表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/60

救出

「リカル君!早くしないと、私たち連れ去られちゃうよ!」

肩の上に止まっている紙の鳥が騒ぐ。

「だからといって、どうすれば……」

令嬢たちは十数人の武装した兵士に囲まれているので、下手に手をだせば返り討ちにあってしまうかもしれない。

悩んだ末、リカルは奇襲をかけることにした。

「おい。何か聞こえないか?」

いきなりゴロゴロという音が響いてきたので、騎士たちはそちらに目を向ける。遠くから、鉄色をした巨大なボールが転がってきた。

「ボールアーマーだ!」

兵士たちは杯を放り出し、剣を抜く。ボールアーマーはそんな彼らに容赦なく襲い掛かってきた。

「えいっ!」

兵士たちが剣で切りつけても、ホールには歯がたたない。ボールは縦横無尽に辺りを転がり、兵士たちは大パニックに陥った。

令嬢たちの近くに来たボールがいきなり消滅して、中から10歳くらいの少年が現れる。

「今だ!」

現れた少年ーリカルは令嬢たちに駆け寄って、ナイフで縛られた縄を切った。

「リカル!」「リカル君」「リカルさん!」

タハミーネ、コロン、マリーナが抱きついてくる。

「貴様がリカルとかいう小僧か。ふんっ。余計なことをしおって!」

シャルロットは偉そうな顔をしてソッポを向いた。

「なんだその言い草は。せっかく助けにきてやったのに」

「頼んだ覚えはないわ」

二人の間で喧嘩が起こりそうになったので、あわててタハミーネが止めた。

「まあまあ、それより、兵士たちをなんとかしないと。ほら、杖だ」

台の側に放置されていた杖を拾って手渡してくる。

それを受け取り、令嬢たちは騎士たちに向き直った。

「愚かな騎士どもよ。ワラワたちは幼いとはいえ四武英雄の正当な血を引く貴族じゃ。目にものをみせてくれる!」

リカルを含めた五人が杖を構える。

後世にて「六精王」といわれる英雄たちの初陣が始まった。


「クソガキどもめ!ぶっ殺してやる!」

散々翻弄された兵士たちは、ついに理性をかなぐりすてて切りかかってきた。

「油蛙蟲招来!」

リカルはカエルを呼び出して、辺り一帯に油をまいて牽制する。油に足をとられて、全力で攻撃することができなくなった。

その隙に令嬢たちが魔法を放つ。

「風刃!」

コロンが放った風の刃は、兵士たちの足元をすくって転倒させた。

「火矢!」

タハミーネが放った小さな火の玉が油に引火して、兵士たちが炎に包まれる。

「ぎゃぁぁぁぁ!」

兵士たちは魔法の力に対抗できず、次々と倒れていった。

「あちちっ!」

こっちまで火にあぶられて、リカルが悲鳴をあげる。

「あぶない!「水盾」」

あわててマリーナが水で盾を作り出し、炎を防いだ。

「く、くそっ!」

子飼いの兵士たちが倒されて、騎士クロードが鬼の表情で襲い掛かってくる。

「きゃっ!」

本物の騎士が剣を振りかざして迫ってきて、貴族令嬢たちは恐怖に立ち竦んだ。

「逃げろ!」

リカルは周囲の令嬢たちを突き飛ばし、クロードと相対した。

「貴様のせいですべて台無しだ!」

クロードは怒鳴りながら剣を振り下ろしてくる。リカルは杖で防ごうとしたが、一撃で杖を跳ね飛ばされてしまった。

「くそっ!『包甲』ぐっ!」

とっさに身を守ろうとしたが、その前にのど元をつかまれ、宙吊りにされてしまった。

『生意気なクソガキめ。このまま絞め殺してやる」

クロードは完全に本気になって、首を絞めてくる。見る見るうちに呼吸が苦しくなり、リカルの顔が真っ赤になっていった。

(くっ……こうなったら!)

リカルは締め上げているクロードの腕をつかむと、超至近距離で妖蟲を呼び出す。

「『瞬撃蟲招来』」

「ぐはっ!」

両腕に直接シャコの一撃が加えられ、クロードの両腕が叩き折られる。

「とどめだ。もう一撃!『瞬撃蟲招来』」

クロードは胸に強烈な一撃を受けて吹っ飛んでいった。


「これで敵はすべて倒したかな?」

そう思ってリカルが気を抜きかけたとき、黒いローブの女が洞窟から出てきて彼の前に立ちふさがった。

「興味深いですね。あなたの力は何なのでしょう。妖蟲の力をつかいこなしているようですが、私達の「蟲憑術」とは違うようです」

ヌメヌメした下半身を動かしながら、エルミナが近寄ってきた。

その不気味な姿に、リカルは思わず嫌悪感を感じる。

「く、来るな!ナメクジ女!」

「ナメクジ女ですって?」

エルミナの額にピキッと血管が浮かぶ。

「私たちがどれだけの覚悟を決めて、妖蟲と合体したか、貴方にわかるのですか?これもすべて愛するフリティラリアのため!」

「し、知るかよ」

恐怖に駆られて、リカルは思わず一歩下がった。

「いいでしょう。本当の妖蟲の力を見せてあげましょう。」

こうしてエルミナとの戦いが始まるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ