その刃先から炎が燃え上がっていた。

「ふーん。でも、たぶんお前は一番簡単に倒せるとおもうんだよ」

それを見たリカルは、余裕たっぷりにいう。

「なんだと!この学園最強の俺様の力、思い知れ!」

鎌はガウシスの怒りに反応するように、さらに燃え上がっていった。

「はじめ!」

教師の合図に従って、二人は相対する。

いきなり飛びかかってこようとするガウシスに向けて、リカルは冷静に妖蟲を呼び出した。

「油蛙蟲招来!」

ガウシスはよけきれずに、蛙の油をまともにかぶる。

「あちちちっ!」

『火蟷螂の鎌』の炎が油に引火し、ガウシスは一瞬で火達磨になってしまった。

あまりの熱さに増えきれず、ガウシスは鎌を放り出し、地面を転げまわって炎を消す。火属性の魔法を使う彼は炎に耐性があったようで、軽いやけど程度で済んだが、着ていた服はボロボロになってしまった。

「さて、これで勝負はついたな。審判の先生、試合終了を……」

「まだだ!」

地面に蹲ってうめいていたガウシスは、それでも根性を出して立ち上がる。

「きゃーーーーー!」

それを見た女子生徒からは悲鳴が上がる。彼はすべての服を脱ぎ捨て、すっぽんぽんになっていた。

「なんだよ。粗末なモノ見せるなよ」

リカルはうんざりしたように目をそらす。そんな態度をとられて、ガウシスはますます怒りに震えた。

「こうなったら肉弾戦だ!てめえみたいな貧弱な奴、素手でひねりつぶしてやる」

暑苦しく迫ってくるので、リカルは困ってしまった。

「断る。なんで男と絡まなきゃならないんだ。『油蛙蟲招来』」

再び蛙を呼び出して、油を闘技場の床にぶちまける。石でできた床が油で覆われ、ヌルヌルになってしまった。

「ぶべっ!」

ガウシスはみっともなく転んでしまう。そこへリカルの追い討ちが飛んできた。

「『瞬撃蟲招来!』」

リカルの手から放たれたグローブが、ガウシスの股間に直撃する。

「ぐほっ!」

ガウシスはそのまま押し出され、場外に落ちていった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 国宝ちゃっかり貰ってるけど決闘に勝ったら相手の武器貰ってもいいルールでもあるのかよ
[気になる点] 〉「一応もらっておこうかな」 一応 、かな とついてはいますが、国宝の武器をもらっておこうという発言そのものが異常な発想でしかない。
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