蟲式術
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リカルたちに気づいたボールアーマーは、何百本もある足を動かして戦車のように迫ってくる。
「やい!哀れな妖蟲め。おとなしく僕たちに倒されて、僕になるがいい。「風刃!」」
コロンがもっている杖から突風が現れ、それは風の刃になってボールアーマーに突き刺さり、足を何本か吹き飛ばした。
「どうだ!僕の魔法は!こうやって動けなくして、止めをさしてやる」
コロンは調子にのって魔法を打ちまくる。
「ギュイ!」
傷つけられたボールアーマーは、鳴き声をあげると巨体をまるめてボールのようにする。
その硬い外皮に阻まれて、風の刃は跳ね返された。
「あ、あれ?」
「ぜんぜん効いてないみたいなんだが?本当に倒せるのか?」
リカルは思わず突っ込んでしまう。
「だ、大丈夫だよ。丸まっている間は動けないはず。その間になにか考えて……え?」
ボールアーマーは攻撃されて怒ったのか、体を丸めてボールのようにすると、すごい勢いで転がってきた。
「え?うそ!そんなことが出来るなんて、本に書いてない!」
「バカ!いいから逃げるぞ!」
リカルはコロンの手を引いて走り出す。ボールアーマーはその後を追いかけていった。
「いいね。これこそまさにピンチ。ヒリヒリするよ」
「そんな事言っている場合じゃないだろう。走れ!」
なにやら陶酔しているコロンを叱咤して、リカルは走るが、その距離はどんどん縮まっていった。
「くそっ。何かいい手はないのかよ」
「ボールアーマーの外皮は魔法にも物理攻撃にも強い。倒すのなら足を狙って動けなくして、柔らかい内側を攻撃するんだけど」
「そんなの無理だろ!」
リカルは走りながら突っ込む。ボール状になったホールアーマーは外側すべてが硬い皮膚に覆われていた。
「こうなったら……こっちだ!」
リカルはコロンの手を引いて、脇道に入る。しばらくいくと、濁った沼が見えてきた。
「飛び込むぞ!」
「えっ?ちょっと待って!汚い!」
コロンがなにやら抗議しているのを聞き流し、二人一緒に沼にダイブする。その後を追って、ボールアーマーも沼に転がり落ちた。
「ギュイイイ!」
水に入って息が苦しくなったのか、ボールアーマーは球状形態を解いてもとのダンゴムシの形に戻る。
「今だ!『闇氷!』」
陸に上がったリカルは沼全体に氷魔法をかけて、ボールアーマーを凍りつかせるのだった。
「君……すごいね。もしや勇者の末裔?」
ボールアーマーを倒したリカルに、コロンは尊敬の目を向ける。
「そんな訳ないだろ。たまたまだよ」
美少女に見つめられて、リカルは照れた。
「僕が強くなって世界に名をとどろかせるヒーローになるというのもいいけど、君を勇者にして僕がヒロインになるってのもいいかも」
そんな彼を見ながら、コロンは何事かつぶやく。
「何いっているんだ?」
「なんでもない。それより、『蟲式術』を試してみよう。ボールアーマーに手を触れてみて」
コロンに言われるまま、リカルは硬い外皮に手を触れる。
「よし。それじゃ魔力をこめてこう叫んで。『わが手により倒されし妖蟲よ。わが僕となりてわが身を守れ』」
「わが身を守れ」
リカルが復唱すると、蟲の体から光の玉が出て、リカルの体に吸い込まれていった。同時に体に激痛が走る。
「いてててて!?」
リカルの腕に、まるで刺青のような文字が浮かぶ。
「何だこれ?」
「これは魔術師カオリの世界の文字だね。えーと、「包甲蟲」と書いてある。リカル君、『包甲蟲招来』と唱えてみて」
コロンの言葉に従って、呪文を唱えてみる。
「『包甲蟲招来』」
次の瞬間、リカルの体が光に包まれる。気がついたら、固そうなボール状の外皮をまとっていた。
「それがその蟲の能力。君の体を固い鎧でつつんでまもる」
取り付いた外皮はまるで自分の皮膚のように感じられ、盾のような形に変形することもできた。
「へえ…すごいな」
「人体実験は成功」
喜んでいるリカルをみながら、コロンは小さくつぶやく。
「今なんか言ったか?」
「な、なんでもない。それより楽しかった。また冒険の旅に付き合ってほしい」
コロンはにっこりとリカルに笑いかけるのだった。
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