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決闘開始

パーティは一時中断となり、リカルと令嬢たちは控え室に下がる。

「リカル。余計なことはするでない。これはワラワたちの問題じゃ」

シャルロットがツンとした態度で告げてくるが、幼馴染のリカルには心配してそういっているのがわかった。

「そうだよ。よりによって王子たちと決闘だなんて。無理すんなって。あとはこっちでなんとかするから」

タハミーネもそういって背中をバンバン叩いてくる。

「あの場で名乗り出て、決闘を受けてくれただけで充分だよ」

「そうです。ガウシス様たちは私たちを舐めすぎです。お父様に言って抗議してもらいましょう」

その場にはコロンとマリーナもいて、心配そうに見つめていた。

「大丈夫だって。それに、一方的に婚約破棄されたんじゃお前たちの立場がないだろ?」

「それはそうじゃが……」

シャルロットが複雑な顔をする。

「心配するな。あの我侭甘ったれ王子たちにガツンといってやるから。婚約破棄するなら、非はそちらにあるってことにしないとな」

リカルがそういったとき、野太い声が響き渡った。

「ふふふ。いい度胸をしている。さすが私たちが見込んだ娘の婿候補だ。さっきの啖呵、胸がスーッとしたぞ」

キャメリア公爵はそういって、豪快に笑った。

「あとは我々に任せろ。なーに、我が家が誇る影の暗殺部隊をもってすれば、あんな奴らなど一ひねりだ。決闘で君が不利になったら、遠くからこっそり狙撃して脳天ぶちまけてやろう」

公爵は邪悪な顔をして提案する。

「伝説の武器はいるかい?いくらでも貸すぞ」

「一発で学園ごと吹き飛ばせるような、極爆発の魔法が込められた魔石があるんだが」

「一滴触れただけで悶え死ぬ毒薬なんてどうだい?」

他の四武貴族のおっさんたちも、物騒なアイテムの提供を申し出てきた。

(大貴族たちって裏に回ればヤクザみたいなもんなんだよなぁ。怖い怖い)

リカルはちょっと引いてしまう。娘たちもそんな父親を呆れた目で見ていた。

「父上、それから伯父上たちもいい加減にしてください。決闘でそんなものを使ったら、こちらの評判が悪くなります」

「そうだぜ」

「使うならもっといい場面でしないとね」

「決闘が終わった後にしましょう」

シャルロットたちは父親をたしなめた後、リカルに向き直る。

「リカル。いつも迷惑をかけてすまんが、ワラワたちの名誉を守るため、正々堂々と自分が身に着けた力だけで戦うのじゃ」

「わかっているさ。任しておけ」

そんなリカルを頼もしそうにみたシャルロットは、決闘の注意点を告げる。

「だが、奴らを殺してはならんぞ。王国自体が敵に回る可能性があるからの。下手をしたら王国内で内乱が起きる。ただの学生の喧嘩として処理できる範囲に収めるのじゃ」

「つまり、手加減して戦わないといけないわけか。まあ、なんとかしてみるよ」

リカルが身に着けた蟲式術は補助的な能力が多い。それと攻撃方法としては微妙な氷魔法を組み合わせると、相手を無力化した状態で勝つことも難しくなかった。

「決闘を申し込まれたリカルには悪いけど、相手が婚約破棄を申し出てくれてほっとしたな」

タハミーネは胸をなでおろしている。

「仮にリカル君が負けても、婚約破棄されるだけなんで万々歳。だから無理せずに、気楽に戦おう」

コロンはそういって、リカルのプレッシャーを取り除こうとする。

「怪我にだけは気をつけてくださいね。特に脳筋のガウシスさまは、相手のことを考えたりしませんから」

マリーナはそういって心配そうな顔をした。

その時、王子の取り巻きの生徒がやってきて告げる。

「学園の許可が取れたぞ。一時間後に闘技場で決闘開始だ」

「わかった。それじゃ行くか」

リカルたちは闘技場に移動するのだった。


いつもは学生たちの訓練の場になっている闘技場は、異様な熱気に包まれていた。

パーティに参加していた学生たちだけではなく、教職員一同から生徒たちの父兄である貴族たちまで集まっている。

父兄たちは自然に王子たちのいる西側に法衣貴族、リカルたちの東側に在地貴族と分かれて座っていた。

「田舎ものの在地貴族たちを躾けてくれ。王国に逆らう気を起こさせないようにな」

法衣貴族の父兄は、王子たちに熱い視線を向ける。

「あれがリカルとかいう少年か……頼むぞ。在地貴族の意地を見せ付けて、都会の高慢ちきな法衣貴族の鼻をへし折ってやれ」

それに対して在地貴族はリカルに期待を寄せる。いつの間にか法衣貴族と在地貴族の代理戦争のようになっていた。

そして生徒たちは、それぞれ自由に席に座っている。

「王子ー!がんばってください」

「法衣貴族万歳!」

王子たちに歓声を浴びせているのは、彼らの支持基盤である法衣貴族と、彼らとカップルになった在地貴族の子女たちだった。

「リカル頼む。僕たちもてない男子代表として、奴らをやっつけてくれ」

それに対してリカルを応援しているのは、シャルロットたちの取り巻きを除けばほとんどが在地貴族の男子である。数から見れば、圧倒的に少ない。

「ひっこめー。無能な田舎者め」

「身の程しらないってかわいそうよね。王子様たちに勝てるとおもっているのかしら」

在地貴族の男子たちの応援は、ほとんどリカルを罵る声にかき消されていた。

「やれやれ。ほとんどアウェイだな。まあ魔法学園自体がそうなんだけど」

リカルは罵声を浴びせられながら、闘技場のリングに上った。

自分たちが応援されているのを実感して、優越感を刺激された王子は上から目線で告げる。

「どうやら観客は僕の味方みたいだな。リカルとやら、今なら僕たちに対する無礼を許してやるぞ。跪いて詫びろ」

王子にそういわれたリカルは、鼻で笑った。

「今からやることは決闘であって、人気投票じゃないでしょう。もしかして味方が多くなると気が大きくなるタイプですか?」

「なんだと!」

激高する王子を、審判役の教師が止めた。

「王子、抑えてください。リカル君も挑発しないように」

そういって、改めてルールを宣言する。

「では、王子と三権貴族の四人と、リカル君との決闘です。一対一の戦いを四回繰り返すことになります。一度でもリカル君がまければ王子側の勝ちとします。よろしいですね。勝敗は戦闘不能になるか、場外に落ちたほうが負けです」

教師の言葉に、リカルと王子が頷く。

「王子が勝った場合、何を要求しますか?」

そう聞かれて、王子たちは最前列で観覧しているセーラを振り返った。

「セーラを解放しろ!義理の兄という柵で彼女を縛るお前を、僕たちは絶対に許さない。これは愛と正義の戦いだ!」

王子の格好つけた宣言に、会場のボルテージは急上昇した。

「王子様、かっこいい!」

「虐待されているかわいそうな少女のために戦うなんて。まさに正義の勇者の子孫にふさわしいわ」

いつのまにかセーラを虐待していることにされたリカルは、思わず苦笑してしまった。

「誰が虐待だよ。そもそも義理の兄妹っていったって、勝手に押し付けられただけなのに……まあいいや。何言っても無駄だ」

呆れているリカルに、教師が問いかける。

「それで、リカル君が勝った場合の要求は?」

そういわれて、一瞬『セーラを引き取ってくれ』と言い掛けたが、それでは勝負が成立しなくなることに気づく。

「シャルロットたち、今回あらぬ疑いをかけられた令嬢たちの名誉回復だ。パーティ会場での婚約破棄宣言を撤回し、それぞれの家を交えてあらためて協議しろ」

なんでこんな当たり前の道理を通すために、わざわざ決闘しなきゃならないのかと思うと疲れてしまうが、一応そう要求してみる。

「いいだろう。どうせ婚約破棄することは確定だけどな」

王子たちは卑しい笑みを浮かべて同意した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 協議しろじゃなくて婚約破棄の協議しろまで言ってやってもいいだろ 王様がごねて破棄にならなかったら可哀想だろ
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