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魔法実習

魔法学園

授業は順調に進み、いよいよ魔法実習となった。

「貴族は法衣在地問わず、危険な妖蟲から民を守る存在である。そのために我々は勇者とその仲間の英雄から「魔法」を受け継いだのである」

実習担当の筋肉ムキムキな教師は、そういってポーズを決めた。

「君たちの中でも、家を継げずに出て行く者もいるだろう。そういうものたちは、冒険者として活動することになる。そうでない者も、貴族として戦う力は身につけておくべきである」

教師はそういうと、生徒たちを王都郊外にある初心者向けのダンジョンに連れて行った。

ダンジョンとは、地下に棲む妖蟲が掘ったものである。巨大アリのバッグアントが巣穴として作るケースがほとんどで、地中の鉱物や宝石を食べて体内で精製して糞として放出する。それが高値で売れるのである。

もっとも、魔法学園の授業で使われるようなダンジョンはとっくの昔に主を失い、危険の少ない他の妖蟲の棲みかになっている。だから戦闘は素人の生徒たちでも安全に経験を積むことができる。

「では、探索する時の男女ペアを発表する」

その結果、リカルはセーラとパーティを組むことになってしまった。

「ふん。足をひっぱらないようにね」

「お前こそな」

二人はそういってソッポを向く。その近くで、同じように顔をしかめるペアがいた。

「なんで僕がシャルロットみたいな女と……」

そう嘆くのは、王家専用の鎧に身を包んでいるエルディン王子

「…おそらく、婚約者だからではないでしょうか。他の者たちもそれぞれ縁のあるもの同士がペアになっております」

シャルロットは渋い顔をしながらそう言った。

「ふん。僕はお前のことなんて知らないからな。せいぜい遅れないようにしろよ」

王子はそういつて、風のようにすばやい動きでダンジョンにはいっていく。

シャルロットは慌ててついていくのだった。


「えい!『風跳』」

王子は風の魔力をまとって空にジャンプする。そのまま槍を振るうと、天井に垂れ下がっていた大きな蛾のような妖蟲が粉々になった。

「ははは、これが僕の力だ!」

調子にのって槍を振るう王子に、シャルロットが忠告した。

「王子、何も無理して妖蟲を倒さなくてもよいのでは?あまり魔力を使うと、いざという時に困ります」

「ふん。何がいざという時だ。こんな初心者向きのダンジョンに、何の危険があるっていうんだ」

王子は彼女の言葉に耳を貸さず、目に付く妖蟲をすべて狩っていた。

ダンジョンには天井に光の魔力をこめた魔石が設置されているが、

その光は弱く、足元は薄暗い。

「それと、足元にお気をつけください。薄暗いダンジョン内であまり飛び跳ねてると……」

シャルロットが注意を促した時、王子が着地した場所の地面が崩れる。

「うわぁぁぁ!」

王子は穴の中に落ちていった。

「……仕方ないのう」

シャルロットが杖をふるって壁を変形させ、階段を作り出す。そこにはは光の魔石は設置されてないようで、真っ暗だった。携帯用の光の魔石を身につけ、慎重に降りていく。

穴の底では王子が倒れてうめき声をあげていた。

「王子、大丈夫ですか?」

「うるさい!」

シャルロットが駆け寄って助け起こすが、うるさそうに手を振り払われる。

シャルロットはため息をつくと、周囲を確認する。すると、キラキラと輝く石の塊が目に入った。

「これは宝石の原石?なぜ初心者ダンジョンにこんなものが残っているのじゃ?」

ここは探索されつくしたダンジョンで、初心者の練習用に使われている。当然、価値があるものが残っているわけがない。

不思議におもうシャルロットの手から、王子は無理やり宝石を取り上げた。

「この通路は僕が見つけたんだ。これは僕のものだぞ!」

「それはかまわないのですが、一度戻りましょう。何かが変です」

そうシャルロットが訴えるも、王子は無視して通路の奥に進んでいく。ところどころに宝石や金や銀などの塊が落ちていた。

「やったぜ。これは全部僕のものだ!」

王子は大喜びで袋に入れていく。しかしシャルロットの嫌な予感はどんどん強くなっていった。

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