表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/60

兵士の反逆

一週間後

談話室では険悪な雰囲気が漂っていた。

「もうリカルと遊びにいくなって、どういうことだよ!」

タハミーネがダンっとテーブルを叩いて抗議する。

「ワラワたちは上級貴族じゃぞ。あのような貴族とは名ばかりの田舎者を相手にすると、品位がさがるのじゃ。身分が違う」

そういってプィッと顔を背けるのは、ツインテールの美少女シャルロットだった。

「ここは王都じゃないんだぞ。それこそこんな田舎で品位だの身分だの言っても無意味だろうが」

タハミーネはじっとシャルロットを睨み付ける。

「う、うるさいのじゃ。真の貴族ならどこに居てもたしなみを忘れぬものなのじゃ!田舎の小僧と釣りをしたり、冒険ごっこしたり、あまつさえ一緒に温泉に入るなどとはしたないことをすると、お父様たちに怒られてしまうぞ」

頬を膨らませて怒り続けるシャルロットに向けて、コロンがポツリとつぶやく。

「もしかして、寂しかったのかい?僕たちが相手してなかったから」

「なっ!」

シャルロットは顔を真っ赤にして、口をパクパクさせる。そこをさせらにマリーナが追い討ちをかけた。

「なるほど。ホームシックにかかっているかと思いましたが、ご機嫌斜めな理由はそれでしたか。ならシャルロット様も一緒に遊びましょう」

「け。結構じゃ!誰があんな小僧となど!」

そう叫びながらシャルロットが立ち上がった時、ドアがノックされて騎士団長クロードが入ってきた。

「失礼いたします。今日は天気がよろしいので、野外で訓練をしようと思いますが、ご令嬢方にも参加していただきませんでしょうか?」

「僕たちも?何で?」

コロンが首をかしげて聞くが、クロードは笑顔を浮かべて迫ってくる。

「我らが主であるご令嬢様がたがいらっしゃるほうが士気が上がります。それに、忠実なる兵士たちを慰撫するのも貴族令嬢の役目でございます」

クロードの言葉聞いて、シャルロットが目を輝かせる。

「貴族令嬢の義務?そ、そうじゃ。ワラワたちにはあんな小僧と遊ぶより、もっと高貴な義務があるのじゃ。クロードよ。ワラワたちも訓練に参加しよう。すぐに支度せい!」

「はっ。直ちに」

クロードは一礼して去っていく。シャルロットは威張った顔をして他の三人を見渡した。

「よもや、ワラワが参加するというのに、サボろうとするものはおらんじゃろうのう」

そんな彼女に、他の三人はやれやれと肩をすくめる。

「まあ、仕方ないか」

「たまにはシャルロットにも付き合ってあげないとね」

「仕方ありませんわ。温泉にはまた明日入るということで」

こうして、四人は兵士たちの野外訓練に参加するのだった。


シャルロットたちが連れてこられたのは、ローゼフォン領の漁村の浜辺だった。夏の暑い日差しがさんさんと輝いている。

そこには兵士たちが全員集まっていて、整列している。彼らの中心には、なぜか台が置かれていた

「あれはなんじゃ?」

シャルロットが聞くと、クロードはニヤニヤしながら答えた。

「お嬢様方には、我々騎士団に対する訓示をお願いしようとおもいまして」

「ふむ。これも主の務めか。よかろう」

シャルロットは機嫌よく答えるが、他の三人は何か違和感を感じていた。

「なんで真ん中に台があるんだ?普通は前だろ?」

「なんか兵士たちはニヤニヤしている。感じわるいね」

「何か変です。兵士たちは余計な荷物が多すぎる気がします」

マリーナが言うとおり、兵士たちはなぜかここに来た時の様に自分たちの荷物を抱えており、とてもこれから訓練をするような格好とは思えなかった。

彼女たちが不審な顔をするのにかまわず、シャルロットは胸を張って台上に上る。貴族令嬢たち四人は、兵士たちに取り囲まれた。

「ワラワの忠実なる兵士たちよ。武技を磨き、キャメリア公爵家としての誇りを示すのじゃ。ローゼフォンの小僧などに舐められるでないぞ」

シャルロットがそう言ったとき、雄たけびと共に兵士たちが剣を振りかざした。

「よい。では訓練を始めよ」

次の瞬間、台上のシャルロットに向かって一斉に剣が突きつけられた。

「な、なんだ?」

気がつけば、ほかの三人も周囲の兵士に剣を向けられていた。

「どういうことじゃ!ワラワたちに対して無礼な!」

怒るシャルロットの前に騎士団長クロードが進みでて、おどけたように頭を下げる。

「すいませんね。お嬢様たち。あなた方は丁重にフリティラリア酋長国にお連れいたします」

「貴様!裏切るつもりか!お父様が黙っておらんぞ」

シャルロットが公爵家の権威を持ち出しても、クロードたちは笑っている。

「ははは、お父様か。かわいいじゃねえか」

「俺たちはもう公爵家に仕えるのをやめたんだ。ここに居ない公爵なんて怖くもなんともねえぜ」

「これで俺たちも下っ端兵士から騎士になれるのか。そうなったら金も酒も女もやりたい放題だ。お前たちもかわいがってやるよ」

兵士たちは口々に罵声を浴びせてくる。

「そんな……兵士たちが従わないなんて……」

シャルロットは初めて身分が低い者たちから反抗されて、ショックを受ける。貴族令嬢たちしそのまま縛り上げられてしまうのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ