03
視点 マゾヒスト
「クレイグ、報告を」
放課後に呼び出された生徒会室にて、俺の月は表情をなくしたまま、そう仰られた。俺は床にひれ伏し、問われたことに答える。外はもう日が落ち、雨雲が覆い、遠く、雷の音がする。
「はい、カスティーナ様の婚約者であられますレオン様は大変優秀でございます」
「知っている」
「はい、そしてカスティーナ様の憂いとなっておられますセシル様は、たしかに聖なる魔法を使える才を持っていらっしゃいます」
「そう……」
「指導すれば開花いたします。いかがいたしますか?」
「……、……そうね……、指導、すべきでしょうね」
「はい、かしこまりました!」
「クレイグ!」
雷が落ちた。
「はい!俺の月!女王様っひュっなんでございましょうか!」
その冷たい眼差しに息が熱くなる。冷える体を抱きしめて、息を吐き出す。
「……もう一つ、報告すべきことが、あるでしょう……?」
「本日、講義中にセシル様がレオン様に話しかけられた回数は5回、レオン様から話しかけられたことはありません!食事ももちろん、別でございます。セシル様はひとりで裏庭で食事を取られていましたァッ!」
「ッシャア!!フラグは立っていない!!よくやった!!」
「あっありがたきおことびゃっ」
「しかし……何故誰ともフラグが立たない……他の有象無象とフラグが立ってくれれば心配も……」
小さく何かを呟かれてから、は、と何か思いついたように、俺の月が顔を上げる。そうして、その白き、氷の、冷たい視線を俺に投げる。
「クレイグ……」
「はい、なんでしょうっ」
「あなた……彼女……いる?」
「作れと言うならばいますぐにでも!樹脂ですか?鉄ですか?」
「……なんでもないわ。忘れて」
「はい、今すぐに忘れます!」
俺の月が言うのであればどうでもいいことなのだろう。全て忘れることにした。




