コロン・パンジー伯爵令嬢
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「父上、どうしたらいいんでしょうか?」
「……しばらくは村の皆にも我慢してもらうしかないな。私が説得しよう」
「そんな。みんなたまに食べるパンとか果物を楽しみに一生懸命はたらいてくれているのに」
リカルは憤慨するが、ケイオスは黙って項垂れている。
「……妖蟲ボールアーマーがどこかに行くのを待つしかないな。そうすれば交易路は通れるようになるだろう」
「でも、もしかしたらずっと居座られるかもしれません」
リカルがそういうと、ケイオスは悲しそうにうつむいた。
「……そうなったら、ここの領もおしまいだな」
それを聞いて、リカルはいてもたってもいられなくなった。
「ちょっと偵察にいってきます!」
そういうと、リカルは家を飛び出すのだった。
村を出てしばらく進むと、道路脇の石に座って本を読んでいる人影が見えた。
「あれ?誰だ?村人じゃないみたいだけど……」
リカルが近づいてみると、ボブカットの髪型の美しい少女だった。一心不乱に本を読みながら、何事がつぶやいている。
「一度この地にきてみたかった。ここは勇者が妖蟲王を倒すために最後に来た地。勇者はここで仲間たちと集結し、暗黒大陸ノワールに攻め込んだ」
少女は陶酔しきった目で、ひたすら本を読みふけっている。
「タイミングよく妖蟲の発生が起こるなんて……?もしかして伝説の英雄たちの子孫である僕たちが、この呪われた土地ローゼフォンに来たから?ということは、妖蟲王の復活も近い?ふふふ……ならば僕が伝説の魔術師の後継者として認められるかも……」
なにやらニヤニヤしながら独り言をつぶやいている。その雰囲気から、リカルは相手が危ないやつだとわかった。
(かかわりあいにならないように。そーっと……)
少女が本に視線を落としているすきに、そっと前を通りすぎようとする。
その時、少女が足を前に突き出した。
「うわっ!」
見事に足をすくわれ、リカルは転んでしまう。
「ようこそ。待っていた。君が運命に選ばれた、僕の従者だね。さあ、一緒に冒険の旅にいこう」
「ち、ちょっと!待って」
リカルは抗議するが。少女は意外な力でリカルの襟首をつかんでひきずって行った。
「いてて……いきなりなんなんだよ」
結局、近くの丘の上まで運ばれて、ようやくリカルは離してもらえた。眼下には巨大な丸いダンゴムシが道をふさいでいるのが見える。
ボブカットの美少女は謝りもせず、いきなり自己紹介を始めた。
「……僕は偉大なる魔術師カオリの子孫、パンジー伯爵家の子女、コロン・パンジー。僕の栄光の旅の従者に選ばれた、幸運な村人Aさん、君の名前は?」
「誰が村人Aだよ。俺はリカル・ローゼフォン。このローゼフォン男爵家の一人息子だ」
それを聞いたコロンは、リカルに近寄ってしげしげと見つめる。
「な、なんだよ」
「……魔力が高い村人が来たとおもって従者にしたけど、君が貴族なら都合がいい。さあ、高貴なる者の義務を果たすために、一緒にボールアーマーを退治しよう!」
コロンはそういって、にっこりと笑うのだった。
「絶対に嫌だ。勇者でもないのに、妖蟲と戦えるわけないだろ」
「大丈夫。ボールアーマーの習性は本で読んだ。最初に戦う妖蟲としては手ごろな相手。それに、これを試してみたい」
自信満々でコロンが取り出したのは、一冊の本だった。
「これはなんだ?」
「妖蟲王を倒した偉大なる勇者パーティの一人、魔術師カオリがその後半生を掛けて作り出した新魔術『蟲式術』」
コロンは威張った顔をして説明を始める。
伝説によると、数百年前に人間とエルフとの大戦争が起こったらしい。
「暗黒大陸ノワールを根拠地にしていた妖蟲王パグスは、勇者とその仲間に倒され、世界は平和になった」
「知っているよ。そんなの常識だろ」
リカルが突っ込むが、コロンは嬉々として話し続ける。
「妖蟲王は僕となった蟲を使いこなしていた。それを見て感心した魔術師カオリは、なんとか真似をしようと試みた。妖蟲王を倒した後に何年も試行錯誤した結果、自分が持ち込んだ異世界の魔術「式神」を応用して妖蟲の能力を取り込む魔術を完成させた。僕はこれを身に着けて、カオリの後継者になりたいんだ」
コロンは目をキラキラさせて迫ってくる。
「妖蟲を倒し、その魂を僕として使いこなしたら、どんどん強くなっていくことができる。さあ、行こう」
そういうと、コロンは無理やりリカルを引っ張って、ボールアーマーの前に出た。
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