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婚約破棄

「……なあ、俺もパートナー探しに行きたいんだけど」

リカルはそう訴えるが、シャルロットたちに取り囲まれていて身動きが取れない。

「何を阿呆なことをいっておる。そなたはワラワたちのものじゃ。おとなしくダンスの相手をするがよい」

シャルロットはリカルの裾を掴んだまま、離してくれない。その脇では、コロン・タハミーネ・マリーナが順番待ちしていた。

「俺と踊っていていいのか?王子たちを放っておいて」

「問題ない。奴らは奴らで楽しんでおるわ」

シャルロットは令嬢たちとダンスをしているエルディン王子を冷たく見つめる。

「いいのかなぁ?」

「大丈夫じゃ。父や伯父上たちが陛下に「法地婚姻法」の撤回を求めておる。そもそも貴族の範たるわれ等四武貴族の令嬢と三権貴族の子弟との間がうまくいっておらんのじゃ。時間はかかるが、ちゃんと協議して問題にならぬように穏便に婚約破棄を」

そこまで言ったとき、突然音楽がなりやむ。

困惑している生徒たちを置き去りにして、王子と三権貴族がステージの上に立った。

すると、奥から金髪の少女セーラが現れる。

「まてよ。こんなシーンを夢で見たような……」

リカルがそう思った時、王子の声が高らかに響き渡った。

「シャルロット・キャメリア!セーラ・ローゼフォン男爵令嬢への度重なる嫌がらせと金銭の搾取!もはやこれ以上見過ごせぬ。貴様との婚約は破棄させてもらおう!王妃になるのは、セーラだ!」

いきなりの爆弾発言に、パーティ会場はシーンと静まり返る。セーラは王子に抱きしめられ、満面の笑みを浮かべていた。


「……いきなり何の話じゃ」

衝撃から立ち直ったシャルロットが否定するが、王子たちは聞く耳をもたない。三権貴族の子弟たちも、自らの婚約者たちを非難し始めた。

「タハミーネ・デイジー!君の下品さにはうんざりだ。ぼくの愛するセーラに乱暴するなんて!」

「コロン・パンジー。あなたにはうんざりです。教科書を破ったり物を隠したりするなんて陰湿だ。美しく清らかなセーラに比べて、あなたは穢れすぎている」

「マリーナ・リリー。俺もお前との婚約は破棄させてもらおう。罪のないセーラに悪い噂をながすなんて。将来の大将軍である俺の伴侶に、お前みたいな奴はふさわしくない」

一方的に婚約破棄をされた令嬢たちは真っ赤になってしまう。婚約破棄自体は彼女たちの望む所だったが、こんな貴族の父兄たちが集まるパーティでその影響も考えずに宣言してくるとは思いもしなかった。

あまりの事態に固まる令嬢たちを見かねて、リカルは代弁する。

「妹は差し上げますので、愛人でも妾でも奴隷でもなんでもなされるとよろしい。ですが、王妃などもっての他でございます。また、令嬢方との婚約破棄も、王子たちの一方的な意思では決められないはずです。ここは後日また改めて話し合うことにして、この場での婚約破棄宣言を撤回なされては?」

自分なりに誠意を込めて諭したつもりだったが、王子には通用しなかったらしい。

「「ぐぬぬ。許せん!決闘だ!」

王子は付けていた手袋を脱ぎ、なぜかリカルに向けて投げつけて来るのだった。


(おいおいマジか?勘弁してくれよ……)

王子から決闘を申し込まれるという前代未聞の事態に、さすがのリカルも困ってしまう。

(どうしょうかなぁ。別に決闘したっていいんだけど、後からイチャモンつけられて家が取り潰し……なんてことになったら困るし)

焦って周囲を見渡すと、シャルロットの父親であるキャメリア公爵を初めとする四武貴族のおっさんたちと目が合った。四人とも今にもブチ切れそうに拳を握り締めている。

(どうしましょうかね)

視線で公爵に助けを求めると、リカルに向けて王子たちを指差し、首を掻き切る仕草をした。

(決闘を受けろってことか。ちゃんと後のケツはもってくださいよ)

諦めたリカルは公爵に向かって頷き返し、地面に落ちた手袋を拾う。

「わかりました。その決闘をお受けましょう。義妹のためではなく、私の大切な幼馴染である令嬢方のために」

せいぜい格好つけて宣言した。

その言葉を聴いた、婚約破棄された令嬢たちに嬉しそうな笑みが浮かぶ。

そして父親たちはリカルに頼もしそうな目を向けるのだった

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